黒の契約者第23話感想「神は天にいまし・・・」

 今回は、黒<ヘイ>さんと霧原さんが対話を重ねる事で「自分の過去」に、「組織」に立ち向かう決意を決める過程が、何気ない雰囲気の中に切なく描かれていたのがすごく印象的でした。

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世界が平和でありますように…

 今回の久良沢さんの役回りは、「失われたモノ」を切望する人々の声を聞く事。

「やっぱり懐かしいのはジャコビニ流星群を見に行った夜かな。」

「・・・母さんもまだ、元気な頃だよ。」

 これらのエピソードが象徴する事、一つは「契約者としての黒<ヘイ>さんの孤独」として、もう一つは「本当の星空が見えるタメ」、「白<パイ>さんと見た星空に掛けた思い出と重なる形での黒<ヘイ>さんの自分への対峙と、結末への緩やかな希望の予感」。

黒<ヘイ>さんと霧原さん

 今話の開始時点で、黒<ヘイ>さんは、アンバーさんへの怒りを滾らせて、とてもアンバーさんと話し合いを出来る状態ではなかったし、霧原さんはパンドラの息が掛かった組織・警察庁の人間であり、組織の頸木から逃れられずにいて、ノーベンバー11の言葉を実行する決意が固まっていなかったんです。
 けれども、迷う二人が対話をするうちに、互いが互いの答えに導いていく展開が素敵。

「不思議なモノでね、長い間ホシを追い続けていると、少し愛着のようなものが湧いてくる。」
「仕事熱心なんですね。」
「確かにバリバリやってきたと思う。でも、いつの間にか組織の中に飲み込まれてしまって、自分を見失いかけてる気がして。」
「組織はどこも同じです。所詮都合のいい手駒として使われるだけで。」
「そうかもね。」

 その暗鬱さを共有する二人の対話の最後に、黒<ヘイ>さんが何気無く言った言葉は、霧原さんが誰かに言って欲しかった言葉、背中を押してもらいたかった言葉でした。

「話せて良かった。色んな事考えすぎて、ちょっと迷ってたんだけど。」
「迷った時は自分の直感を信じて動けばいいんじゃないですか?」

 そしてこの言葉が他でもない黒<ヘイ>さん自身に反射して黒<ヘイ>さん自身が、霧原さんの対話で言語化した「白<パイ>さんに対する葛藤」を認識する事で、「アンバーに会う」という決意を決める展開が素敵。

「亡くなられたの?それは悲しかったでしょうね。」
「どうかな?ほっとしたのかも知れません。」

 そして、触れそうで触れなかった二人の手が、最後に握手という形で互いに触れた瞬間は、「人間」と「契約者」の共存を暗示していて美しかったです。
 この先、「握手(=友情)」ではなく「手を繋ぐ(=愛情)」に進展するかは分かりませんが、霧原さん頑張れ。

自身を回顧する黒<ヘイ>さん

 黒<ヘイ>さんは妹を大事にしてきた一方で、契約者になって人を殺し続ける妹が哀れでならなかったワケです。
 それは、第12話で湖面に佇んで「本当の星」を見上げて、笑顔で願いを掛けていた白<パイ>さんが、契約者になってしまった結果、死屍累々とした血の海の中で、自分が流した「偽物の星空」を見上げて、無表情に眺めていた白<パイ>さんに切り替わったシーンで示された、黒<ヘイ>さんの絶望感からも伝わってきます。
 今話でも、妹を心配していた黒<ヘイ>さんが血の海の上に佇む白<パイ>さんを見て現実に打ちのめされるシーンがありましたし、その直後には殺そうとすら思っています。
 これは第3、4話の父が契約者になった娘を殺そうとするシーンとも重なるように「失いたくない」と、「存ってはならない」という葛藤の鬩ぎ合い。南米のゲート消失時にはアンバーさんによって白<パイ>さんを強制的に失われた結果、前者の「失いたくない」だけを暴走させ、それを妄執として抱いてきた黒<ヘイ>さんは、アンバーさんに対する怒りのまま仲間達から離れて歩き回っていた所で出会った霧原さんとの交流を通して、次第に怒りが収まっていき、そして後者の「存ってはならない」を言語化して、冷静に自分を見つめ直して、自分自身と向き合う展開が熱い。

「亡くなられたの?それは悲しかったでしょうね。」
「どうかな?ほっとしたのかも知れません。」

決意する霧原さん

 最終回を間近にして霧原さんが「契約者を肯定する一般人」という立ち位置を明確にしてきました。

 今まで黒<ヘイ>さん側で積み上げられてきた「仲間」から「家族」への変化が象徴する、「『家族』による『契約者=人間』という肯定」が内側からの肯定だとするなら、霧原さんによる「『一般人』による『契約者=人間』という肯定」は外側からの肯定。
 霧原さんが「契約者=人間」と認めたからといって全人類から肯定された事にはならないけれど、霧原さんを通して「契約者」達に居場所が与えられる事に繋がります。

 まずは序盤の宝来善充氏が「所詮契約者」とノーベンバー11を吐き捨て、「契約者」と差別したのに対し、霧原さんは「誇りを持って生きてきた人間」と、ノーベンバー11の生き様に敬意を、そして「人間」だと全肯定する立ち位置を明確にしました。極めつけは最後の「冗談です。」。自分の信念を貫いたノーベンバー11を継承しつつあります。

「聞こえなかったか霧原。最早我々が追う事件ではない。所詮『契約者』が一人死んだだけの話だ。」
「彼は誇りを持って生きてきた『人間』だと思います。契約者であろうとなかろうと。彼が私に言い残した最後の言葉は、『自分の信じる事を行う』でした。」
「待て、彼から連絡があったのか。」
「冗談です。」

 そして、序盤の久良沢さんの活動によって示された「(一般人)みんなが本当の星空を見たい」という「願い」が提示され、とりもなおさず「契約者なんて要らない」という意味にとってしまう黒<ヘイ>さんに対して、霧原さんは「契約者が消えたら悲しい」と、一般人の側から「契約者」の存在を肯定してあげるシーンが優しい。
 黒<ヘイ>さんは異邦人であり、契約者、そして、契約者を毛嫌いしていたり(<#1)、「能力なんてなくてもいい(<#21)」と思っていたり、契約者でありながら「本当の星空をみたい」と、自分を含めて契約者の存在を必要無いと考えていたので、霧原さんのこの言葉は黒<ヘイ>さんを救ってくれる言葉。
 霧原さんの立ち位置、「人間と契約者の架け橋」として際だってきた感じです。

「見たいんですか?昔の星。」
「見たいっていうか、見せてあげたい。でも今の星が消えなきゃ、昔の星は見えないんだよね。」
「どうせ偽物の星です。」
「だけど、今輝いている偽りの星が全部消えたとしたら、それはそれで悲しいような。」

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ノーベンバー11に献花、ビール、そしてタバコ

 よく見知った人達が彼を悼んでいる気持ちがあの一コマに詰まっていて綺麗でした。

黄さん撃たれた?

 「乗れよ、送ってやるぜ。行ける所までな。」
 微妙に死亡フラグ、黄さん、死なないで下さい。