スケッチブック 〜full color's〜第1話感想「スケッチブックの少女」
今回は導入編、「何故敢えて絵を描くか」という問いに対しての主人公の解答を通して、緩やかに流れる放課後の空気、どこかに置いてきてしまった風景、忘れてたあの頃の気持ちを思い出させてくれる、そんな作品。
主人公梶原空さんは、色々な「描けないモノ」に出会います。
主人公は美術部の部員ですが、描くのは遅いし、あんまり素早い人間でもないし、技術もないし、写真記憶みたいな才能があるワケでもないし、じ〜っと対象を見つめていないといけないから、綺麗にしかも瞬間的に撮れるデジカメには負ける。
躍動感を表現する技術も無くて「雀の踊りの微妙なテンポ」なんかも描けないから、勿論ビデオカメラにも負ける。
うどんが美味しい時の幸福感や、掛けすぎた七味唐辛子の辛さのような味覚、「ミケの顔に似合わない可愛い声」のような聴覚に至ってはもうお手上げ。
第一、絵は手間も掛かれば、技術もいる、時間も掛かるしで、あまりメリットは無いようにも見えます。
「でも、よく考えれば、それで良かったのだ。」(梶原空)
それでも、主人公が「何故敢えて絵を描くか?」というと、観ながら「絵にはその時の気持ちが込められている」とか、「絵には『自分』が表現されてる」とか、そういう理由だと思って観てたんですが、そうじゃなかったんです。
「描きたいモノ、描けないモノ、たくさん、たくさん有って。
でも、だから、あたしは、今日も、スケッチブックを持ち歩くのだ。
この時期、ここのミラーに反射する光の不思議、これもきっと、スケッチブックには描けないだろう。」(梶原空)
「描けないモノ」、スケッチブックから溢れるような新鮮な世界を観る為に、主人公はスケッチブックを持って、「それ」を待っているんです。
いい雰囲気のアニメだなぁ。
私も下手なりに絵を描くのは好きだったので、表現の限界にすごく共感しながら観てましたけど、すごい人は、すごく予想外の手法で味覚や聴覚も表現しちゃうんですよね。
でも、普通の人でも、芸術にも劣らないくらいの素晴らしい瞬間があるんです。
そんな魅力を持った作品だと思います。
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