私がやらなきゃ、ダメみたいね。 yes!プリキュア5感想 〜プリキュアの資格〜



 かれん
「結局、私がやらなきゃダメみたい。」 「やっぱり、私がやらなきゃダメなのね。」 「いつもそう。 結局は私がやらなきゃ、ダメみたいね。」

 そんなかれんさんの気持ちを誰が知りましょうか。

うらら
水無月先輩がプリキュアになってくれたら、すっごく頼もしいと思うんですけど。」
情熱のりん
「でも、一度断られてるんだよ。」
こまち
「確かに、かれんは頑固な所があるから、一度断ったらなかなかうんと言わないと思うわ。」
情熱のりん
「そうですか。」
のぞみ
「よーし、とりあえずみんなで水無月先輩に行くぞー、けってーい!」

 「宇宙が授けた光の答え」か何かでしょうか、突然結論を下す夢原さん。
 そして、情熱のりんさんをスルーするうららは恐ろしい子です。
シェリス・アジャーニー 「そうやって、自分の中にある確信を信じて進む人は魅力的よ。
でも、それが他人との間に 大きな溝を作るってこともあるんだけど・・・。」

 何か聞こえた気がしますが、そんな風に始まった第五話です。


生徒
「今日決めた年間予定、うまく説明出来るか自信が無くて。」
かれん
「やっぱり、私がやらなきゃダメなのね。」

 そういう事は先に言っておきましょう。
 こうして、周囲の人達は、かれんさんの都合も考えずに、何でもやってくれる体の良い奴隷扱いをするのでした。
 かれんさんは無駄にスペックが高い為に、他人から当てにされて、責任を負わされ、良いように使われてしまい、彼女自身もその現状を諦めてしまっているようです。

おタケさん
「一人で何でも頑張り過ぎちゃうと、本当に自分の好きな事が出来なくなっちゃうよ。」「あの子にも本音で話せる仲間が必要なのかも知れないね。」

 そう、かれんさんに必要なのは、頼られる部下では無く、助け合える仲間の存在なのです。




 

のぞみ
「あ、あの、実は水無月先輩にプリキュアになって欲しいんです!」
かれん
「またその話?それなら私、興味が無いって言ったでしょ?」

 そんな夢物語、今時誰が信じましょう。
 必死に現実を守ろうとするかれんさんですが、こんな所で引き下がる夢原さんではありません。
 彼女は夢物語を語ってこそのドリームなのです。

 そんな夢原さんの説明を一蹴するかれんさんですが、そこに親友のこまちさんも加わります。

こまち
「この前、地下で凄い地響きがしたでしょ?あれは、私なの!」

 壊れてはいけない何かが壊れ始めた瞬間は、音もなくやってくるものです。
 親友の言葉が真実だとするのなら、自分の信じていた現実が壊れます。
 自分の信じていた現実を真実だとするのなら、親友は嘘を言っていることになり、それは現実の自壊に他ならない矛盾の連鎖、絶え間ない自己否定の合わせ鏡。

 それを打ち破るのは更なる反証です。

のぞみ
「じゃあ、これを見たら信じてもらえますか?」

ココ
「ココー!苦しかったココー!」

 ケダモノでした。

 彼女は知らないでしょう。
 この気安く女性との胸に飛び込むケダモノこそが、彼女の学校で、生徒の蒙を啓き、情愛と友愛、正義と真実を伝え、彼女自信も信頼を置いている筈の教職に就いていながら、初対面の生徒をキュッと抱きしめ、あろう事か押し倒し、また別の生徒とノンバーバルコミニュケーションを果たす程に分かり合い、有ろう事か、教え子Yの自宅に泊まったという報告すら有り、PTAに知られれば即免職&退学、マスコミへの隠蔽も大変、そんな風に日々女生徒をメチャクチャにしているケダモノだという事を。(間違った事は言ってません。)
 ですが、この現実は清純で潔癖な彼女にとってはあまりにも酷。
 酷なのは前者か後者かは推して知るべし。

かれん
「最近のぬいぐるみは良くできてるわね。」

 上ずった声で必死に冷静さを保とうとするかれんさん。
 けれど、ガラスは砕けてしまえば元には戻りません。
 彼女の思考は今まさにそれ。
 砕けたガラスを繋ぎ合わせて、元の形を取り戻そうとする試みです。
 繋ぎ合わせても、ガラスは元の景色を写してはくれないのです。
 そう、時代はもう動き出しているのです。

 更にピンキーと呼ばれる理屈不明の謎生物、怪しいサラリーマン風の男が登場して、かれんさんの唯一の安らぎの場である自宅までが鈍色の非現実に染まって行きます。

ブンビー
「何だ、今までの連中はこんな簡単な事も出来なかったのかね。」

 壊れ始めたかれんさんは、突然の闖入者に、早速セキュリティ会社を変えようかしらと検討を始めます。
 危機管理体制の杜撰さに対して即座の反省、切り替えの速さが知性たる所以です。

かれん
「本当だったんだ。」
 事ここに至って漸く事態を把握。
 それにしても、敵が強いのか、プリキュアさん4人が弱いのか。
 苦戦を強いられる親友のこまちさん達を見ている事しかできないのでしょうか。

 そこに飛来した青い蝶。

ココ
プリキュアに変身してみんなを助けるココ!」

 無責任に戦えと主張するケダモノ。
 生徒会長の直感が告げます。
 これを選べば、何かとんでもない重荷を背負わされる事になる。
 そしてその直感は恐らく正しい。

かれん
「あんな怪物に立ち向かうなんて、私には無理!」

 非現実を認めるのと立ち向かうのは全くの別物なのです。

ココ
「早く助けるココ!」

 なおも無責任な発言を繰り返すケダモノ。
 言われずとも、現状を打開するには、自分自身が動くしかありません。

かれん
「いつもそう。結局は私がやらなきゃ、ダメみたいね。」

 責任感からプリキュアに変身しようとするかれんさん、激しくネガティブです。

 案の定消えてしまう蝶。

 そして何事も無かったかのように再開される戦闘。
 あっさり勝利する四人のプリキュアさん。
 かれんさんは自分の存在意義が猛烈な勢いで希薄化していくのを感じるのでした。
 
 変身出来なかったかれんさん。
 果たしてそれは、「なし崩し的にプリキュアに変身してきた諸先輩方に対する高らかな反逆、否定から始まる新たな反命題」、それとも「やりたくないならやらなくてもいいよ?」という夢の世界の妖精の傲慢なのでしょうか。
 妖精って結構シビアです。
 それ以上に、今年のプリキュアのスタッフは挑戦的です。

 この場面で第一話の台詞が思い出されます。

ココ
「だめだよ。触ったら、消えちゃうんだ。」
 プリキュアの資格、かれんさんにはその資格が無かったのでしょうか。
 私の見解では、かれんさんがツンとデレの配分を間違えた事に起因すると思います。
 ツンの状態で自分を守りながら惰性的にプリキュアになろうとしたのが間違い。
 情熱のりんさんも、はじけるうららも、怒り安らぎのこまちさんも、みんな夢原さんにデレってプリキュアになったのです!
 謂わば、夢の妖精どうたらよりも、夢原さんにデレる事ができるかがプリキュアたる資格の境目なのです!
 
 まったく、ツンとデレの黄金比すら知らずに知性のプリキュアなんておこがましいですね!(バカ)

 かれんさんは、大抵の事は何でもできる筈の自分に出来ない事に混乱し、そして、自分がやらなくても良いならと半ば安心し、自分の殻を守ろうと非干渉の立場を取ろうとします。
 しかし、のぞみさんは言います。

のぞみ
「いいえ。また来ます。」だって私、水無月先輩にプリキュアになってもらいたいんだもん!何度でもアタックするぞ!けってーい!」

 頑ななかれんさんの心の壁に果敢に挑戦する、そんな夢原さんが恰好良いです。

 初めての、しかも予想外の前後編。

 リアルタイムで見ながら、「初めてのネガティブな動機での変身?これはダークサイドに落ちそうだよ!」とか思って見ていたので、きちんと決着付けてくれるのは嬉しい限り。

 来週が楽しみです。