あ…あの女の目…養豚場の豚でも見るかのように冷たい目だ…残酷な目だ…。『かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね』って感じの! コードギアス反逆のルルーシュR2第21話感想&備忘録「TURN21 ラグナレクの開始」

 「嘘は全て罪」とするブリタニア皇帝達と、「嘘は全てが罪じゃない」とするルルーシュ達の戦いは、本質的に作中悪である「ギアス」に作中善である「個人の意志」を絡めて「嘘」の存在を肯定し、「断罪者&受罪者」であるルルーシュが不完全ながらも(「免罪者&贖罪者」にはなっていない)勝利し、続いて「罪」を背負ったルルーシュ達と、「罪」を背負わないシュナイゼルの戦いに遷移して、いよいよコードギアスR2もクライマックスへ。

コードギアス 反逆のルルーシュ R2 volume02 [DVD]

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本編感想

 「勝った筈なのに、何となくすっきりしない。」そう感じたのなら、貴方は恐らくは正しい。

 ルルーシュは確かにブリタニア皇帝の計画は阻止しました。
 しかし、「願い」という作中善の要素を用いてはいますし、「俺は俺だ!」と自己を同定していますし(これも作中善)、ナナリーの「優しい世界」(これも作中善)を肯定したようにも見えますが、実際には集合的無意識に働き掛ける際には、作中悪であるギアスを使い、更に悪い事に、ギアスが両眼に覚醒して、半ば「人間」を辞めてしまっています。(多分、右目のギアスが発動される瞬間にルルーシュの目の「光」が暗闇に呑み込まれたのは多分そういう事だと思います。)

「俺は今こそ自分を知った!
神よ!集合無意識よ!時の歩みを、止めないでくれ!」(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
 
「それでも俺は、明日が欲しい!」(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア

 更に、皇帝に即位する際には、あれだけ否定されてきたギアスを公式の場で堂々と自分の肉親達に掛けており、暗躍してこっそりと必要な人間にしか掛けなかった「ゼロ」なんて目じゃない、「作中悪」の権化になってしまっています。

「我を認めよ!」(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア

 更に、スザクも、ルルーシュに賛同こそしているものの、その一人称は、枢木スザク本来の「俺」ではなく、「僕」であり、まだ「偽り」を残している。(「嘘」の存在は認められているものの、やっぱりこれは違うだろうみたいな)

「そうかもしれない。少なくても、ユフィは最期まで『ルルーシュがゼロ』とは言わなかった。シャーリーだって。だから僕は―――」(枢木スザク)

 また、ルルーシュ自身が「一つだけはっきりしている事がある」と断言出来る「親が子を捨てた」という事実だけが、確かな根拠がある事なんですが、それが、スザクが「罪」として悔い続けている「親殺し(しかも両親同時に)」という行為に至ってしまっています。それが、まともな神経の視聴者であれば直感的に「間違っているのでは?」という疑問を抱いてしまう上に、それが「ただの親子の諍いで世界の在り方を決めちゃって、しかもスザクとC.C.もそれでいいの?」という疑問に派生していきます。

「何故分からないんだ!
ナナリーは目も見えず、歩くことも出来なかった!
だから、世の中には自分一人では出来ないこともあるって知っていたんだよ!
ナナリーは、ナナリーの笑顔は、せめてもの感謝の気持ちなんだ!」(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
 
「そのよう誤魔化しこそが!」(シャルル・ジ・ブリタニア
 
「それを嘘だとは言わせない!い、言わせてなるものか!
現実を見ることも無く、高みに立って俺達を楽しげに観察して!
ふざけるな!
事実は一つだけだ!お前達親は、俺とナナリーを捨てたんだよ!」(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア

 だから、今のルルーシュ達の立ち位置は決して完全な「作中善」ではない。普通のアニメなら、そろそろ主人公達が「作中善」に気づき始める所ですが、コードギアスは「作中悪」の上に「作中善」を五割ほど被せたような、おかしな状態にあります。これが恐らく視聴者が感じた「違和感」の正体だと思います。

 一視聴者としては、「主人公が現時点で作中悪に傾いていても、もうちょっと盛り上がりは欲しかったな」という考えと、「制作者側は視聴者に『違和感』を持たせて考えさせようとしたのかな」という考えの板挟みになっていたりするのですが、それが制作者の意図なのか、制作者の想定外なのか、今はまだ判断しかねる所です。
 ただ、「一つだけはっきりしている事がある」とすれば、視聴者が抱いている「違和感」は、コードギアス世界の人間達が抱いている「違和感」が同種のモノであり、それを現出してみせただけで、コードギアスは舞台装置として最上のモノだと私は断言します。


 あとは、シュナイゼル兄さんとの「有罪(偽りだらけ)」と「無罪(大義名分)」の戦い。
 この戦いを経る事で、ルルーシュは今回到達出来なかった「作中善」に到達する事になるとは思います。

「問題はその先にある。
世界を握るのはルルーシュのギアスか、それとも―――」

気になる要素

    1. ブリタニア皇帝達は、「死者と話せる」と言った時に「ユーフェミア」だけで、「ナナリー」は引き合いには出さなかった。→ナナリー生存の蓋然性が上昇
    2. ジェレミア卿は、あろう事かマリアンヌを手に掛けたルルーシュを許せるのか?→普通に考えて許せるワケが無い。
    3. 元の拘束服に戻ったC.C.→真っ新な自分に戻ってルルーシュとの関係性をゼロにして、ルルーシュの元を去るつもり?
コードギアス 反逆のルルーシュ R2 volume03 [DVD]

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次回予告

 コードギアス反逆のルルーシュR2第22話「TURN22 皇帝ルルーシュ

おまけ

 正直に白状すれば、今回の話は――――よく分からない。
 物語としての位置づけというか、登場人物達がこんなに「作中悪」にまみれたままでクライマックスに突き進んでいいものかという、配分としての意味で。