答えろよ。質問は既に…『拷問』に変わっているんだぜ。コードギアス反逆のルルーシュＲ２第17話感想＆備忘録「TURN17 土の味」

　ルルーシュとスザクが辿り付く筈だった「優しい世界」の萌芽を、シュナイゼルが自分の目指す「世界」の為に握り潰して破壊した事で、ルルーシュとスザクそれぞれが「断罪者と受罪者」を併せ持つ存在に逆戻りし、同時にシュナイゼルが「優しい世界」の敵である事を示していました。

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本編感想

a misplaced anger

　これまでの感想で、コードギアスには「免罪者―贖罪者」と「断罪者―受罪者」に分かれると書いてきました。勿論「罪（＝嘘）を赦す」事でお互いの存在を確かなものにしていく関係性―――優しい世界―――を目指すナナリー達の立ち位置が正しいワケですが、「嘘を付かれた」、「裏切られた」と、「罰」の意識を以て断罪しようとするスザクと、「罪」の意識に苛まれて自己犠牲に流れていくルルーシュ、そんな二人の現在の関係性、「断罪者（スザク）→受罪者（ルルーシュ）」が、今正に「免罪者―贖罪者」に変わろうとしたその瞬間にシュナイゼルの関係で「断罪者（ルルーシュ）→受罪者（スザク）」と、「罪」と「罰」の意識が逆転し、「断罪者―受罪者」の関係性が益々悪化、正に最悪の状況です。
　それに伴い、人の思いを利用・蹂躙して己の欲を通す、ブラックリベリオンの時のルルーシュが再来し、作中悪を突き進むルルーシュが悲しい。……とは言いましても、全シリーズでブラックリベリオンに突入したのは23話で、その時は尺的にもうルルーシュとスザクの和解なんてもう完全に無理だったのに対し、今シリーズではまだ17話。やり直し、「Round2」の「R2」として、思う存分前シリーズをやり直していただきたいと思います。

　コードギアスは「痛い少年少女の心理」を「世界制覇」という格好良さで彩った物語という側面があり、一枚皮を剥がせば、そこには当然、実に「痛い少年少女の心理」があるワケですが、今回の話を要約すれば、「逆ギレ」を格好良く装飾すればかくありなん、という感じです。

Is it this gold ax that you dropped?

　今回繰り返し、カレンお嬢さんが「本当のルルーシュはどれ？」と思ったり、ジノがカレンお嬢さんに「君が選びたい君を選んでもいいんじゃないの？」と選択を促したり、シュナイゼルが「君が選択すべき君は一体どれだい？」と邪悪な問いを発したりと、前々回ルルーシュが沢山の自分に詰問されたような、「自分は一体何者なんだ？」という問いを、まだ揺れている主要人物達に投げ掛けたワケなんですが、問い、問われているカレンお嬢さんについては、ロロがナナリーを殺そうとした成り行きで真実を見極める為にナナリーに協力したりするポジティブな文脈上に立ちつつあるんだと思うんですが、スザクはシュナイゼルの所為で、他者によって規定された「スザク」という枠に押し込められつつあるネガティブな文脈上にいるワケなんですよね。

「その代わり、私が貴方を大好きになります！」（ユーフェミア・リ・ブリタニア）
　
「だから自分を嫌わないで！」（ユーフェミア・リ・ブリタニア）

　嘗てユーフェミア様は、スザクのダメな所も含めて全てのスザクの面を肯定して「大好きになります」だと言ったワケなんですが、シュナイゼルのやっている事はその逆。先回ニーナも同じ事をしていましたが、「君はこうあるべきだろう？」という押し付けに他ならないワケです。
　スザクはフレイヤを使うか使うまいかで葛藤し、土壇場で何かしらの答えを掴む筈だと思うので楽しみにしていようと思います。

Game with perfect information

「全てのカードは私の手の中に。」(シュナイゼル・エル・ブリタニア)

　成る程、ルルーシュの思考の雛形がチェスなら、シュナイゼルの思考の雛形はカードというワケですか。
　前に書きましたが、皇帝、ルルーシュ、そしてシュナイゼルに共通する志向として「完全情報ゲーム」を好む、またはそれだけを信じているという点が挙げられます。（多分皇帝が思考エレベーターを用いて作ろうとしているのは、自分を中心とした永遠の完全情報ゲームの実現。）
　ルルーシュのチェスが完全情報ゲームであるのに対して、シュナイゼルのカードは不完全情報ゲーム。でも、シュナイゼルが言った「全てのカード」という言葉から推測するに、シュナイゼルのやり口というのは、不完全情報ゲームであるカードゲームをあの手この手で完全情報ゲームに持ち込むタイプだという事でしょう。具体的な例を出せば、シュナイゼルを含む４人がカードゲームをするとしたら、シュナイゼルは１人を惨敗させる為に２人を抱き込むとか、一人だけ勝つ為に監視カメラで他の人のカードの中身を覗いたりするような、そんな感じのやり口です。
　ルルーシュの方法論が不完全情報ゲームを完全情報ゲームに近似するタイプなのに対して、シュナイゼルの方法論は不完全情報ゲームをあの手この手で完全情報ゲームに持ち込むタイプ。
　不完全情報ゲームを完全情報ゲームに無理矢理当てはめようとするから不確定要素に弱いルルーシュに対して、シュナイゼルは不完全情報ゲームのまま、自分だけ完全情報ゲームに持っていくような輩なので、ルルーシュよりいつも上手というワケですね。私はやっぱりシュナイゼルとは仲良くなれそうにないなー。（笑）