スケッチブック 〜full color's〜第2話感想「いつもの風景」

 今回のテーマは「『いつもと違う』冒険」。

スコアブック~小箱とたん作品集~ (BLADE COMICS)

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 「いつもと違う」は、ちょっとした異世界への日帰り一人旅。「日常」からちょっと途中下車、ときどき遡行。所により猫。
 本当は、「日常」は変わらないなんて事はなくて、「いつもの日常」の間にも時計は律儀にコチコチと時間を記録していくし、緩やかな「いつも」にも、事件が起こって、事件が重なって別の「いつも」になっていく。「いつも」はいつも変わっていて、「いつも」はいつも「いつも」じゃないし、いつまでも「いつも」でもない。

 でも、振り返ればいつか歩いていた筈の夕焼け空。
 あの頃過ごした時間は、まるで毎日がループのように同じ事の繰り返しで、その時は退屈だと思ってたけど、それ以外の選択肢は考えられなくて、やっぱりすごく楽しくて。 

 主人公の梶原空さんの「いつもと違う」の旅は、そういった「いつもの日常」を自分からちょっとだけ変えてみる事の試み。「いつもと違う」は新鮮な驚きと発見、そしてワクワクとした興奮があるけれど、反面で、違和感と喪失感、そして不安感が裏側にあります。
 空さんは「非日常への離脱」を象徴する「現実の座標からの離脱=家から出る」という行為に始まる「いつもと違う」を通して「驚き」、「発見」、「興奮」を経験して、そして「家に帰る」という「日常への回帰」を象徴する「現実の座標への回帰=家に戻る」で旅を終えます。

「『いつもと違う』を楽しめるのは、それはすぐそこに「いつも」が待っていてくれるからで。」
「私もそろそろ、戻ろうかな。」

 でも、空さんも知っている。行きすぎれば「違和感」、「喪失感」、「不安感」が待っている事を。
 だから、空さんは「家に帰る」事を通して「いつもと違う」をやめます。そして、「違和感」、「喪失感」、「不安感」は一度も描写される事もなく、ただ視聴者の心のなかで補完されるのです。

 こうして空さんは、作品世界という「擬似的な日常のループ」に戻るんですが、それを観ている現実世界の私達は「いつもの日常のループ」を経験した事があり、そしてそれが永遠ではない、ループじゃない事を知っているからこそ、作品世界で流れていく空さんの日常がいとおしいし、そして切ないんです。

 物語の終わりで作品世界と現実世界の遮断を視聴者に意識させる事で、心地良くも切ない余韻を漂わせる演出は地味だけどすごく上手い。ただただ上手いです。

 「あの時」はもう届かないからこそ尊いのだ。

本編感想

「私はいつも右足から一日を始める。」

 でも、

「今朝は『いつも』をやめてみた。」

 いつもより早く家を出る。
 いつもと逆の脚で歩き出す。
 いつもより一つ前のバス停で降りてみる。

 ほんの少しだけ世界の切り取り方が違うだけで、まるで別の世界に踏み込んだようなのです。ちょっとした異世界、少しの違和感、不思議な感覚。

 いつもいる筈の猫がいない。
 いつもいなかった猫がいる。
 野良猫に首輪がついていた。

 そうして学校に着くと、不思議と周りでも変わった事が起こり出します。

 先生が「秘密兵器」を用意しているらしい。
 珍しく部室に昼ご飯を食べに行ったら先輩が「絵に描いたフォアグラ」で御飯を食べてた。
 ミケが学校にやってきてザリガニを見つめてた。
 「死ぬほどムカツク」ザリガニをミケの魔の手から守る為に根岸先輩がバリケードを築いて孤軍奮闘開始。
 ミケを探して美術部員達の大捜査線。
 いつもは無いはずのサービスカット登場。(妄想ですが)
 気付けばザリガニが卵を産んでた。

「どうして、ミケも『いつも』をやめたんだろう?」

 その事をミケに聞いてみる。

「ミケの毛はいつも通り、ほくほくしている。
 もう『いつも』に、戻ったの?」

 ごろにゃんにゃん

「そっか。楽しかったね。」

 そうだったんだ。ミケも『いつも』をやめて冒険してたんだ。

「私はいつも左足で一日を終える。」

次回予告

 スケッチブック 〜full color's〜第3話「青の心配」

原作コミックス

スケッチブック 1 (BLADE COMICS)

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スケッチブック 2 (BLADE COMICS)

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スケッチブック 3 (BLADE COMICS)

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スケッチブック(4) (BLADE COMICS)

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スケッチブック 出張版 (BLADE COMICS)

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