黒の契約者DARKER THAN BLACK第17話「掃きだめでラブソングを歌う・・・(前編)」

 今話のテーマは、恐らく「反逆」。明日コードギアスの24、25話の放送だとか、そういうのじゃなくて、かなりマジメな話です。
 恐らく、「桜井さんが一橋さんに対する反逆」と、「一橋さんの組に対する反逆」の二つを対比させるのと同時に、「黒<ヘイ>さんの『組織』に対する反逆」の予兆となるんだと思います。
 物語の流れとしては、「桜井さんが一橋さんに対する反逆」が肯定される事で、「黒<ヘイ>さんの『組織』に対する反逆」が将来的に肯定される事になる筈なので、「一橋さんの組に対する反逆」は否定される運命にあるのです。

一橋
「命令すれば何でもする。特別出来のいい人形だ。」

 この一橋さんが言っている「人形」というのは「少女」を指しているんですが、物語の暗喩としては、「一橋さんの走狗」である桜井さん、「『組織』の走狗」である黒<ヘイ>さんを指しているんですよ。
 だから、「(組の)人形である桜井さん」「人形である少女」「このあと」が気になってマスターを気絶させて連れ出し、「(組織の)人形である黒<ヘイ>さん」の所に転がったのは、「少女」を救う事が黒<ヘイ>さんと桜井さん自身を救い、それが「反逆」を肯定する事に繋がるのだと思います。

健児
「そんな目で見るなよ。」
「お前、このあとどうなっちゃうんだろうな・・・」

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桜井健児

 いささか若気の至り的な所はありますけど、バーや、アパートでも、「困っている人の為」に行動していたように、桜井さんは、「誰かの為に体を張れる人」であり、独り黒<ヘイ>さんの「寂しさ」を察していたように、心が優しい人なんですよ。

桜井さん
「そうかなぁ。李さんの背中、寂しそうじゃないですか。」

桜井さん
「ありがとうございました。」
黒<ヘイ>さん
「何がですか?」
桜井さん
「雨宿りさせてくれたじゃないですか。」

 一橋さんは、そんな桜井さんの「価値」を理解せずに、「安心しろ。あいつに俺を裏切る度胸はねえよ。」とは言っていますが、桜井さんには、「度胸」はなくても、「勇気」はある筈なんですよ。物語の初期状態では、黒<ヘイ>さんに「強さの秘訣」を盛んに聞いているように、がむしゃらに「強さ」を求めて、「強い」ように見える一橋さんに憧れている桜井さんですが、「救うべき対象」であり、更には「自分自身を救ってくれる対象」である「少女」を守る事を覚悟する事で、桜井さんは「本当の強さ」を見せてくれるんだと思います。
 だから、桜井さんは、心に描いた「憧れとしての一橋さん」を手本に、「現実の一橋さん」を越える事になるんだと思います。そういう意味で、今回の一橋さんの「健児よお、極道はな、舐められたら終わりだ。」という言葉は、来週桜井さんがそっくり一橋さんに返して、「男を見せる事」になるんじゃないかな。


DARKER THAN BLACK-黒の契約者- 劇伴

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霧原未咲

 時を同じくして、霧原さんと香那美さんにも、黒<ヘイ>さんとの深い接触の伏線が張られています。

霧原
「そもそも、彼の目的は何なのか、私達は何も知らない。
こんな状態で彼等を追うなんて・・・」

 来週は、霧原さんが黒<ヘイ>さんと接触する事で、「人間としての黒<ヘイ>さん」と、「書類上のBK201」という二つの顔両方を別々に知る事で、後々、アンビバレンツな心境を生み出してくれる事になると思います。

 元々、霧原さんは、EPRの「契約者は人間を超越した存在」という選民思想に対する、黒<ヘイ>さん側の主張である「契約者だって人間だ!」を支持する側の人間である事は、今回の黒<ヘイ>さんと霧原さんの部屋の描写からも、しっかりと伏線が張られています。黒<ヘイ>さんの何にもない部屋と、霧原さんのものすごくシンプルな部屋は、二人の類似点として働いているのだと思います。

桜井
「しかし、何も無いっすね。」
黒<ヘイ>
「帰って寝るだけですから。」

 来週は香那美さんと街に繰り出すみたいですが、来週街中で黒<ヘイ>さんと、ばったり会ったり、「少女」を渡したりする事になるんでしょうね。

香那美
「未咲あんたも明日非番でしょ?どうせ予定なんか無いんでしょ?
ちょっと付き合いなさい。」


総じて、今回の「黒の契約者」はかなり異質。

 今回は、アンバーさん率いる「イブニング・プリム・ローズ」、略してEPRが「契約者の権利」を主張した途端に、その行為を肯定するかのように、人権を無視されて売られるドールの「少女」が登場しています。
 ですが、いくつか変則的です。

 1.契約者が能力を使うシーンが一度も出てこない
 2.女性のキャラクターが存在感を放っていない。

 1については言うまでも無いですね。今まで何かの形で「契約者」「能力」を使うというのが黒の契約者の特徴だったのに、今回は一度も出てきていません。
 2もかなり違和感を感じます。今までの話では、黒さんと接触するのはいつも「女性」だったのに、今回は桜井君がそのポジションにいます。
 恐らく今話の意図は、EPRの「契約者は人間を超越した存在」という選民思想に対する、「契約者だって人間だ!」という黒<ヘイ>さん側の立ち位置を明確化させ、「人間」を強調する為に「能力」を一度も出さないんだと思います。
 また、「女性」キャラがあまり活躍しないのは、ゲストヒロインの「少女」がドールである事は勿論、来週の霧原さんの黒<ヘイ>さんへの接近の為の、そして「少女」「人形という境遇に対する反逆」の為の「溜め」なんだと思います。

【完全生産限定版】DARKER THAN BLACK-黒の契約者- 1 [DVD]

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