スケッチブック 〜full color's〜第13話(最終回)感想&備忘録「ひとりぼっちの美術部」
今回は空さんから空さんを見たお話。人も世界も「変わっていく」けど、「変わらないモノ」もある。空さんが「空さんの周囲の世界」の絵を描きながら、「この一瞬の尊さ」と「美術室に込められたみんなの思い出の永遠性」を感じ取り、「空さんと美術部のみんなの世界」の絵に変わっていく過程、そしてラストで成長した空さんが描かれていました。
先回の感想でも書きましたけど、「みんなそれぞれ」、「いつもと違う」、「ちょっと見方を変えてみる」、「成長」など、「変わるモノ」と「変わらないモノ」を描き続けたアニメ版らしい最終回、またそれに相応しい出来だったと思います。
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本編感想
冒頭で「桜」を「美術部のみんな」に準えて、「みんな違う事」を付託した上で、時系列はちょっと下って、空さんを象徴する「マイペースな桜」を覗いて殆どの桜は満開。桜は出会いと別れの季節の到来を表し、「みんながそれぞれの道に進んでいく事」を暗示します。
それと呼応して、空さんに最も近い夏海さんと葉月さんが「それぞれの理由でどこかに行く(=別れのメタファー)」と告げて、美術部に寄らずに「いつも」でなくなってしまいます。
また、他の美術部のメンバーも、みんなそれぞれの理由で美術部に来たり、みんなそれぞれの理由でどこかに行ってしまいます。
「みんな、どうしたんだろう。」
「みんないつかはそれぞれの道を行く事」を感じ取りながら、冒頭の全員集合と対照的に一人ぼっちの空さんの目に、空さん自身を象徴する「マイペースな桜」の木は「美術部のみんな」の(暖めた)御陰で花を咲かせ始めたのが目に入り、「美術部のみんな」を絵に描きながら振り返り始めます。
「あのマイペースな桜の木、他の木よりはゆっくりだけど、ちゃんと咲いている。
みんなで抱きついたのが少しは効いたのだろうか。」
空さんが「美術部のみんな」の絵を描くのに連動して「美術部のみんな」が代わる代わる現れます。これは、鉛筆の素描の最後の最後まで、空さんは自分の姿を描いていない事が象徴するように、空さんの描いている絵が、「空さんの周囲の世界」の象徴だから。「美術部のみんな」が現れる度に、「美術部のみんな」とこれまで重ねてきたお話を思い出しながら、「空さんの周囲の世界」は形作られていきます。
そうして、みんなが美術部を去っていく中、一人美術部に寄っていった空閑先輩は言います。
「今日、この時間、この場所に梶原さんしかいないと思ったまま、根岸ちゃんは年を取っていくのね。」
「不思議ね。」
「あたしがいなくても、誰がいなくても、この部屋は、いつもの美術室なのね。」
「いつかあたし達がいなくなって。
それでも、ここはいつもの美術室だわ。」
空閑先輩が空閑先輩らしい人を煙に巻いた言い方で、ここで口にしているのは「この一瞬の尊さ」と「美術室に込められたみんなの思い出の永遠性」。
根岸先輩が空閑先輩が隠れていた「この一瞬」を見逃した事で「この一瞬の尊さ」を示し、いつかはみんなそれぞれの道を行くとしても、美術部で過ごした日々はみんなの思い出の中にずっとあるし、美術室が美術室らしくある限り、「美術室に込められたみんなの思い出の永遠性」はそこに確かに存在すると言っているのです。
だから、たとえみんながそれぞれの道を行っても、一人ぼっちになっても、一人じゃない。
「誰もいない美術室、それは一人ぼっちなのだけど、でも、一人じゃないような、そんな気がする。」
そうして、「空さんの周囲の世界」を象徴する絵に、空さん自身をようやく描いて、「自分は、今ここにいる」事を象徴的に表します。
「この部屋にはみんなの色んな色があって、その中には、きっと、私の色もあるのだろう。」
「自分は、今ここにいる」事を書き込んだ事で「空さんの周囲の世界(=自分がそこにいない世界)」は「空さんと美術部のみんなの世界(=自分を含むみんながいる世界)」に変わり、そこに「色(=多様性、『みんな』の象徴)」を加える度に、冒頭で仕込んでいたガジェット、「美術部のみんな」を象徴する「桜」の花びらが美術室に入ってきて、「美術部のみんな」に変わり、空さんの「空さんと美術部のみんなの世界(=自分を含むみんながいる世界)」の絵が完成していく事を、そして「美術室に込められたみんなの思い出の永遠性」と、「この一瞬の尊さ」を改めて描写。
こうして、空さんが「一人ぼっちの美術部(=みんなとの別れのメタファー)」を経験し、「美術室に込められたみんなの思い出の永遠性」と、「この一瞬の尊さ」を感じ取ったから、「この一瞬」を逃さないように、自分に気付かずに遠ざかる夏海さんと葉月さんを呼び止め、3人が仲良く話す事で「思い出の永遠性」を表し、更に初対面の人に自己紹介する事で、第1話で提示された空さんの苦手を克服し、「成長」した事も表していました。
「麻生さん!鳥飼さん!」
「空。梶原、空、です。」
「私は少し人見知りだ。初めて会う人とは、ちょっと、上手く話せない。」(<#1)
振り返ってみて
Sunithaは基本的には原作付きの作品のレビューはしないんですが、この「スケッチブック 〜full color's〜」は特別でした。原作が四コマだと聞いていたのに、四コマらしくないストーリー性を重視した脚本だったので、原作とは別物だと直感したという事もあるんですが、それでも最後まで楽しく続けられたのは、この作品がそれだけ魅力に溢れた作品だったという事だと思います。
スタッフのみなさん、いい作品をありがとうございました。
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おまけ
最終回だというワケで、ラストで朝倉先生、ミケ二世など、原作でしか出てなかったキャラが登場してました。嗚呼、朝倉先生に喋って欲しかったなぁ。好きなんだよね、朝倉先生。