王女様にしかできない仕事が、あるんだろ!? ウエルベールの物語 第4話感想 〜決意の章〜



 今回のリタ姫様は再び「現実」「理想」の狭間での苦悩してます。
 第2話で、「現実」「理想」の齟齬を、断髪によって象徴的に解消したと思いきや、再びの掲示です。成る程、リタ姫様は、「現実」「理想」の葛藤のテーマで全編引っ張ろうという事ですか。
 姫様が克服すべき対象は「現実」、それもとびきりどうしようもない種類の「現実」です。

ウエルベールの物語 特装版 vol.1


 
 「春を鬻ぐ」事の是非については、その事でメガネ王子を刺してしまったように、極めて潔癖なリタ姫様、勿論反対なのですが、所詮は食べ物に困らない人間の綺麗事に映ります。
 綺麗事でお腹は膨れてはくれないのです。

 そんなどうしようもない「現実」を前にして、ぽっきりと折れてしまった「理想」と一緒に生きる事を放棄して安易な道を取ろうとするリタ姫様に対して、立ちはだかる「現実」に直面しても懸命に生きてきたジェシカさん。

リタ姫様
「戦争さえなければ、民は幸せなのだと、そう思いこんでいました。」
「しかし、戦争が無くても日々の暮らしは楽ではない民がいる事を知りました。」
「それで初めて、私は誰かを救った事になる。」

ジェシカさん
「けど、今日まで頑張って生きてきた。そんなアタイ達に比べたら、王女様はまだ何にも頑張ってないよ!
王女様にしかできない仕事が、あるんだろ!?」


 どうしようもない「現実」がそこにあるから、「理想」が譬え無惨に打ち砕かれたから、「死」に逃げて、懸賞金で目の前の娼婦達にお金を渡して満足してしまうのは、どうしようもなくネガティブ。
 「苦しい」だろうという事だけで、娼婦達を否定してしまうのは、懸命に生きて来たジェシカさんの生き様さえも否定してしまう事になります。
 そして、ジェシカさん達、娼婦だけでなく、民みんながそれぞれ「苦しい」のだという事。外交の道具として望まぬ結婚を決断して、今は厳しい旅路を急ぐリタ姫様、盗賊に身を窶して「死神蜂の男」への復讐を胸に抱いて生きてきたティナ姐さん、みんな「苦しい」のです。でも、民全員を救うなんて事は無理なのです。それでも、リタ姫様には、民全員の不幸である「戦争」を回避し、そして、これからも民を救っていけるる可能性があります、尊い人間には、それに見合う義務を果たさなくてはならないのです。

 それが「ノーブリス・オブリージュ」「貴族の義務」というヤツです。

 鄙陋の身と、蔑まれる立場にある〜〜さんですが、気持ちは決して卑屈ではなく、高貴な身分であるリタ姫様が、勝手に「不幸」だと判断する事の間違いを悟らせて、自らが追っている「義務」の重要さを再認識させる展開が熱いのです。