機動戦士ガンダムOO第14話感想&備忘録「決意の朝」

 今回は「スメラギさんと留美さんの乖離」、「『平和への思い』とアレハンドロさんの乖離」、更に「スメラギさんとヴェーダの乖離」まで匂わされ、互いに思惑を抱えつつも纏まっていく「世界」に対してソレスタルビーイングの中に響く不協和音が不吉な陰を落としていました。

「私達はまだまだ未成熟な生命体よ。」(スメラギ・李・ノリエガ

「馬鹿馬鹿しい。ガンダムは兵器だよ。目的を遂行する為、人を殺める為に作られたものだ。」(アレハンドロ・コーナー

「こうも世界が早く動くとは。ヴェーダにも予測出来ない人のうねりというものがあるのか。」(ティエリア・アーデ

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スメラギ・李・ノリエガ

 「技術の進歩」によって今の「人類」は宇宙に進出する事(=未来に進む事)が出来るとする王留美さんに対して、「技術の進歩」ではどうしようもない性を抱える「人間」にはまだ早いとするスメラギさんの対比。
 留美さんは人類が抱える紛争などの「問題」は、ソレスタルビーイングにより解決されるであろうという目算を立てている楽観主義なら、スメラギさんは、「問題」は「人類そのもの」に内在していて、「人類そのもの」が変革されなければ、本質的に解決できないと考えている悲観主義者の位置づけ。
 「天使」であろうとするソレスタルビーイングなら、本来は留美さんのように「世界は変わる」という楽観主義であるべきなのに、スメラギさんはそれから外れてしまっています。

ナノマシンの普及によって、宇宙生活での人体の影響は激減した。
なのに、精神衛生上の観点から地上に降りる必要があるなんて。」(王留美
「人間がコロニー以外の宇宙で暮らすには、まだまだ時間が掛かるわ。」(スメラギ・李・ノリエガ
「スメラギさんは人類が宇宙に進出するのがお嫌い?」(王留美
「私達はまだまだ未成熟な生命体よ。
でも、それも悪くないわ。重力下で飲むお酒は格別ですもの。」(スメラギ・李・ノリエガ

 さて、そんなスメラギさんにビリーさんが持ち込んだ「現行勢力に於けるガンダム鹵獲の可能性」のファイルがスメラギさんの知性にとっての「ノイズ」になってしまいそうな雰囲気です。

「こんなファイルを私に見せるなんて、あなた、軍人失格よ。」(スメラギ・李・ノリエガ

 友人を利用したくないから今回立てた戦術予測にはビリーさんのデータを敢えて使っていないようですが、これは目的の為に非情になれないスメラギさんの甘さであり、致命的な敗因になりそうです。
 恐らく、今回ヴェーダの限界についてのティエリアさんの台詞なども考慮すると、今はまだ一致しているスメラギさんとヴェーダの意見の不一致がソレスタルビーイング、そしてガンダムに暗い陰を落とすことになるのだと思います。

「こうも世界が早く動くとは。ヴェーダにも予測出来ない人のうねりというものがあるのか。」(ティエリア・アーデ

「私とヴェーダの意見が一致したわ。」(スメラギ・李・ノリエガ

アレハンドロ・コーナー

「まるで殉教者気取りだ。このような行為で戦争根絶など。」(アレハンドロ・コーナー
ガンダムの性能を『神の力』だと勘違いしているのでしょう。」(リボンズ・アルマーク
「馬鹿馬鹿しい。ガンダムは兵器だよ。目的を遂行する為、人を殺める為に作られたものだ。」(アレハンドロ・コーナー

 先回描かれた、グラハムさんから刹那君への、刹那君からマリナさんへの「平和への思い」のバトンを否定したアレハンドロさんがラスボスっぽくなってきました。

刹那・F・セイエイ&マリナ・イスマイール

「何故、この世界は歪んでいる?神の所為か?人の所為か?」(刹那・F・セイエイ)
「神は平等よ。人だって分かり合える。
でも、どうしようもなく世界は歪んでしまうの。
だから私達、お互いの事を…」(マリナ・イスマイール

 「紛争の原因」が分からない刹那君は、ソレスタルビーイングの指示に従うままではなく、「自由意志」が首をもたげて「疑問」が芽生えてきた感じです。

「何が歪んでいる。それは、どこにある。」(刹那・F・セイエイ)

 前作では、その「紛争の原因」を「ロゴス」という分かり易い形に置き換えていましたが、今作ではもう少し突っ込むアプローチをするみたい。

 これも前から書いてきたことですが、刹那君に目覚めつつある「自由意志」、つまり刹那君がマリナさん(や、沙慈君)を「守りたい」という思いは、ガンダムマイスターとしての行動に支障を来しかねないので、サーシェスさんとの対決の前に不安要素が残ります。

 サーシェスさんの役割は現時点で推測出来るだけでも次の4種類。

刹那君から見た立場 位置づけ 気持ち
1.刹那君の過去の清算の対象 刹那・F・セイエイ個人としての闘い 憎悪
2.刹那君の大事な存在を脅かす敵 刹那・F・セイエイ個人としての闘い 「君を守りたい」という願い
3.ソレスタルビーイングと対立する国の傭兵 ソレスタルビーイングガンダムマイスターとしての闘い 「武力による戦争行為の廃絶」という大義
4.ソレスタルビーイングと対立する「組織」の構成員 ソレスタルビーイングガンダムマイスターとしての闘い 「武力による戦争行為の廃絶」という大義

 サーシェスさんの配置がわざわざ、「ソレスタルビーイングガンダムマイスターとしての闘い」として用意されながら、まだ若い刹那君は、「刹那・F・セイエイ個人としての闘い」と割り切れずに、結局それを引きずってしまう――となっていて、話的に刹那君の「葛藤」が何度も繰り返し設けられる構成になっているのが上手いですね。

http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20071117/1195298269
2.刹那君の大事な存在を脅かす敵

 2は、今後マリナさんや沙慈君を守る為に刹那君が立ち向かわなければいけないのは、「ソレスタルビーイングの理念」と明らかに反する「願い」の鬩ぎ合い。上記の1では、今回のような問題行動はあっても、「ソレスタルビーイングが指定する敵を殲滅する」という、最低限のラインは守られます。でも、「誰かを守る」となると、優先順位が「敵の殲滅」から「誰かを守る」になってしまうので、その最低限のラインからさえ背反してしまう事になります。
 とりあえず、来週のマリナさんと、沙慈君のアタックに期待して行く事にします。

http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20071117/1195298269

 というか、王宮なのに、この前までテロどころか内戦まで怒ったのに、なんてセキュリティの甘さですか。流石は貧乏王女様ですねっ!(ドクロ)

ソーマお嬢さん

「今度こそ任務を忠実に実行します!」(ソーマ・ピーリス

 気負ってる気負ってる。ソーマお嬢さんは相変わらず可愛いなぁ。

新OP&新ED

 落ちて(堕ちて)いく刹那君に始まるOPは刹那君が「世界」に飲み込まれ、翻弄されていくようで圧倒的な出来。カメラワークの絶妙さに分析する暇もなく引き込まれそうになります。
 ルイスさんのお母様が目立ちすぎていつ死亡フラグが立つか心配だったんですが、戦争の外で元気そうなルイスさんを見てると、どうやら杞憂だったようです。いやぁ、良かった良かった。
 ガンダムマイスターで、取り敢えず対立構造として、「刹那君VSサーシェスさん」、「ストラトス兄貴VSグラハムさん」、「アレルヤ君VSソーマお嬢さん」の対立構造が出てたけど、ティエリアさんには無し。それどころか、敵性っぽいガンダムの一機に被るシーンがあったりと、かなり意味深なOPでした。
 前期EDで一緒だったのは最後だけというチームワーク皆無で、今回もバラバラに行動していたガンダムマイスターズが新EDではめずらしく仲良くしていました。裏切りを感じさせるOPとは対照的。ティエリアさんと刹那君の不仲が解消するようなイベントが入ったりするのかなぁ?
 取り敢えず、王道は無人島に二人っきりとかですがどうです?(バカ)

次回予告

 機動戦士ガンダムOO第15話「折れた翼」

 第二クールに入ったばかりなのに怒濤の猛攻勢。流石です。