ヒロイック・エイジ感想第2話「忘れられた子供」

 第2話「忘れられた子供」感想

 この物語は、黄金の種族の創った神話から脱出し、人類の神話を創り出す事にあるような気がします。
 何となくですが、銀の種族が今回あっさりと登場した事から、黄金の種族は実は、「銀の種族」にも12の契約を与えて、「鉄の種族」との殺し合いを望んでいるような気がしました。

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 ところで、この作品の構想としては、普通のアニメの定型的なプロット、ワンパターンなキャラ付けから脱線して、神話のプロットを採用し、神話の人物のように我々の予想の斜め 上を行く行動をするキャラクターを動かす事にあると思いますが、正直な所、今はお色気やギャグ、或いはキャラの魅力を全面に出したりと、視聴者サービスで 視聴者の心を掴む時期だと思うのですが、風呂敷の広げすぎで、物語として、序盤の魅力が足らないのでは無いかと思いました。

 神話と(普通の)娯楽作品の大きな違いとして、神話は伏線は殆ど無く、毎回毎回怒濤の展開をする事、登場人物が、「英雄」なだけあって、屡々普通の人間が取らない選択肢を平然と選択する事などが上げられますが、ヒロイック・エイジは神話のそれに近い気がします。
 因みに、駄作と言われるものも、往々にしてそういう構成になっている事は内緒です。

 冲方さんはギャグがあまり冴えない脚本家さんだと私は認識していますが、ファフナーの成功で、自由に構成出来る為でしょうか、少し視聴者を蔑ろにしているような印象を受けました。
 視聴者の理解を超えたキャラを出す人と言えば、有名な所で富野監督がいらっしゃいますが、あれだけおかしいキャラをわんさか出して、どんなにおかしな展開にしても、しっかりと一話の中でエンターテインメントを演出してくれて、物語全体できっちりテーマを描く富野監督は偉大だと思いました。

 ヒロイック・エイジも来週辺りからは、ボチボチ頑張って欲しいです。

 というか、一番感情移入出来るキャラがフートーな辺り、このアニメは何かおかしい気がしました。

 あと、やはりと言えば何ですが、「ディアネイラ」がヒロインで、「イオラオスが相棒な辺りでほぼ確定だったんですが、エイジの役割は「ヘラクレス」でした。
 ヘラクレスといえば、某運命ゲームで有名になった「十二の試練」を乗り越えて英雄になった方ですが、奥さんのうっかりでお亡くなりになってしまう方です。
 今更ですが、ギリシャ神話はえげつないよね。

 今回出た十二の契約、

一つ、契約した相手を王とする。 一つ、王に仕え、決して自ら王とはならない。 一つ、鉄の種族と名付けられた人類の故郷たる地球を 一つ、生き残った英雄の種族、全てを打倒する。 一つ、青銅の種族の母星を征服する。 一つ、銀の種族の母星を征服する。 一つ、黄金の種族の未来を知る力を人類に齎す。 一つ、黄金の種族の星々を創る力を人類に齎す。 一つ、人類を宇宙の覇者とする。 一つ、これらが行われるまで契約した相手を守り続ける。 一つ、これらが行われるまで決して逃げたり死んではならない。 一つ、これらが行われた時、十一の契約に反しない限り、鉄の種族こと人類は、契約者の願いを叶える。

 これは、勿論「十二の試練」に相当すると思われますが、こういうのは不文律にしておいて、明文化しないところに奥ゆかしさがあるような気がするんですが、最初に明確な目的を全て提示するのは、論文や報告書では極めて有効ですが、アニメの脚本としてはどうかと思います。

 因みに、私は、「王に仕え、決して自ら王とはならない。」の辺りが、神話のプロットを意識しているように思いました。
 英雄は、王になるより、誘惑を振り切って再び旅立つ方が多いのです。






 
 さて本編、エイジをまんまと人類側に引き込んだディアネイラさん、「絶対拒絶圏」なるものをお持ちですが、これは心理学でいうところの「パーソナルスペース」を象徴していると思われますから、ディアネイラさんは、一般人では極めて攻略の難しい身持ちの堅いお方のようです。
 ディアネイラさんはエイジには向かない大々的な式典を用意したりと、エイジの事をあまりよく理解していません。
 喜びも怒りもしないので、見てる方としては味気が無いキャラです。

ディアネイラ
「我々の知性が試されています。この方に私達を理解して頂く事、全てはそれから。」「この方は私達人類の為に無くてはならないお方、私達が万事に渡りお世話をするのが道理です。」

 お姫様自ら、人類側では、エイジを理解するつもりが全く無い事を表明しやがりました。
 おまけにエイジの世話をアネーシャさん達、侍女部隊に押しつけやがりました。
 頑張れ、メイルさん、テイルさん。

 ディアネイラさん、命令だけしといて、あなたは何もなさらないのですね。

 精神体になって毎週微妙に脱いでいればヒロインだと信じていると、足下掬われるという事を教えてあげなくては、ヒロインの座を侍女長のアネーシャさんや、無駄に美形なイオラオスさんに全部持ってかれてしまいます、誰か、このヒロインの自覚のないお嬢さんを何とかして下さい。

ビード
「あれが人類最期の希望だと?あれではまるで――」
イオラオス
「猿だ!」

 現時点では、人類にとってエイジは、飼っていれば勝手に戦ってくれる便利な「猿」という存在なんですが、これから、徐々に一人の「人間」として認められ、そして「英雄」として神話になるお話が重ねられると思います。(普通はその筈です)
 自分から始めた育成ゲームの難易度の高さに、開始早々、他人にコントローラーを預けたディアネイラ様はこの際無視するとして、エイジと初めて会ったメイルとテイルが最初にエイジと仲良くなるんじゃないかと思います。
 普通の物語なら、物語の最初に出会った少年少女が恋に落ちるのが常套手段なのです。
 ですが、このヒロイック・エイジ、先程も書いたように、脚本の冲方さんが意図的にずらしているので、普通の物語の常識が通じそうにありません。

 主人公のエイジは、最初から戦う事を覚悟していて、他を圧倒する超越的な力を持っていて、ジャンプの方程式、「努力・友情・勝利」の前二つが欠落。
 ヒロインの筈のディアネイラさんは、既にヒロインとして機能する事を放棄していて、先行きが心配です。
 サブキャラの先鋒、ディアネイラさんラブなイオラオスさんは、数少ない葛藤持ちのキャラですが、唯一の特技の瞬間移動が、逃げる事にしか使えず、活躍の機会がさっぱり貰えません。

 つまり、1話、2話通じて、カタルシスも無く、際だった魅力を持ったキャラも出てこず、キャラの背景や、人類が置かれている情報等も、小出しに出し過ぎて、何となくピンチなのは分かるんですが、感情移入も何も出来ません。

 正直な所、導入部で大分損をしているなというのが、現時点での私の正直な感想です。

 冲方さんの事なので、物語が進むに連れてあれよあれよと怒濤の展開を用意してくれているとは思うのですが、もうちょっと視聴者にサービスしてくれてもいいような気がします。

イオラオス
「だからと言って、あの猿を宇宙に放り出して何も無かった事にするワケにもいかん。」
アネーシャ
「本心はそうしたいんじゃ無いかしら。」

 私も一瞬、今から感想を全部消して、レビューを無かった事にしようかと思いましたが、生身で宇宙に出ても余裕なエイジの逞しさを見て、もうちょっと頑張ろうと思いました。