「田舎に泊まろう!」という番組は嫌いだ。

 田舎には「古き良きもの」が残っているなんてまるで間違っている。過疎化と少子化無形文化財は衰退する一方だし、嘗ては街の繁華街だった通りも今やシャッター通りになり果て、巨大ショッピングセンターに全て吸い取られる始末。
 交通の便が悪く、見渡しても嘗ては林業が営まれていた筈の数年前に放置された山林、嘗ては漁船でにぎわっていた筈の漁港、休耕して十年二十年は経とうかという水田しか見あたらないのに、公共の電波に乗ってくるテレビには、華やかな都会の生活が描かれるギャップ。
 街に住む人々には無気力感が漂い、鬱病が蔓延し、職を失った中年層、生き甲斐を失った老年層の自殺率が年々上がっていき、子供達もテレビでしか世界を知らず、夢を持てない。

 これが本当の田舎の現実。

 「田舎に泊まろう!」という番組に映し出される「田舎」は、そういった苦しい状況にある本当の「田舎」を映さずに、テレビ局にとって都合のいい「田舎」、つまり、「まだマシな田舎」を扱っているに過ぎない。道で出会う人は明るく、家族はお茶の間で団欒して、いつも笑顔が絶えない――――一そんなものは「特別な田舎」か「特別な家庭」。

 タレントが「田舎の良さ」を見付けてくれるならそれでいい。でも彼らはいつも「都会」の視線から見下した視線で「田舎」を評価する。

 「珍しい食べ物が食べられる」。それしか食卓に出てこない生活が毎日のように続く生活を想像できる?「新鮮な食べ物が食べられる」。流通している食品のバリエーションは悲しい程に少ない事は分かってる?「街も家族も暖かいですね」。それは虚構だ。

 そして、都会で、世界で一般的な事、常識を知らない・または恰も知らないように振る舞う田舎の老人達を捕まえて、彼らを笑う「都会人」の醜さ。

 テレビとして、視聴率を取る分には正しい。田舎に「昔・実家・故郷・理想の家族」といったものを付託して、「素朴でいいなぁ」、「あの頃が懐かしいなぁ」と思う視聴者のニーズに合っている。ただ、「田舎の辛いトコ」を全く映さずl、テレビ局にとって「都合のいい田舎」だけ映して、「田舎もいいトコあるけど、田舎のの人間は常識知らずのバカだし、やっぱり都会の方が便利で洗練されていて清潔でいいよね〜。」という結論(私がそう感じるだけですが)は、田舎を二重に侮辱していると思う。