黒の契約者第20話感想「あさき夢見し、酔いもせず・・・(後編)」
霧原さんが目印のDVD最新巻は9/26日発売
DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 3 [DVD]
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人は誰でも本音ばかりで生きているワケじゃない。
誰しもが嘘をつき、嘘をつかれて生きている。ただ、付いた嘘を付き続けているうちに、嘘を付いている方も、嘘を付かれている方も、それに幸せを感じてしまう事がある。けれど、それを許さない時流がその嘘に容赦無く終わりを要求します。
今回の話では、久能さんに嘘を付き続けている内にそれに幸せを感じてしまった岸田さん、「方便」と信者に説教しているうちに、自分もそれを信じてしまっていたアルマさん、そしてもしかしたら磯崎さんも、そしてアンバーさんもまたそうだったのかもしれません。私は先回の感想を書いた段階では岸田さんとアルマさんの二人は対立項だと思っていました。でも実はそうではなく、この二人の類似性は素直にとれば良くて、劇中では寧ろ、お互いの本音を補う形で描写されていました。
先回の段階の認識
岸田さん | 忘れたくない過去を自分一人で抱えている(=肯定されるべき黄<ホァン>さんと同じ) | 元演劇の役者志望(今の生き方も芝居かもしれない) |
アルマさん | 信者達に救済という名で盲目的に「忘れろ」という教主のポジション | 変身能力 |
今回
岸田さん | 久能さんと自分と暮らしたかった | 芝居としての人生 |
アルマさん | 人間と契約者を結ぶ形の追求 | 変身能力を使った償いの人生 |
「さあ、どうだったかね。実を言えばよく分からなくなっているのさ。」(アルマ)
「最初は方便みたいなものだった。隠れ蓑の為のね。だけど、今はそれが正しいとも思うようになった。」(アルマ)
「だけどあの夜だけは別。あんたが一緒になれって言ってくれた夜の記憶だけは。」(岸田志保子)
「あの時、私は芝居をするのを忘れてた。ただ嬉しかった。」(岸田志保子)
「その二人の記憶があんたの中から消えるのが怖かった。」(岸田志保子)
「記憶から消された者は死んだのと同じ。そうはなりたくなかった。」(岸田志保子)
人間と契約者
今まで「契約者の心」を描き続け、EPRという対立項が登場して、「契約者」と「人間」は違うとし、「人間」を支配しようとする勢力に対して、第20話で、「契約者の心」に振れ続けた「契約者」側の黒<ヘイ>さんと、「契約者」を憎み続けた黄<ホァン>さんの両方から手を伸ばして和解を提示して、EPRとの対立を明確になりました。
「契約者だって、人間だろ?」(黒)
「あいにく契約者との付き合いは長くてな、自分とこいつらの違いも時々分からなくなるくらい。」(黄)
その切欠になったのは、黒<ヘイ>さんにとってはアルマとの会話であり、黄<ホァン>さんにとっては岸田さんとの会話。さらに、アルマさん→黒<ヘイ>さんから渡された「契約者だって、人間だ!」が再び、アルマさんと似た存在である岸田さんにフィードバックされ、最後に久能さんに伝わる展開が熱い。
「契約者には心が無い。」(黒)
「本当にそうだったかい?」(アルマ)
「契約者は夢を見ない。」(黒)
「私は見てきたよ。契約者と人間を結ぶ、その在るべき形を。」(アルマ)
また、アルマさんが提示した契約者について「感情」、「罪の意識」、「夢」の言及が続いて、これが恐らく一つの解答になっていると思いますが、最後に残った問題が一つ。それは「対価」。
このブログで再三言及してきた事ですが、わたしは「対価 = 人間性の喪失に対する代償行為」と捉えています。
岸田さん | 強制的に「贖罪」を要求される「対価」に苦しむ |
アルマさん | 積極的に「贖罪」としての「対価」を受け入れる |
岸田さんの場合は、そのもの「一時的に人間に戻る」事が対価で、アルマさんの場合は、「合理的」ではない「老化」という死に至る対価、アルマさん自身が言った「合理的思考」からアルマさん自身が放棄した事が意味するのは、アルマさん自身が「人間」になったということ。
「契約者」 − 「合理的思考」 = 「人間」
二人の「対価」は「贖罪」を通して「人間」に至ろうとする行為なのだと思います。
「皮肉な対価でしょ。しばらくの間だけ人間らしい感受性が戻る。
だから、自分のしてる事の意味が、恐ろしさが理解できるようになる。
何かの罰みたい。」(岸田志保子)
「それまでは対価が大きすぎるから、やりたくはなかった。
やりたくはなかった。でもその時から敢えて『力』を使い続けようと思ったんだよ。」
「繰り返し『力』を使えば『老化』という対価も繰り返される。せめてもの償いになればと思ってね。可笑しいだろ?契約者が『償い』なんて言葉を口にするなんて。」
「これで解き放たれる。私も、私の業から。」
その文脈でアルマさんが最後に能力を使って「対価」を払ったのは、「人間」として死んだ事を意味し、岸田さんが久能さんと出会った時と同じく「車に轢かれた」のは、過去に於いては「芝居」だったのに対し、現在に於いては「本音」。「嘘を付き続けて本音になった」岸田さん自身の人生を象徴する死に方であり、同時に「あの頃に戻りたい、やり直したい」という欲求の顕現。
夢に酔えない
「一緒になれ」と言った日、久能さんは酔っていました。それは楽しい「夢」だったから。しかし「一緒に逃げよう」と言った日に待っていたのは、永遠の別れ。そしてまた酔えない久能さんが切ない。
次回予告
黒の契約者第21話「粛正の街は涙に濡れて・・・(前編)」
魏志軍再び!前の感想では「血で(縁を)断つ」能力として、黒<ヘイ>さんと白<パイ>さんとの「縁」を断つ存在じゃないかと書きましたが、さて、どうなるかな?
けれど、死んだと思われていた魏志軍は死んでなかったワケですから、次は「白<パイ>さん絡み」で出てくる筈です。
何故かというと、本編で魏さんの能力は、「血で血を洗う」事を顕在化したもので、アリスさんの「血縁」を、「血」で全て断ち切った事から、黒<ヘイ>さんの妹らしい、白<パイ>さんとの「血縁」を、「血」で断ち切る事になりそうですし。
http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20070608/1181310420
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