マクロスF(フロンティア)第2話感想&備忘録「ハード・チェイス」

 アルトに明確な「S.M.Sへの帰属意識」が芽生え、「地上属性を持つランカ」と名前を知り合って接点を持つ等、「俺は、ここにいたくないんだ」を打破し、「俺はここにいたいんだ!」へと変わる要素が次々と積み上がっていました。素晴らしいです。
 今話のサブタイトルは「ハード・チェイス」なんですが、これがかなり面白くて、先週の予告の段階では、「アルトのバルキリーとバジュラとのハード・チェイス」だと思っていたんですが、実はそれだけでなく、一面ではシェリルのコンサートで一躍時の人となって「追い掛けられ」、別の一面ではパイロット適正を見込まれて軍とS.M.Sから接触されて「追い掛けられ」、また別の一面では、シェリル、ランカから好意を寄せられて「追い掛けられ」て、みんながアルトを我先にと「追い掛ける」というダブルミーニング。 こういう刺激的なサブタイトルはいいですよね、思わずニヤリとしてしまいます。

「見付けたわ、早乙女アルト!」(シェリル・ノーム

 嗚呼、マクロスF面白いなぁ。

マクロスF (フロンティア) 1 [DVD]

マクロスF (フロンティア) 1 [DVD]

早乙女アルト

「それにしても、今日は助けてもらってばっかりだね、ほんとに、ほんとに、ありがとう!」(ランカ・リー
 
「え? あ、ああ、こいつのおかげ―――
……礼を言われるのは俺じゃない……。」(早乙女アルト

 新しい世界が開けて最初に待っていたのは挫折。
 バルキリーに搭乗して、操縦技術には見るべきモノを見せる事が出来たものの、肝心の戦闘では銃の乱射による弾切れ(「素人」である象徴)など、まるで役に立つ事が出来ず、辛くもランカを助けて「小さな達成感」を手にする事が出来たものの、ヘンリー・ギリアムを助けられなかった「無力感」にうち拉がれ、ヘンリー・ギリアムの死を思い出して嘔吐し、情けなく、みっともない醜態を曝し、「俺は未熟だ」と思い知らされます。
 先回はシェリル・ノームに「アマチュア」と、ヘンリー・ギリアムに「坊主」と呼ばれ、今回はオズマ・リーに「素人」、更に「ガキ」と呼ばれて、挙げ句の果てに「ここ」から叩き出されて「お前の居場所はここに無い!」と現実を突き付けられるアルト。

「ここからはプロの仕事よ、アマチュアは下がりなさい。」(シェリル・ノーム

「とっとと逃げろ、坊主!仕事の邪魔だ!」(ヘンリー・ギリアム)

「そいつはギリアムじゃない、素人だ!」(オズマ・リー)
 
「おい、そこの素人!」(オズマ・リー)
 
「そんな素人を勧誘するなんざ、軍の人手不足もいよいよ深刻なんだな。」(オズマ・リー)
 
「ノリでほざいてんじゃねえ!ガキが!」(オズマ・リー)

 だけど、止まってなんかいられない。ウジウジしてる暇も無く次回も事件が起こるという、素晴らしい構成が、アルトを「プロ・大人・『ここ』にいる存在」へと向かわせていく構成が堪らなくワクワクさせてくれます。素晴らしいです。

 第一話で、「俺は、ここにいたくないんだ…」とこぼしたアルトが、ランカの為に「俺は『ここ』でアクロバット飛行をする」、「俺は『ここ』でバルキリーで戦う」と、「ここ」で今自分に出来る事に立ち向かっていくという姿勢。今はまだ悉く失敗しかけてシェリル、オズマ、ミハエルといった「プロ」に助けられるという事になっていますが、更に今回は、S.M.Sという「『ここ』で戦いたい」という明確な帰属意識が芽生えたのが大きいですね。まだ「ガキ」なので案の定殴られていましたが、今はそれでいいのです。

ランカ・リー

「やめ…て」(ランカ・リー

「お兄ちゃん――兄が昔…、今は事務の仕事だから安全なんですけど、でも―――」(ランカ・リー

 ランカさんはバジュラ絡みでの過去のトラウマ有り。
 だからこそ、宇宙に投げ出されそうになってあれだけ怖がって(まあ誰だって普通に怖いですが)、宇宙、引いては「空」に恐れを感じるという、「無闇やたらに空を志向するアルト」に対して「地上を志向するランカ」という位置づけみたいです。
 そして、喋るより雄弁に「別れの歌」を歌い出すランカのシーンは、ランカが「歌で語る事が出来る力」を持っている事を象徴していてすごく良かったです。
 また、パイロットなんて危険な仕事が嫌なのに、兄であるオズマはS.M.Sで最前線のパイロットを、気になる存在であるアルトもまたパイロットになって戦い始めるという複雑な感情を持つという事みたいです。

「それにしても、今日は助けてもらってばっかりだね、ほんとに、ほんとに、ありがとう!」(ランカ・リー

 ところで現在、マクロスFでのパワーバランスは非常に肩透かしな状態という面白い形なんですよね。
 「ランカはアルトを凄い!」と慕ってくれるけど、アルトの方はプロであるシェリル、オズマ、更に同じだと思っていたミハエルやルカにまで置いて行かれて、「自分は何も出来ないガキだ」と、どうしようもなく「無力感」を感じているのが現状。

「待って、貴方の名前!
私、ランカ・リー、忘れないで!
ねえ、必ずお礼!」(ランカ・リー

 でも、ランカがアルトに自分の名を告げ、シェリルがアルトの名前を聞き出し、シェリルによってランカもまたアルトの名前を知るという、知り合いになる事、すなわち「誰かの隣(=『ここ』)に居場所を持つ」という象徴的なイベントのオン・パレードだった今回のエピソード、また、「地上属性」を持つランカの存在は、次回辺りで、アルトに「俺にも『ここ』でやれる事がある」、「俺は『ここ』にいたい」、「俺は『ここ』で君の傍にいたい」という、「ここ」に居場所を持つという気持ちに繋がっていき、現状で「肩透かし」なパワーバランスは、ランカの存在がアルトを元気づけ、シェリルやオズマに「ここまで登って来なさい/来い」と導かれる、飴とムチのパワーバランスに変化していくんだと思います。
 それが証拠に、シェリルは、自分を慕ってくれるランカを「優しい眼差し」で微笑んだり、「サービス」をしたり、アルトを追ってきて構いに来たり、オズマはランカに激甘だったり、ルカを弄って可愛がったり、ギリアムの為にアルトを連れてきたりと、二人とも「世話好き」な面が今回きっちりと描写されているんですよね。もう、みんないい人達だなぁ。

次回予告

 突然のバジュラの襲来。
 閉じこめられたアルト達は己の隠された思いに気付く。

 マクロスF(フロンティア)第3話「オン・ユア・マークス」

 決意の歌、銀河に響け。

マクロスF (フロンティア) O.S.T.1 娘フロ。

マクロスF (フロンティア) O.S.T.1 娘フロ。

おまけ

 最初からBlu-rayディスクって、流石はマクロスっていうネームバリューは偉大なのだなぁと感心しますよ。

マクロスF(フロンティア) 1 [Blu-ray]

マクロスF(フロンティア) 1 [Blu-ray]