ヒロイック・エイジ第21話感想「惑星コドモス」
感想を書く前に断っておきたい事があります。
「ヒロイック・エイジ」という作品に対して私は、「黄金の種族」だって人間なら、未来を読み間違えたりイレギュラーの出現で計画が崩れる事があるだろうと考えて来ました。ですが今回、プロメさんの言葉、「黄金の種族に過ちは有り得ない。」という言葉で、私の中に有った前提が最悪の形で覆されました。
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メタフィクションは享受か打破しか許されない。
過去、現在、未来を通じて「黄金の種族」の意図通りに話が進んでいるとすれば、二重の意味で「黄金の種族」の筋書きで進んでいる事になります。つまり、「ヒロイック・エイジ」の登場人物を動かす「筋書き」という意味と、「『ヒロイック・エイジ』という作品自体の脚本」という意味の二つの意味です。それは前の感想で冗談半分で書いた「黄金の種族=脚本さん」という図式が冗談じゃなかったという事。つまり、「ヒロイック・エイジ」という作品世界において、「黄金の種族=脚本さん」は、登場人物の一挙手一投足を把握・予測しているという点で、メタフィクションになっています。
メタフィクションの登場人物に許される役割は、大別して「A:役割を知らないまま終わる道化」、「B:役割を知っている役者」、「C:役割自体を打破するイレギュラー」の3タイプが許されると思います。そして一般に、Aは諷刺、Bはギャグ、Cは一種のヒーローものとして使われる事が多いです。
例
A:吼えろペン
B:ぱにぽにだっしゅ!
C:勇者特急マイトガイン
私は当初、「ヒロイック・エイジ」はCだと思ってたんですが、限りなくAに近いBなんですよね。「黄金の種族」は絶対であり、プロメさんを始め登場人物の誰もが「黄金の種族が作った筋書き上の役割」を担っていると認識しているんですが、それは視聴者側から観れば、明らかに「脚本さんが作った脚本上の登場人物」として認識され、「黄金の種族=脚本さん」から見た「役割=登場人物」の誰も、自分が「筋書き=脚本」の中で動かされている自分自身をおかしいと思っていない。寧ろそれを快く受け入れた上で盤上の駒の状態で「予め用意された予定調和」に向かって喜んで進んでいきます。
私ならそんなのは嫌です。
君主と仰ぐ人に付いていくならまだ「自分の選択」ですが、それが「遙か前に誰かに決められた事、仕組まれた事」なんていうのには耐えられない。
「ヒロイック・エイジ」のこの設定は、登場人物による「個人の決断・選択」は所詮「予定通り」であると「人格」をメタ的にはぎ取られた事になり、今まで登場人物達に感情移入してきた視聴者に対して、「脚本」自身の手で「個人の決断・選択」も人の「死」すらも全て「無価値」にされた事になります。
何故なら、「必然」であるが故に「選択」は「無価値」であり、それに至る苦悩さえも他人から決められ、与えられたものだという絶望的な「運命論」。
様々な思いを抱えたままに死んだ人々、寧ろ死んだ方が世界の為という人間だとしても、それが「誰かの意図」、「誰かの黙認」により、回避される筈のものを敢えて引き起こしたのなら、それは殺人(またはその幇助)に他なりません。それに理由を付けて「際限の無い戦いを容認したのも、それが最も生命の移動を活発にするという考えがあっての事。」と言われても、鑑賞中、感動しながらも納得できませんでした。
私が「ヒロイック・エイジ」のこの設定が認められないのは、話自体は感動的なのに、それを成している登場人物から「人格」を剥ぎ取った事。そして何より、「世界のルール」として「黄金の種族」が設定されたのなら、「銀の種族」が接触していたり、エイジを育てたりした「人間」として登場させて欲しくなかった。「人間」の形を取った時点で、形而上は形而下に変わる。イデアはイデアではなくなります。それでもなお登場させるのなら、打倒しなくてはいけない。登場人物達は、そんな存在を本能的に、話の展開的に許せないからです。しかし、「ヒロイック・エイジ」ではその気配を全く見せません。「黄金の種族」が単なる「予言」の類であれば、ギリギリのラインでメタフィクションにはならなかったのに、「人格」を与えてしまって、なおかつ「完全無欠」で、全くマイナス要素の無い存在としてプロメさん(=物語の見解)が定義してしまったから、全てのバランスが崩れてしまったように感じます。
私個人の好みとして、そういう「脚本」は有り得ないと考えて来ました。今までの感想でも「黄金の種族の作った神話からの脱出」という事を前提として書いてきましたから、そういう意味でも衝撃的な暴露でした。この暴露で、メレ兄さん達が先回死亡したのも、今回の交渉に邪魔だったから殺したという本当に「ご都合主義」というのが否が応でも強調されて、非常に後味が悪い。
散々悪く書いてきましたが、最終的に「黄金の種族の作った神話」の外にディアネイラ様が導いてくれたら全て解決されます。そんな一縷の望みを託して残り数話を鑑賞する事にします。
視点を変えると、メタフィクションだからこそ、「神話」の形式を借りたんだといいう解釈もできますけどね。(フォロー)
というか脚本さんがメタフィクションの形式をとっている事に気付いてないんじゃないの?
スターウェイ
「星々はただ宇宙に満ちる様々な力によってのみ生まれる訳ではない。」
「生命が星々を交流する事でもスターウェイは生まれる。」
「この宇宙をスターウェイで満たす事。それが黄金の種族の目的だったなら、」
「際限の無い戦いを容認したのも、それが最も生命の移動を活発にするという考えがあっての事。」
つまり、人々の移動によって、「スターウェイによって星と星を結び付ける」と、「星の下地になるスターウェイを作る事で星そのものを作る」という二つの役割を持っているという事ですね。この辺は正直に感動できました。
つまり、「スターウェイで結びつける」という行為は、「命同士を繋げる」、「命を生まれさせる(そしてやがて死ぬ)」という、種族同士の相互理解と繁栄という二つを暗喩している事になるので、今続けられているノドス同士の闘争も、「何か(嗚呼、カルキノス・・・)」が切欠となって和解する事になる訳ですね。
ただ、冷静な面では、「スターウェイを巡らす」という「そんな下らない事」の為に他の種族の殺戮を是認した「黄金の種族」に違和感を感じました。自分でやれよ。という感じ。
ですが、エイジが前に言っていたように、「みんなで見付けないと未来に行けない」と言っていたように、「黄金の種族」に無批判に付いていくのではなく、自主的な選択の結果に意味があるのだという事も言えます。
ただ、それも、「黄金の種族」の筋書き通りなんですよね・・・。
ノドスの契約
ノドスの契約については、私の感想の見解と真相は以下のように相違します。
私 | 「黄金の種族」だって間違うかも | 矛盾するなら、契約は破棄される筈。 |
脚本 | 「黄金の種族」は過ちを犯さない | 契約は絶対なので、和解すればいい。 |
ディアネイラ様
ディアネイラ様については「導き手」としての「役割」から、「黄金の種族の母星」を見付ける事までは私の感想での見解と同じでしたが、「黄金の種族」が絶対化された事で、単なる「道化」に堕する可能性があります。最後のどんでん返しを期待します。
銀の種族
「宇宙で最も恐ろしいのは孤独」
「銀の種族」は「孤独」から出発して「精神感応能力」を発達させたという点で、「鉄の種族」も宇宙に適応できる可能性がある事の提示がされたと解釈。
残るはパエトーさんとロム・ローさんは正直どうなるか分からない。
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