プリキュアカレーとインドカレーを食べてた日の日記



 近くに新しく出来たインドカレー屋さんに行くSunitha。
 しかし、立ち塞がったのは、距離の壁でも、ましてや並ぶ人の列の壁でもなく、文化の距離、技量の距離。
 日本人だからといって、みんなが京懐石を作れるワケじゃないし、ましてや私は食べた事もありません。
 フランス人が毎日フランス料理のフルコースを食べてるなんて幼いが故のファンタジー
 外国=アメリカ、アメリカの首都はニューヨーク、アメリカ人は毎日マクドナルドでハンバーガーとホットドッグを食べていると思っていたあの頃。

 そう、インド人という理由だけで、美味しいカレーを作れるワケじゃないのです。

 そして私は、その慟哭を胸に、何故かプリキュアカレーを買いに走るのでした。





 
 近所に新しく出来たカレー屋はインドカレー屋さん。
 入ってみると、行列こそ無いものの、そこそこ混んでいます。
 奥を除くと典型的な北インドコーカソイドらしきオッチャンが。
 早速チキンカレーとナンとサラダを頼みます。

 10分ぐらい待って、カレーの到着。 
 待ちわびたカレーは、ジャパニーズカレーにインドカレーの匂いを混ぜたような味。
 そもそも、ミキサーで磨り潰した玉葱でおいしいインドカレーを作れるワケがありません。
 日本人向けのカレーとしては不味くは有りませんが、インドカレーとは全くの別物。
 ナンも日本人好みのもっちりした物で、これも悪くはありませんが、私はパサパサしたナンの方が好きです。
 サラダは普通、というか、一番インド風でもないし。

 正直、ちょっとかなり不満。

 ちきしょう、二千円を返せ。
 満たされぬ思いを胸に抱いたまま、夕飯の材料を買いに行くと、カレーコーナーが目に入りました。
 不意に思いつく妄想。

 そうだ、夢原さんに癒してもらいましょう!

 夢原さんといえば、オープニングで情熱のりんさんと一緒にカレーを食べまくってる方です。
 きっと彼女の作るカレーは美味しい筈。

 RubyGillisさんあいばさんはS☆Sカレーを食べているようですが、そんな事は知った事ではありません。 私は資本主義の下僕なので、赤丸急上昇の東映みんなの夢の星、夢原さんのyes!プリキュア5カレーに積極的に期待するのです。

 そうと決まればいざ鎌倉。
 手間も掛からず熱湯で煮るだけ、後かたづけも楽チンです。
 人間の堕落!?
 そんな事は知りません。
 リモコンを発明した人だって昔は散々叩かれたのです。
 どうせ叩かれるなら、夢原さんとの思い出を胸にしまってからとことん堕落しきってみせます。
 
 カレーの王子様とか、ポケモンカレーが有る辺りで、yes!プリキュア5カレーを探していると、黄色とピンクのパッケージが。
 これがyes!プリキュア5カレ・・・・・・・・・



 美翔さん・・・・・・・・・・・・。

 しかも定価の135円。

 店側は、最終決戦で精も根も尽き果てた美翔さんに、「その気、やる気、気合い十分、未熟、半熟 、のびのびざかりの夢原さんと戦うだけの力が残っていると思っているのでしょうか?
 過剰な期待は相手にとって重圧に他ならないというのに。

 私はつい棚に眼を戻すと、そこには無垢な眼差しが。

 ダ、ダメ!

 そんな穢れ一つ無い眼で私を見ないで!

 君とはもう一ヶ月も前にお別れしたじゃないですか!

 そんな買ってくれる事をカケラも疑っていない無垢な瞳で見つめるなんて、そんな攻撃、私には通用しないんですよ!

 毎日、視線を合わせる事すら避けて通り過ぎていく人を見送る度に、

美翔さん
「きっとお家ではカレーを買うお金も無いのかしら・・・・・・。でも、私待ってるから!いつか買いに来てね!」

 と、逆に元気づけたり、

 やっと手にとってくれたと思ったら、プリキュア5カレーを棚に並べる手。
 後ろの夢原さんの視線にチクチクと曝されながら、それでも笑顔を絶やさない美翔さん。
 ストレスに耐えきれずがくっと膝を付く日向さんに駆け寄ります。

美翔さん
「ほら咲、笑って。私達はみんなから褒められる為に戦ったんじゃないでしょ?たとえみんなが私達を理解してくれなくても、大好きって誰かが思ってる。その人達の為に、私達は最後まで笑顔でいなくちゃダメなのよ?」
 うううう、美翔さん・・・・・・・・・、

 い、いえ!それでも、私は夢原さんと生きるのです、君とはもう一緒に歩けないんです!

 さようなら美翔さん!


 ・・・私には美翔さんを見捨てる事はできませんでした。

 とりあえず、食べてみた。

 あ、甘い、これが美翔さんの愛の味なのですか、甘甘ですよ。
 けれど、猛烈な甘さの中にかすかな塩味が。
 これは誰かの瞳から流れ出た滴なのでしょうか。



 無言のまま、笑顔で見つめてくる美翔さん、人の善意を少しも疑っていやしません。
 思わず私は口にします。

「あぁ、美味しいよ。地獄の業火のように美味しいよ。」
 そんな私の脳裏に誰かの、本当にかすかな声が聞こえます。
 泣こうが、わめこうが現実は変わらない。
 だから、私も咲も泣いたり、わめいたりしなかった。
 泣いて、わめいて現実が変わるのなら、私も咲も、泣きわめいただろう。
 たとえその姿がどんなに、無様でも。(by 食前絶後!!)

 RubyGillisさんとあいばさんが何故敢えてS☆Sカレーを買ったのか分かった気がしました。