お前は自分が『悪』だと気付いていない、最もドス黒い『悪』だ…。 コードギアス13話感想 〜シャーリーと銃口〜
今回は、「修羅」となる事を「覚悟」したルルーシュとカレン、軍務に従事する中で、信念に「矛盾」が見え隠れするスザク、全体の「願い」を優先して自身の「願い」からかけ離れていくC.C.と、個人と組織の狭間で揺れる主要人物達が印象的でした。
また、「正義」と「悪」の解釈の多義性に齟齬し続けるルルーシュとスザクの見せ方が秀逸すぎました。
コードギアスの構成能力、脚本の完成度は異常な位に高すぎます。
・ルルーシュとカレン
共にナリタ戦線に参加したルルーシュとカレン。
謝らずにはいられず、言葉にしてしまったカレンと、掛ける言葉が見つからないルルーシュ。
嘘はついても上辺だけの言葉を繕ったりしない、その先にルルーシュの偽らない心があるような気がしました。
カレン
「その、ごめんなさいシャーリー。」
ルルーシュ
「・・・・・・・・・・・・」
そんな「罪」の意識がある二人に、「罰」の意識を持って断罪しようとするスザクの言葉が突き刺さります。
スザク
「卑怯だ!黒の騎士団は、ゼロのやり方は卑怯だ!自分で仕掛けるのでもなく、ただ人の尻馬に乗って事態を掻き回しては、審判者を気取って勝ち誇る!あれじゃ何も変えられない!間違ったやり方で得た結果なんて、意味は無いのに!」
カレンは「母」、「兄」との絆を示す写真を見つめますが、写真や思い出は何も答えてはくれません。
ルルーシュは、C.C.に追い打ちを掛けられ、覚悟を決めます。
C.C.
「なら、何故今更迷う。それとも情で揺らいだか?せがまれる儘にキスして。どれだけ偉そうな事を言っても、所詮は口先だけの頭でっかちな童貞坊やか。」「お前にはもう、動揺したり、立ち止まる権利など無い。生きる為に必要なのだろう。私を失望させるな。」
ルルーシュは二人の、カレンはスザクの言葉に対して何らかの形での回答をしない限り、進むにしろ、退くにしろ、再び立ち止まるにしろ、何も出来ないのです。
この答えが、同じ苦しみを抱えるだけでなく、母と子、兄と妹という、気持ちを共有したルルーシュとカレンの会話から紡がれて、二人がまた一つ、気持ちを共有することになったりと、本当に構成の美しさが際だってるな、と思いました。
仮面を外したルルーシュの、 「流した血を無駄にしない為にも、更なる血を流してみせる」というのも、後でスザクの発する言葉、
「どうしてお前は無意味に人の血を流す!」という言葉に対しての一つの明確な反駁でもあります。
あと、このセリフを、ルルーシュがゼロの仮面を外して言ったのは重要ですね。
偽りの仮面を被ったゼロではなく、嘘の無い、ルルーシュの本心から出た言葉という事ですから。
「ありがとう」という言葉も、本心から出たものに相違ないワケなんですよね。
同じ痛み、苦しみを共有している事に気付いて、ゼロを守る事を決意するカレンさん。
これで、ゼロがルルーシュだと分かっても揺るがない好感度を獲得できたんじゃないかな。うん。
ゼロ
「迷っているのか。」
カレン
「私は、正義の為だと、それが正しい事だと思って、今まで戦って来ました。だから人も殺しました。でも、本当に、本当に私達のやり方で世界が変えられるのでしょうか。」
ゼロ
「変えられる。いや、変えねばならない。」
カレン
「でも!」
ゼロ
「犠牲が出るか。兵士でもないのに、巻き込まれて死ぬ者が。」「だが、だからこそ、我々は立ち止まる事は出来ない。たとえ、どんな手段を使っても、卑怯だと罵られようと、勝つしか無いんだ。その為に、修羅になるべきだ。流した血を無駄にしない為にも、更なる血を流してみせる。だが、強制はしない。カレン、引き返すなら今だ。」
カレン
「ともに進みます。私は、貴方と共に。」
ゼロ
「ありがとう、カレン。」
・スザクの矛盾
小さいながらも組織の決定権を持つゼロを「ただの人殺し」と罵倒しながら、軍務に背いて銃は撃たないながらも、殲滅作戦に荷担しているスザク自身、それ を命じた上官ダールトンや、やはり「ただの人殺し」の筈のコーネリアは批判せずに、その不満を全てゼロにぶつけているようにも見えます。
スザク
「こんなの、もう戦いじゃない。」
セシル
「枢木中尉、辛いかも知れないけど、あなたは職業軍人なのよ。」
スザク
「はい、分かっています。」
第8話で、スザクが「僕は組織の人間です。個人的な感情より、組織の論理を優先します。」と言ってましたけど、組織を言い訳にして、ゼロに対する理解を拒絶して、頭から否定しているだけなのではないでしょうか。
実際、スザクは「無意味に」と言いますが、ルルーシュは「流した血を無駄にしない為にも」と、決して無意味には思っていなくて、スザクの主観が絶対の基準ではなく、多分に誤解を孕んでいて、相互に理解する余地を残しているわけで。
<追記 01/12>
考えてみれば、スザクは誰かの為に戦っているワケではなく、他人に対して或る意味無責任なんですよね。
第四話で自分の考える世界ではないのなら、「未練は無い」と言って、自分の死んだ後に後悔を持っておらず、自分の中で完結しているあたりは、自己満足の為に戦っているとも解釈出来ますし。
スザク
「それが世界だというのなら、自分は・・・ 未練はありません!」
それに対して、誰かの為に戦っているルルーシュやカレンは手段を選ばずに誰かに対し責任を負っており、自分が死んだ後の世界に後悔が残っている為に、二人とも、志半ばで死ぬ事を素直に受け入れたりはしないんですよ。
ルルーシュ
「そして終わるのか、俺も・・・。
何一つ出来ない儘、あっさりと。
ナナリー・・・・・・!!」(第一話より)
カレン
「お兄ちゃんっ!!」(第二話より)
何となく、スザクの精神構造が垣間見えたような気がしました。
とにかく、第四話の、「未練は無い」の意味がやっと理解出来て良かったです。
</追記>
まあ、そんなワケで、早くユーフェミア様がラクス様の位置から、スザクの信念を揺さぶってくれないかなぁ。
それともユーフェミア様にはまだ荷が重いのかなぁ?
それじゃあ、ユーフェミア様は、きっかけさえあれば動くのかな?(ドクロ&邪悪)
ダールトン
「貴様は陸上から海兵が片瀬を確保するまでの援護射撃、及び確保後の残党の殲滅にあたれ。」
スザク
「殲滅でありますか!?」
ダールトン
「目標以外は、一人も生かしておいてはならん。ブリタニアへの忠誠を示せ。出世のチャンスだ。励めよ。」
スザク
「少佐、オープンチャンネルで降伏宣言が!」
少佐
「無視しろ。」
スザク
「しかしそれは・・・!!」
スザクは「組織の人間」、「職業軍人」の筈なのに、決して銃を撃ったりしないわけで、ゼロが来ずに活躍をコーネリアにアピールしなかったら、スザクは命 令違反で処罰されていた可能性が大なので、スザクはゼロの登場を心の奥底では望んでいるのかも知れません。(深読みし過ぎ?)
これらを踏まえた上で、終盤のゼロとスザクの激突を観ると、ルルーシュは本当は人一倍「他人の痛み」が分かってるのに、スザクが「ゼロ、お前のやり方 じゃ何も変えられない!結果ばかり追い求めて、他人の痛みが分からないのかー!!」と叫んでいたり、結果重視のルルーシュ、過程重視のスザクの筈なのに、 スザクがゼロに対して言い捨てた「ゼロ、これも一つの結果だ。」という言葉に、「結果」という単語が入っていたり、何かをきっかけに相互理解が始まるフラ グに見えなくも無いです。(牽強付会?)
ゼロ
「またか、この白兜が!」
スザク
「平然と命を囮にする、お前はただの人殺しだ!」
ゼロ
「何故、いつも貴様は俺の邪魔をする!」
スザク
「どうしてお前は無意味に人の血を流す!」
ゼロ
「貴様さえいなければ!」
スザク
「お前がいるから!」
あと、国家という背景を持っているだけの、一介の軍人であるスザクが、「人殺し」という言葉を使うのはどうかと思いました。
あと、友人の不幸の時に、
スザク
「卑怯だ!黒の騎士団は、ゼロのやり方は卑怯だ!自分で仕掛けるのでもなく、ただ人の尻馬に乗って事態を掻き回しては、審判者を気取って勝ち誇る!あれじゃ何も変えられない!間違ったやり方で得た結果なんて、意味は無いのに!」
と、自分の意見を声高に主張するなんて、ダメだよ。
ま、たまに空気読めって言いたくなるけどね。(by ミレイ)
ミレイさんのフォローが無かったら危なかったよ、ホントに。
ミレイ
「さあ、じゃあ、私達はお暇しよ。シャーリー、待ってるからね、いつもの生徒会室で。だから。」
第12話の「イレブン」発言といい、最近、スザクの暴言が目立つようになったのは、スザクに何らかの変化が現れる予兆なのかもしれませんね。
また、スザクのこの言葉に対して、生真面目なシャーリーは「偽り」を退ける事になりましたよ。
シャーリー
「私、やり方間違えちゃった。キスだけされても、嬉しくないのにね。」
「ルル、ゴメン、こんな疑うような事してごめんね。でも・・・、お願い、信じさせて。」「ルル、嘘だよね。あんな怪しい人の言う事なんて。」
たとえ始まりが「偽り」であったとしても、それが本当にならないなんて事は無いと思います。
これから先、シャーリーがルルーシュのゼロとしての面を含めて受け入れるか、拒絶するか、それとも何か別の「手段」によって忘れる、または忘れさせられるのか、新OPでの扱いを見る限りでは、すぐに退場という事は無いでしょうから、見守っていたいと思います。
というわけで、ルルーシュが、たとえ「偽り」を含んでいても「真剣に愛する」事を選ぶか、シャーリーの心を引き裂く効果の為だけなのか、許す方向に働くのか・・・と、現段階では、幼い日のシャーリーとお父さんの会話が、この先どう効いてくるのかはよく分かりません。
シャーリー
「シャーリーね、シャーリーはパパのお嫁さんになるの。」
ジョセフ・フェネット
「でも、シャーリーがその人の事を本当に好きで、その人もシャーリーを真剣に愛してくれるなら、パパは心からお祝いするよ。」
けど、シャーリーは小さい頃の方が可愛かったなぁ。(台無し)
・暗躍
C.C.と、銀髪の変質者が接触したようですが、C.C.自身は、何か思うところがあるようです。
C.C.
「私は、もう同じ失敗を繰り返すワケにはいかないのに。」
このセリフは、「そう、さっきは助かった。ありがとう。」、「必要だ。C.C.。お前が。」と、ルルーシュの告白まがいの回想を承けての発言ですから、前にもルルーシュのような存在がいて、失敗してしまった・・・と。
まさかバツイチヒロインとは。(違)
・生粋のマスコミ屋・ディートハルト
ゼロ
「結果は全てに於いて優先する!日本解放戦線の血に報いたくば、我らの力と、覚悟を示せ!」
ディートハルト
「やはりゼロは素晴らしき存在、カオスの権化だ。もっとだ。もっと見せてくれ、私に。貴方の主観に満ちた世界を。ふはははははは!」
ディートハルトさん壊れた――!!
やはり左遷が原因なのか。エリートの常道宜しく挫折に弱いのか。(違)
けど、コードギアスのエリートは精神的に強いですよね。ジェレミアさんとかヴィレッタさんとか。
早くジェレミアさん帰ってこないかなぁ。
ディートハルトさんは、「主義者」を象徴するキャラクターだと思われます。
もっとも、正確には「主義者」ではないかも知れないので、私が途中で「ゼロ支持の民衆の象徴」とか言い始めても、石とか投げないで下さい。
いずれにせよ、ディートハルトさんが、冒頭のC.C.の言葉、
「世界は、人々は、彼の思惑とは別に、結果を突き付け、その続きを求めて来る。」
これを象徴するキャラの一人というのは間違いないと思います。
つまり、ディートハルトさんは、何か面白くして欲しく、かたやコーネリアの捕縛を目的としているゼロの思惑と一致し、それを承けてゼロは、コーネリアの軍と一緒に考え方の古い日本解放戦線も始末しようと言う魂胆があったので、日本解放戦線には教えないワケですね。
犠牲が出る事を承知、というか期待して情報を漏らしたディートハルトさんも、なかなかの外道ですね。
扇
「ちょ、ちょっと待ってくれゼロ。確かにキョウトからも頼まれたし、こちらの受け入れも問題無い。日本解放戦線にしたって、海外に逃亡するよりは、我々と共に歩む事を選ぶはずだ。しかし―――」「だから、コーネリアと戦うよりも、片瀬少将を逃がす事を優先して――」
・次回予告
来週放送のシーンの抜粋ではなく、シャーリーとルルーシュの写った写真だけ。
どういう意図でしょうか。これ自体が演出か、それとも見せたくない理由があるのか、或いは再び大人の事情なのでしょうか。
あと、忘れちゃいけないのが、「ギアス対ギアス」というタイトル、あの銀髪の変質者がいよいよ登場でしょうか。
進めゼロ!変質者になんか負けるな!真の変態の意地を、高尚なる変態と、卑俗な覗きの器の違いというヤツを見せてくれ!(バカ)
・その他
OPは今ひとつ新カットが目立たないというか、やっぱり総集編の後のOPのマイナーチェンジは、今回のOPの為の新カットを一足先に使ったという事なのかな。
OPの曲自体はは可も無く不可も無くという感じ。
一方で、EDは切なすぎます。
曲自体が追憶をテーマにしているだけでなく、場面場面が全て失ってしまった、嘗て有った筈の「原風景」ばかりです。
だとすれば、最後に出てきた、ルルーシュ達を日常パートで待っている4人の写る生徒会の風景も失われてしまうのでしょうか。
ミレイ
「さあ、じゃあ、私達はお暇しよ。シャーリー、待ってるからね、いつもの生徒会室で。だから。」
あと、回想のラクシャータさんがマトモそうだった、というか普通の赤城リツコさん似の美人さんじゃないですか!
どこであんなにやさぐれた人相になってしまったのでしょう。
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