スケッチブック 〜full color's〜第8話感想「ラジカセと少女の二本立て」

 今回は「違いの分かる」という事を主軸に、登場人物達をこれでもかと丁寧に描写していたのが素敵でした。
 文章で書くと簡単ですが、登場人物の感情の機微の描写がここまで非常に上手い上に丁寧というのは中々無いモノですよ。これホントよ。

違いの分かる涼風コンビ

 いつもボケにボケを重ねて、果てしなくボケを続ける涼風コンビですが、実はもの凄くスペックが高くて、他人に見えない所で頑張ってる・・・という描写で思わずニヤリ。
 本当に自信に裏打ちされた実力で直すんだから凄い。

「CDラジカセ?直せますよ。任せて下さい。」

「麻生さんは本当にあの二人が直せると思ってるの?」
「え?いやぁ・・・。」

「やっぱりダメかな。」
「うん、まぁ、仕方ないかな。そんな必要に迫られてるワケでも無いし。」

 でも、夏海さんと葉月さんは、ダメ元ぐらいの気持ちで、全く期待してませんが、「違いの分かる少女」・空さんは涼風コンビに全幅の信頼を置いてます。

「先輩たちなら、きっとやってくれるに違いない。それは、想像もつかない離れ業で。」

「田辺先輩と氷室先輩の離れ業が見られないのはちょっと残念だ。」

「流石だ。」

 全く期待してない夏海さん&葉月さんがお茶を淹れる為に部屋を出るや猛スピードで修理を敢行し、部屋に戻ってくるまでに修理を完成していた涼風コンビですが、涼風コンビの本領はボケとボケ。普通に直して「凄い人」と思われちゃかなわない、「除霊」でボケて夏海さん&葉月さんを煙に巻いて静かに説き去ります。超絶クールです。

「ねえねえ、デジカメって何の略?」
デジタルカメラ。」

 しかも、何気にBパートの予測まで。神ですか、貴方達は。

違いの分かる謎の少女

 颯爽と登場した「謎の少女」。彼女もまた「違いの分かる少女」。

「おいしい。いつも家で飲むのと一味違います。」

 「いつもとちょっと違うお茶」は、「違いの分かる」事の試金石。この少女、タダモノではありません。
 具体的に何が「違う」のかと言うと、第一話の時点で、空さんの着眼点を面白いと感じていて、今まで覚えていた事が一つ。(ちなみに空さんはその事を言われるまで忘れてました。)
 更にこれぞ好機と言わんばかりに、空さんのスケッチを見せてくれるよう「イエス」か「はい」で「お願い」したのが一つ。

「あの、見せてもらってもいいですか?(にっこり)
見せてもらってもいいですか?(にっこり)
見せてもらってもいいですかぁ?(にっこり)」

 「謎の少女」、恐ろしい子

 また、梶原さんの重要な価値「ふくふくさ」や、「梶原さんが『謎の少女』を小学生だと思っていた事」を絵から読み取っちゃうのが一つ。

「この絵、とっても優しい感じが出てて、
とってもぽかぽか
違うなぁ。ぬくぬく?
そう。ふくふくしてます!」

「それに、なんだかちょっとちっちゃい子みたい。」

「違いの分かる小学生だと思うけど…
違いの分かる中学生だった。」

 極めつけは、空さんの視点が面白いと感じるだけでなく、「空さんの着眼点」、「流れる葉っぱ」、「お兄さんの鼻に止まったトンボ」を正確に感じ取って、カメラに収めていた事。

「お兄さんの鼻にトンボって、面白かったですね。」

 そして、そのデジカメの画像で空さんがスケッチをするんですが、瞬間的に絵を書けないけど着眼点が面白い空さんと、瞬間的に撮れるカメラを持っていて空さんの着眼点を汲み取れる「謎の少女」だから出来た共同作品。
 多分、ただ写真を撮っただけじゃダメで、空さんが面白いと思った「その瞬間」を感じ取って撮影した写真じゃなかやダメなんだよ。

 先日、skripkaさんの「アニメ『スケッチブック』における「視点」の多様化・相対化とその対立構造分析」という慧眼な記事を読んだので引用させて頂きます。

第1話で、主人公よりも先に登場したキャラクター。エンド・クレジットでも<謎の少女>としか表記されていないが、根岸の妹ではないだろうか。第3話の祭りの場面では、根岸の写真を撮っていた。第6話《夏の想ひ出》で夕食の後、根岸が誰かに電話をかけていたが、根岸の妹が写真好きということを考え合わせると、心霊写真がどうのという話の内容からも、妹と話していたのではないかと予想される。

http://blog.goo.ne.jp/skripka/e/b16b3b53189520c4d8d648b8755c7dcb

 私は、「謎の少女」は「スケッチ」と「デジカメ」の差異を描写する為だけの単なるモブキャラだと認識していたんですが、成る程、根岸先輩の妹さんですか。
 私も私なりにマジメにスケッチブックの感想を書いてたつもりだったけど、こりゃヤラれた。負けました。

違いの分かる空さん

 既に涼風コンビの真価の評価の時点で「違いの分かる少女」が描写されていた空さんですが、アバンタイトルの最後の最後で謎の言葉を発します。

「うーん、ううん、日曜日、晴れそうだから。」

 そう、違いの分かる少女・梶原空さんは、「日曜日が晴れそうだ」と、夕暮れを見た時点で見極めていたのです。流石です。

「日曜日、晴れたらお散歩しようと、四日前から決めていた。」

 流石は「違いの分かる少女」。

「日曜日は、いつものお茶でなく、ちょっとだけいいお茶を淹れる。
淹れ方も、いつもよりちょっとだけこだわってみる。」

「おいしい。やっぱりいい茶葉は一味違う。」

「今日のミケはフクフクさが二割増しで、いつもと一味違う。」

「この前とは一味違うお茶ね。苦みと渋みの塩梅がいいわぁ。」
「違いの分かるおばあさんだ。」

「違いの分かる小学生だと思うけど…
違いの分かる中学生だった。」

 実は私は、第一話の段階で、空さんには美術の実力はあんまり無いんじゃないかと思ってた。

 主人公は美術部の部員ですが、描くのは遅いし、あんまり素早い人間でもないし、技術もないし、写真記憶みたいな才能があるワケでもないし、じ〜っと対象を見つめていないといけないから、綺麗にしかも瞬間的に撮れるデジカメには負ける。
 躍動感を表現する技術も無くて「雀の踊りの微妙なテンポ」なんかも描けないから、勿論ビデオカメラにも負ける。
 うどんが美味しい時の幸福感や、掛けすぎた七味唐辛子の辛さのような味覚、「ミケの顔に似合わない可愛い声」のような聴覚に至ってはもうお手上げ。

http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20071004/1191496128

 でも、実はそうではなく、「自分の印象」を絵にするという、簡単に出来そうで、実は中々できない事をやってのける、ピンポイントな実力が有る事が判明。つまり、「違いの分かる人」には分かる絵という事なのですね。

「見たまま書いた。」

 お見それ致しました。

次回予告

 スケッチブック 〜full color's〜第9話「ナニかの為に」

 これを見ている受験生のみなさんに配慮した良い番組だと思いました。(ドクロ)

主題歌サントラ

スケッチブックを持ったまま

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風さがし

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原作コミックス

スケッチブック 1 (BLADE COMICS)

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スケッチブック 2 (BLADE COMICS)

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スケッチブック 3 (BLADE COMICS)

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スケッチブック(4) (BLADE COMICS)

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スケッチブック 出張版 (BLADE COMICS)

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おまけ

 作中もいよいよ秋。毛変わりをしたミケを描写する辺り、芸が細かいです。

「今日のミケはフクフクさが二割増しで、いつもと一味違う。」