機動戦士ガンダムOO第22話感想&備忘録「トランザム」
世界はアレハンドロ・コーナーとリボンズ・アルマークに掌握され、三大国はガンダム掃討作戦・「フォーリン・エンジェルス」を発動し、一般人代表の沙慈君には恨まれる…と、「ガンダム」に味方する者は最早どこにもいません。
そんな中で、「ガンダムが作られた『真意』」は、「戦争根絶だ!」と愚直なまでに信じ続けた刹那君の元に、「ガンダムが作られた『真意』」を知る唯一の存在、イオリア・シュヘンベルグから、「最後の希望」として真の意味で「ガンダム(=戦争根絶を体現する存在)」を託される展開が熱すぎる。
イオリア・シュヘンベルグは人間の「悪性」に絶望してはいなくて、「最後の希望」は人間の「善性」を信じて「戦争根絶」という共通の理想を持ったガンダムマイスター達の若者達に託したという点で、イオリア・シュヘンベルグは、アレハンドロ・コーナーのような「神気取り」の小人ではなく、最後まで一人の「人間」として同じ「人間」を信じていたというのが、超絶に格好いい。
そして、この「思い」はイオリア・シュヘンベルグのものだけではなく、彼が提唱した「綺麗事の理想」を信じて戦い続けてきた全てのソレスタルビーイングのメンバーの「思い」が込められた「300年分の厚み」があるのですよ。これに燃えずに何に燃える!
「GNドライヴを有する者達よ、
君たちが私の意志を継ぐ者かは分からない。
だが、私は最後の希望を、GNドライヴの全能力を、君たちに託したいと思う。
君たちが真の平和を勝ち取る為、戦争根絶の為に戦い続ける事を祈る。
ソレスタルビーイングの意志ではなく、君たちの意志で、ガンダムと共に。」(イオリア・シュヘンベルグ)
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アレハンドロ・コーナーは神を気取り、イオリア・シュヘンベルグは人間を貫く
「あなたが求めた統一世界も、
その抑止力となるソレスタルビーイングも、この私が引き継がせてもらう。
そうだ、世界を変えるのはこの私、アレハンドロ・コーナーだ。」(アレハンドロ・コーナー)
そう言って、「神気取り」のアレハンドロ・コーナーはイオリア・シュヘンベルグのコールドスリープに金色に着飾った銃で弾丸を撃ち込んだワケなのですが、ここで敢えて場違いを承知でガンダムWのトレーズ閣下の言葉を引用しようと思います。
「戦うことを忘れ着飾った銃では、例え敵の胸板を打ち抜いたとしても、私に感動を与えない。
無垢なものは無軌道なのではない、自由なのだ、心が…。」(トレーズ・クシュリナーダ)
何だかもう、当初の謎めいた紳士だったアレハンドロ・コーナーは、ホントにただの小人に成り下がったなぁ…と思うんですが、アレハンドロ・コーナーは、要するに、イオリア・シュヘンベルグが怖かったんですよ。死してなお「ヴェーダ」としてあり続けるイオリア・シュヘンベルグという存在が。
だからわざわざ無抵抗に眠っているイオリア・シュヘンベルグを「着飾った銃」で執拗に、何度も撃ったワケなのですが、アレハンドロ・コーナーはようするに「人間が信用できない」んですよ。信用出来ないから、用済みになった存在は自分の「世界」から次々に消していく。「ガンダム」、「ラグナ・ハーヴェイ」、「トリニティ」。それは、「人間を信用出来ない」小人の所行に過ぎません。だから、「神(と彼が信じている存在)」であるイオリア・シュヘンベルグを消さないと、自分は神になれないと考える。アレハンドロ・コーナーの思い描く世界は、自分の思った通りに動く駒(崇拝者)を操る世界であり、従わない存在(異教徒)は消す事で実現される世界なのですから。つまり、アレハンドロ・コーナーは「戦争根絶」とは言いながらも、不平分子を「粛正」する事でしか維持できないアリー・アル・サーシェスと同類の「殺人鬼」に過ぎません。
しかし、イオリア・シュヘンベルグ自身は自分を決して「神」だとは思っていなかった。
人間を信じて、最後まで一人の人間として、「思い」をガンダム・マイスター達に託した。
「人間は未だ愚かで、戦いを好み、世界を破滅に導こうとしている。
だが、私はまだ人類を信じ―――、力を、託してみようと思う。」(イオリア・シュヘンベルグ)
もし、イオリア・シュヘンベルグがアレハンドロ・コーナーと同じように「人間」を信じていなかったら、自分が殺された時点で、GNドライヴを使用不能にしてヴェーダを破壊した筈なんですよ。だって、アレハンドロ・コーナーさんなら、「自分が支配出来ないなら世界なんて壊れてしまえ」と考えますよ。賭けてもいい。
でもイオリア・シュヘンベルグは、例え自分が死んだとしても、世界を変えねばならないと考えていた。それは、打算も損得勘定も無い、ただただ純粋な「戦争根絶」という敬虔な「願い」。
いや、本気でイオリア・シュヘンベルグが格好いいと思いました。悪人面のくせにな!(ドクロ)
道標無き道へ…
先回は、ヴェーダを乗っ取られてガンダムのコントロールを奪われ、ガンダムマイスターとして「戦う理由」を失った刹那君が再び己の中の「戦争根絶」という「願い」の為に再び「戦う理由」を見付ける話でしたが、
今回は、ガンダムそのものに込められた「思い」を探して、愚直に戦い続ける刹那君の元に、イオリア・シュヘンベルグもまた「戦争根絶」という「願い」を抱いていた人間だったというメッセージが伝わり、アレハンドロ・コーナーが支配しようとする流れを食い止めるべくGNドライヴの全能力が託される…というのが超絶に格好いい。
なお、先回とは違って、刹那君がアリー・アル・サーシェスと、イオリア・シュヘンベルグがアレハンドロ・コーナーと対立し、刹那君とイオリア・シュヘンベルグの存在が等しくなり、アリー・アル・サーシェスとアレハンドロ・コーナーが同レベルのヒトデナシだと描かれる事で、刹那君への感情移入が最大になる…という構図が非常に上手い。
踊らされているだけのセルゲイさんを始めとする3大国ではなく、アレハンドロ・コーナーと同じく「殺す」事でしか生きられない存在であるアリー・アル・サーシェスと戦わないと、イオリア・シュヘンベルグの「理念」が十分にカウンターとして機能せず、あれほどのカタルシスは無かった筈ですから。
それ程に刹那君とイオリア・シュヘンベルグが共に「戦争根絶」の「願い」を叫ぶシンクロシーンは熱かった。
「貴様のような男がガンダムに乗るなど!」(刹那・F・セイエイ)
「てめえの許可がいるのかよ!」(アリー・アル・サーシェス)
「ガンダム…こいつはとんでもねえ兵器だ。戦争のし甲斐がある!
てめえのガンダムもその為にあんだろ!」(アリー・アル・サーシェス)
「違う!絶対に違う!俺のガンダムは!(戦争根絶の為の存在だ!)」(刹那・F・セイエイ)
「世界は、人類は、(戦争を根絶して)変わらなければならないのだから!」(イオリア・シュヘンベルグ)
ティエリアさん
先回の刹那君に遅れて「戦う理由」を失ったティエリアさんですが、刹那君の理解者であるストラトス兄貴から「答えは自分の中にある」のだと教えられて、先回の刹那君と同じように、「戦争根絶」という「願い」に辿り着くのが格好いい。
その後で、イオリア・シュヘンベルグから「ソレスタルビーイングの意志ではなく、君たちの意志で」と言われたので、もうティエリアさんはブレたりしない。
「ヴェーダが無ければこの計画は…。」(ティエリア・アーデ)
「出来るだろ、戦争根絶の為に戦うんだ。」(ロックオン・ストラトス)
「だが、計画実現の可能性が…」(ティエリア・アーデ)
「四の五の言わずにやりゃいいんだよ。
お手本になるヤツがすぐそばにいるじゃねぇか。
自分の思った事をがむしゃらにやるバカがな。」(ロックオン・ストラトス)
「自分の思った事を。」(ティエリア・アーデ)
とりあえず、しおらしくなたティエリアさんは可愛すぎる。
「ロックオン、悪かった。」(ティエリア・アーデ)
ストラトス兄貴
「それにな、俺が寝てると気にするヤツがいる。
いくら強がっていても、あいつは脆いかんな。」(ロックオン・ストラトス)
って、あれー!?、フェルトさんの事じゃないんですか、兄貴!
この鈍感!
「優しいんだ、誰にでも。」(フェルト・グレイス)
フェルトさん……。
トリニティ
「私達は、ガンダムマイスターだ!
この世界を変える為に!」(ヨハン・トリニティ)
「ご託は!沢山なんだよ!逝っちまいな!」(アリー・アル・サーシェス)
「バカな、私達はマイスターになる為に生み出され…その為に、生きて…」(ヨハン・トリニティ)
トリニティは今までやって来た事が手前勝手過ぎたし、今回彼らが兄弟を失ったのだって、自分たちがルイスさんにした事と同じだったし、彼らの事は正直あまり好きではなかったんですが、最後までお互いの事を大事にしていた所だけはグッと来ました。
「逃げろ、ネーナ!」(ヨハン・トリニティ)
グラハムさん
GNドライヴをフラッグに乗せるのですか…それじゃ形だけフラッグで中身はガンダムと変わらないじゃないですか……。それでも「フラッグ」と言えるのですか…。
失望させないで下さい、グラハムさん…。
機動戦士ガンダムOO 特典 ガンプラ FG「ガンダムエクシア ロールアウトカラー」付き
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