機動戦士ガンダムOO第17話感想&備忘録「スローネ強襲」
今話で面白いのは、3大国がソレスタルビーイングへのカウンターとして結束したように、プトレマイオス組もトリニティ側へのカウンターとして結束しているトコです。また、アレハンドロさんの立ち位置は「人間が嫌いな神さま」のポジションらしい事が分かってきたり、リボンズさんも何やら特別な存在という事で、トリニティ側の「4機のGNドライブ」の残り一つの用途が俄然気になってきたりと、面白くなってきましたよ。
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本編感想
プトレマイオス組
プトレマイオス組全体にトリニティ組への「不信」がクルー全員に漂って、「反感の対象」が現れた事で今までチームワークゼロ、連帯感皆無だったプトレマイオス組が纏まっていく描写が印象的でした。
「あたし、あの子嫌い。」(クリスティナ・シエラ)
「勿論、戦争根絶です。」(ヨハン・トリニティ)
「ホントに?」(スメラギ・李・ノリエガ)
「マイスターなのか。ヤツらは、本当にガンダムマイスターなのか。」(刹那・F・セイエイ)
例えば、今まで険悪なムードが漂っていたティエリアさんと刹那君に理解の萌芽。
「初めて意見が合ったな。」(ティエリア・アーデ)
「何をだ。」(刹那・F・セイエイ)
「口にしなくても分かる。」(ティエリア・アーデ)
というか、ティエリアさんが普通に空気読んでるのに驚きました。ティエリアさんはそんなキャラじゃないと思ってたのになぁ。(ドクロ)
さて、刹那君が抱いていた「意見」というのは―――
「マイスターなのか。ヤツらは、本当にガンダムマイスターなのか。」(刹那・F・セイエイ)
ですよね。
刹那君にとってのガンダムマイスターとは「戦争根絶」の為に戦う存在の事であって、今回トリニティ組がオーバーフラッグの基地の襲撃を隠れ蓑に「知りすぎた」エイフマン教授を抹殺する行動に出たりするのは、明らかに「手段」と「目的」がプトレマイオス組とはズレまくっているのです。
また、プトレマイオスの大人組、スメラギさん、ストラトス兄貴、おやっさんの3人はヴェーダへの不信感を共有して大人の相談を開催しているのが恰好良い。やっぱり大人組の信頼や、刹那君&ティエリアさんの共闘とかがプトレマイオス組の結束に繋がっていくんだよねぇ。(しみじみ)
先回アレハンドロさんが「ヴェーダの計画通りに」とヤケに含みのある台詞を口にしていた事や、今までコツコツと描写されてきたスメラギさんとヴェーダとの「意見が合わなくなる日の到来」が現実味を帯びてきた感じです。
そして、ヴェーダと自分の予測が外れたことに安堵したスメラギさん。
今まで「人類は未成熟な生命体」と不完全性を許容したり、ビリーさんとの友情に義理を立てて作戦に組み込まなかったりと、「不完全」な所があるスメラギさんだから「計画通り」でない事を肯定したのも納得出来るんですが、それはつまりヴェーダとの疎隔ではないの?と疑問符が浮かんできます。
http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20080126/1201348818「予想が外れて嬉しいこともあるのね。」(スメラギ・李・ノリエガ)
友人を利用したくないから今回立てた戦術予測にはビリーさんのデータを敢えて使っていないようですが、これは目的の為に非情になれないスメラギさんの甘さであり、致命的な敗因になりそうです。
恐らく、今回ヴェーダの限界についてのティエリアさんの台詞なども考慮すると、今はまだ一致しているスメラギさんとヴェーダの意見の不一致がソレスタルビーイング、そしてガンダムに暗い陰を落とすことになるのだと思います。
http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20080112/1200137033「私とヴェーダの意見が一致したわ。」(スメラギ・李・ノリエガ)
トリニティ組
「世界に見せる必要があるのさ、ソレスタルビーイングの本気さをな。」(ヨハン・トリニティ)
ヨハンさんが言ったこの台詞は、第一クールの集大成であった「平和への思い」を体現する際にアレルヤ君が口にした言葉と類似していますが、やっている事は、「非暴力」と「無差別殺戮」と、正反対の事をしているように、トリニティ組はプトレマイオス組と相容れない思想を持っています。
「でも、人は争いをやめる為に歩み寄る事ができる。歩み寄る事が。」(王留美)
http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20080105/1199531035「世界に見せつける必要があるのさ。ソレスタルビーイングの思いを!」(アレルヤ・ハプティズム)
というわけで、今回トリニティは、明らかに視聴者に反感を持たせるような描写がされていたワケです。その筆頭はチンピラじみたミハエルさん。プトレマイオス組のガンダムマイスター全員にケンカを売る性根の悪さが完璧です。ハレルヤ君といい勝負です。
「うるせぇぞ、このニヒル野郎!」(ミハエル・トリニティ →ストラトス兄貴)
「今度会ったら撃ち落としてやる。」(ミハエル・トリニティ →刹那君)
「旧世代のモビルスーツにまんまとしてやられた無様なマイスターの面を拝みに来たんだよ。」(ミハエル・トリニティ →ティエリアさん)
「言った通りの意味だ。当てになんねーのよ。あぁ!?不完全な改造人間君。」(ミハエル・トリニティ →アレルヤさん)
また、グラハムさんにもケンカ売ってます。
「ザコがわんさか!」(ミハエル・トリニティ)
「このままではやられる……わけねーだろ!」(ミハエル・トリニティ)
なお、制作者の思惑通りに「ミハエルむかつく!」とか書き殴るように踊らされるのは、大人な対応じゃないですよ?
また、このミハエルさんの性格を分かっていて同伴してきたヨハンさんは、ミハエルさんの罵詈雑言も織り込み済みという感じで、隠した底意地の悪さが見え隠れします。多分、ミハエルさんが危険人物だという事を印象づけておいてネーナさんにヴェーダの情報を確認させる策略だったと解釈。
「流石兄貴、やる事がえげつねぇぜ!」(ミハエル・トリニティ)
そもそも、これだけミハエルさんに信頼されているという事は、ヨハンさんもミハエルさんの同類という事でしょう。ハロも、「ヤッチマエ!ヤッチマエ!」と連呼していた事からも、やはり先回予想した通りトリニティ組は一枚岩の集団という解釈で合ってそうです。ついでにその思想はアレハンドロさんと共通というおまけ付き。
ヨハン、ミハエル、ネーナの3人は、急進的なミハエル、ネーナを、一番上の兄であるヨハンさんが押させている感じですが、3人の私服は聖職者っぽいユニフォームで統一され、兄弟の仲も良いところを見ると、私服も性格もバラバラで纏まりのないプトレマイオス組のマイスターズとは違って、「意見の統一」はされている一枚岩の集団と見るべきでしょう。
その前提に立ってトリニティ組の意見を発言を振り返ります。
まずは、地上に住む人々に極力被害を出さないようにしているプトレマイオス組とは違って、「地上の人間」なんてどうでもいいという感じで、情を挿まない神意の忠実な遂行者という感じ。ヨハンさんもミハエルさんを宥めてはいても、ミハエルさんの言い分もよく分かっていてもまとめ役として正論を言っているだけという印象を受けます。「つまりは、ヤツらのやり方が甘ぇって事だ!
大体よぉ、緊急時以外は敵機のパイロットを殺さないってスタイルが気に入らねぇ!
熟練パイロットの数が減れば俄然こっちが有利になるってのに!だろ、兄貴?」(ミハエル)
「そう言うなミハエル。彼らは輿論の反応を気にしてるんだ。」(ヨハン)更に、15話でアレハンドロさんとリボンズさんが口にした「ガンダムは兵器」という言葉を共有する所から見ると、トリニティ全体の思想はアレハンドロさんと同じだという事だと思います。
「ありゃあれか?昔に流行った無抵抗主義ってやつか。何の為にガンダム乗ってんだよ。」(ミハエル)
http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20080126/1201348818「まるで殉教者気取りだ。このような行為で戦争根絶など。」(アレハンドロ・コーナー)
http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20080112/1200137033
「ガンダムの性能を『神の力』だと勘違いしているのでしょう。」(リボンズ・アルマーク)
「馬鹿馬鹿しい。ガンダムは兵器だよ。目的を遂行する為、人を殺める為に作られたものだ。」(アレハンドロ・コーナー)
…というワケで、こんなにムカツク(あ、言ってしまった)野郎どもばかりではバランスが悪いので、釘宮ボイスの登場と相成ったわけですね。刹那君の唇を奪ったり、ムカツク(あ、また)ミハエルさんの闘争心を煽ったりとかなりの悪女っぷりでえす。侮れません。(バカ)
性格は最悪ですが、若くて可愛いネーナさん。果たしてマリナさんに勝ち目はあるのか……マリナさんが唯一勝ってるのは性格ですが、マリナさんの場合はマトモですが果てしなく暗いしね。(ドクロ)
アレハンドロ・コーナー
「世界をどうします?」
「何もしやしない。私は監視者だ。ただ、世界の変革を見つめているだけの存在だ。」
この台詞で、アレハンドロさんがどういう思想なのか分かってきた気がします。
つまり、アレハンドロさんは人間に大して何もしてくれない、ただ世界の向かう方向だけが大事な「人間が嫌いな神さま」のポジションなんですよ。
つまり、人間が何をしようがいくら死のうが関係ない。ただ、自分の邪魔な人間は信仰の有無に拘わらず容赦せずに殺して、最終的に自分の思う世界になればいいという立場。
例えば信仰者がいくら敬虔な信仰を持っていても、その人が危機に陥った時にも神様は何もしてくれないワケです。例え大けがを負おうと、全てを失おうと、死のうと、何もしてくれない。
その一方でそれを傍目に見ている人は、「彼/彼女は信仰に殉じました。魂は永遠の安息に包まれるでしょう。」と美化したり、「信仰が足りない」と貶めたりして利用するだけで、神さまは何があっても恨まれないワケですよ。だって、「絶対」ですから。人知を越えてますから。あっちの宗教にはそういう乾いた所があって、古くはメソポタミア時代からあちらの神さまは「人間が大嫌い」で、全く信用してないんですよ。何せ、「神さまが楽に地上に降りてこられるように」作った高い塔を、「人間による反乱だ」と勘違いしてぶちこわすわ、人間の声が耳障りという理由だけで洪水起こしてジェノサイドみたいな事したりするぐらいですから。それを宥め透かして媚びへつらって、「私は信仰するので、矛先は異民族に向けて下さい」と祈ったのがアレで、それを異民族に普及させる為に本来の悪意だらけの行動・言動を「愛」という盲目的・病的な妄想で都合がいいように解釈しまくったのがアレなワケです。(ネタ的にヤバイかも?)そういうトコに気付いた人の抱いた「不信感」を投影した存在がアレハンドロ・コーナーさんなんだと思います。
エイフマン教授が最期に口にしていた「イオリア・シュヘンベルグの真の目的は戦争根絶ではなく―――」というのは、イオリア・シュヘンベルグの目的は「戦争根絶」だけど、アレハンドロさんみたいな人がねじ曲げているのか、本当に「真の目的」があるのかは分からないけど、少なくとも、アレハンドロさんの目的は「戦争根絶」ではないという事でしょう。
そう考えると、臆面もなく
「勿論、戦争根絶です。」(ヨハン・トリニティ)
「ホントに?」(スメラギ・李・ノリエガ)
と言っていたヨハンさんは絶対に性悪だよね、なんて思います。
危ないですよ、ルイスさんのお母様!
「でも、そういう沙慈がいいよ。」(ルイス)
ルイスさんのお母様が!あれだけいい人化してたから危険だと思ってたけど、危険が危ないですよ!あぁぁあ、やっぱりこうなるのですか。
ついこの間もテロの現場を目撃したというのに、未だに「現実」に対して真剣に向き合おうとしないルイスさん。
「なんて面倒なレポートなんだ。」
「そんなの適当に書けばいいじゃん♪」
解決法とか、社会の善悪とかは分からないけど、気持ちだけは「現実」に向いている沙慈君と対照的でしたが、ルイスさんが向き合うイベントがやってきました。
「今は渡航規正がかかっているのに、どうして!?」
「代議士の先生にお願いしてね。」
嗚呼、お母様お亡くなりになりますよ。前(前)作でも、娘を迎えに公私混同をした父親が戦闘に巻き込まれ、その後自分の体を武器にして世界を罰しようとした方がいらっしゃいましたが、それと同じような事になりそう。沙慈君頑張れ。
http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20071202/1196568268