機動戦士ガンダムOO第16話感想&備忘録「トリニティ」
今回面白かったのは、「視聴者」と似た立ち位置を取っているのが「監視者」、「トリニティ組」、「3大国」、「沙慈君&ルイスさん」と、プトレマイオス組を除く勢力だけで構成されていて、制作者側が視聴者とプトレマイオス組とは距離を取らせようとしているように見えた事。
さて、監視者とトリニティ組が同時に回想を行っていた点で、あれは今までストーリーを動かしてきたプトレマイオス組を或る程度知っていて、且つ当事者ではない視点から評価するという意味、または監視者(=視聴者)とトリニティ(=より急進的な天使)の視点を一致させているとも取れる描写がされていたんですよね。
つまり徹底的に「視聴者」と「プトレマイオス組」の距離が遠くなるように描写されていて、「視聴者」は「等身大の人間」としては「沙慈君&ルイスさん」と、「現実世界での世界の状況」としては「3大国」と、そして「(支持・不支持を決める)視聴者」としては「監督者」と、そして「神の視点」としては「トリニティ組」と一致するように描かれ、物語の開始時点では「神の視点」だった筈の「プトレマイオス組」はあれよあれよと言う間に一番中途半端な立ち位置に…というのは、凄く、面白いです。
やっぱり凄いな、ガンダムOO。
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本編感想
監視者
まず、監視者のシーンを観ながら最初に感じたのが「監視者」の視点は「視聴者」と一致しているという事。
刹那君、アレルヤ君、スメラギさんを不完全だとは思っていても、「除名処分」を行うまでの明確な判断材料があるワケでもない事。
監視者にあるのは「否決権」だけで、視聴者に与えられている「支持権」と一致していて、ソレスタルビーイング/物語に介入する程の力は無い事。
つまり、新しいガンダムに対しても、監視者も視聴者も「見守る」というスタンスを取っているとも解釈できます。
試みに、「監視者」の台詞を「視聴者」に置き換えてみましょう
「何、構わんさ。我々は監視者。どのように世界が動こうとも、我々にあるのは総意によるソレスタルビーイングの否決権だけなのだから。」(監視者)
↓
「何、構わんさ。我々は視聴者。どのように物語が動こうとも、我々にあるのは総意による作品の否決権だけなのだから。」(視聴者)
よく合うような気がします。
今まで、視聴者の原寸大のキャラクターとしては沙慈君だけだったけど、もう一つのアプローチが出てきた事は興味深いです。
プトレマイオス組
ガンダム信仰を揺さぶられた刹那君。
神聖なヴェーダの計画に割り込んできたガンダムに対する不快感を露わにするティエリアさん。(まぁ自分の無力感を棚に上げているのもあるかもですが)
そして、今回の戦闘で提示されたのは「ほぼ絶対」だった「ヴェーダに対しての不審」。
「ヴェーダからの報告は完全でないが、セカンドチームが現れなければガンダムが鹵獲される確率は高かったように思う。」(監視者)
「完全ではない」という言葉、前にティエリアさんが口にした「ヴェーダにも予測出来ない人のうねりがあるのか」という言葉は、果たして「ヴェーダの不完全性」なのか、「ヴェーダがティエリアさんを含むソレスタルビーイングのメンバーにも隠されている事がある」のか。
そして、ヴェーダと自分の予測が外れたことに安堵したスメラギさん。
今まで「人類は未成熟な生命体」と不完全性を許容したり、ビリーさんとの友情に義理を立てて作戦に組み込まなかったりと、「不完全」な所があるスメラギさんだから「計画通り」でない事を肯定したのも納得出来るんですが、それはつまりヴェーダとの疎隔ではないの?と疑問符が浮かんできます。
「予想が外れて嬉しいこともあるのね。」(ヴェーダ)
トリニティ組
ヨハン、ミハエル、ネーナの3人は、急進的なミハエル、ネーナを、一番上の兄であるヨハンさんが押させている感じですが、3人の私服は聖職者っぽいユニフォームで統一され、兄弟の仲も良いところを見ると、私服も性格もバラバラで纏まりのないプトレマイオス組のマイスターズとは違って、「意見の統一」はされている一枚岩の集団と見るべきでしょう。
その前提に立ってトリニティ組の意見を発言を振り返ります。
まずは、地上に住む人々に極力被害を出さないようにしているプトレマイオス組とは違って、「地上の人間」なんてどうでもいいという感じで、情を挿まない神意の忠実な遂行者という感じ。ヨハンさんもミハエルさんを宥めてはいても、ミハエルさんの言い分もよく分かっていてもまとめ役として正論を言っているだけという印象を受けます。
「つまりは、ヤツらのやり方が甘ぇって事だ!
大体よぉ、緊急時以外は敵機のパイロットを殺さないってスタイルが気に入らねぇ!
熟練パイロットの数が減れば俄然こっちが有利になるってのに!だろ、兄貴?」(ミハエル)
「そう言うなミハエル。彼らは輿論の反応を気にしてるんだ。」(ヨハン)
更に、15話でアレハンドロさんとリボンズさんが口にした「ガンダムは兵器」という言葉を共有する所から見ると、トリニティ全体の思想はアレハンドロさんと同じだという事だと思います。
「ありゃあれか?昔に流行った無抵抗主義ってやつか。何の為にガンダム乗ってんだよ。」(ミハエル)
「まるで殉教者気取りだ。このような行為で戦争根絶など。」(アレハンドロ・コーナー)
http://d.hatena.ne.jp/AlfLaylawaLayla/20080112/1200137033
「ガンダムの性能を『神の力』だと勘違いしているのでしょう。」(リボンズ・アルマーク)
「馬鹿馬鹿しい。ガンダムは兵器だよ。目的を遂行する為、人を殺める為に作られたものだ。」(アレハンドロ・コーナー)
更に、ガンダムトリニティのアイン・ツヴァイ・ドライにはちゃんとした色があるのに、極力アップが避けられていたり、アップがあっても黒かったりと、禍々しいGN粒子の放出を見ると、登場してもなお何か隠している…という感じです。
ソーマお嬢さん
「何故なの?貴方だって…」(ソーマ・ピーリス)
回を追う事に人間らしく、可愛らしくなっていくソーマお嬢さんがラブリー。
「アレルヤ君が戦う理由」を知ったらソーマさんのアイデンティティが揺さぶられる事になるので楽しみです。(外道)
沙慈君&ルイスさん
「大事だと思わないの?」(沙慈)
「明日からのテストの方が心配です。」(ルイス)
相変わらず世界に目を向けている沙慈君と、日常に埋没しているルイスさん。
本当にこのまま平和に終わるのかなぁ?(ドクロ)