吐き気をもよおす『邪悪』とはッ!何も知らぬ無知なる者を利用する事だ…!自分の利益だけの為に利用する事だ…!父親が何も知らぬ“娘”を!てめーだけの都合でッ!許さねえッ!あんたは今、再びッ!俺の心を裏切ったッ! コードギアス第22話感想 〜血染めのユフィ〜



 今回は「名前」という名の「差別」がキーワード。
 最悪のシナリオの発動によって「差別」がナナリー達に暗い影を投げ掛け、ルルーシュランペルージとしてのルルーシュの居場所を奪い、、ゼロとしてのルルーシュの立場すらも危うくしていきます。


 

・最悪のシナリオ ユーフェミアに自分を撃たせる事で、ユーフェミアは悪だと、特区日本は欺瞞だと弘報しようとしたルルーシュでしたが、ユーフェミアがナナリーの事を思って特区日本を設置した事を知り、ユーフェミアと和解します。
 しかし―――

 「日 本 人 を 殺 せ」

 最悪のシナリオが発動、希望の地は一転して絶望の惨状へ。
 図らずも、扇さんを除く黒の騎士団首脳部の大多数が望む方向へと暗転。
 真実を知らない者から見れば、「ゼロが真実を暴いた」「ゼロがやっぱり正しい」「ゼロが唯一の希望」「テロリストがユーフェミア様に何かをした」と見える為、イレブンはゼロを祭り上げ、ブリタニア側でも、イレブンを殺すべきという方向へ、差別主義の肯定へと進みます。

老婆
「ゼロ・・・、私達を・・・、日本が・・・、救世主・・・」
・引き裂かれた「ルルーシュ

 今回の事で、激化する「差別」の中で、ルルーシュは三つの名前で引き裂かれる事になります。

 1)ブリタニアの象徴である皇族の一員であるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアという名前がバレたら、ランペルージの生活は壊れ、ブリタニア人への反感が強まる中では、ゼロとしての体制は崩壊。

 2)ブリタニア人であるルルーシュランペルージ」という名前で生きてきた場所からは、ギアスの為に距離を置かざるを得ない上に、ディートハルトと咲世子さんや、シャーリー、ヴィレッタさんなど、危険要素、不確定要素、不安要素が一杯。

 3)対外的には日本人と取られている筈の「ゼロ」という名前では、ナナリーの為に戦ってるだけなのに、日本の希望と過大な期待を掛けられ、ブリタニア人」なのに「日本人」として振る舞う事を要求される。

 つまり、「差別」の激化の為に、ブリタニア人としての1と2と、日本人としての3の乖離が決定的となり、「ギアス」の為に2には帰れず、1からは決して逃げられません。
 ルルーシュランペルージ」という名前の居場所では、ギアスが効かないC.C.と、目の見えないナナリー、その他ギアスを掛けた人間以外とは、最早、まともな人間関係を築く事ができません。
 ルルーシュは、大切な人間にはギアスを掛けたくはないでしょうから、当然、距離を置く事になります。

 ギアスを使い続けた事でギアスが制御出来なくなったマオは、自分が傷付くのが怖くて、C.C.との関係に埋没していきましたが、ルルーシュは、他人との関係をどうするか。
 もっとも、マオの場合は無差別に他人の心の声を聞いてしまうのに対し、現在のルルーシュは左眼だけなので、眼帯をすれば、両眼に及んでもマオのようにサングラスを掛ける事で回避はできる筈ですし、一度掛けた相手となら普通に振る舞う事もできるので、まだマシなんですけど。
 マオはC.C.と二人だけの世界に閉じこもり、他人の声が聞こえないように内に籠もったのに対し、ルルーシュは、他人に顔が見せないように生きざるを得ません。
 孤独に陥り、それでもルルーシュが生徒会の風景に帰って来られるのでしょうか?

・「名前」という名の「差別」

 今回の事件で、「日本人」ブリタニア人」の対立が決定的になりました。
 これは、実は皇族であるナナリー、ブリタニア人である生徒会メンバーの危機に直結します。
 特にナナリーは咲世子さんが黒の騎士団に入団した事で、いつディートハルトに利用されるとも分かりません。
 また、ナナリーの事がきっかけとなってルルーシュの正体が「ブリタニア人」、しかも「ブリタニアの皇子」だと知られたら、差別主義の苛烈となった周囲の混乱は避けられません。
 また、「正義の味方」だった筈の「黒の騎士団」自体が、ブリタニア人」側に立つか、「日本人」側に立つかを明確しなければいけません。
 大勢は「日本の独立」に向いているので、どうしても「日本人」側に立たざるを得ず、ブリタニア人からの信用を失ってしまいます。

 また、ユーフェミア様の特区宣言で「住み分け」によって実現されようとしていたブリタニアとの共存、緩やかな差別主義の撤廃を、ルルーシュが破壊してしまった事を意味し、ブリタニア人、イレブン、両方で、急進的な差別主義の台頭を招きます。(特区は人種隔離政策を裏返したもので、やっぱり差別からは脱却出来ていないので、やっぱり差別なのかもしれません。)

 そして、他ならないルルーシュこそが、「日本人」というカテゴリー、つまり「差別」を象徴する言葉で括って命令を出してしまった事が悲劇。
 これについて、ユーフェミア様が「日本人」という言葉をどう捉えているかも重要です。
 特区日本内の住民を「日本人」と捉えるか、人種的な日本人を「日本人」と捉えるかで、虐殺対象が決まるからです。
 もし前者ならば、スザクを含む「名誉ブリタニア人」は虐殺対象になりませんし、後者ならば、手の施しようがありません。
 せめて前者である事を望みます。

 コードギアスという作品では今まで、主人公がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアルルーシュランペルージ、ゼロという三つの名前を持っているように、「名前」が象徴する「自分」というものを扱って来てましたが、その負の意味の「名前」が象徴する「差別」にまで拡大したのが今回。
 つまりは、個人にとっての「名前=自分」と、社会的な意味での「名前=差別」が対立し、その板挟みに直接曝されているのがルルーシュなのです。

 「ただの」ルルーシュでいられる場所に最も近い生徒会にはギアスの為に近づけません。
 ブリタニア人」「日本人」の間では、ゼロとして、反ブリタニア、反ブリタニア人という「差別」の先頭に立つ事を要求されますが、スザクとの友情が示すように、ルルーシュ自身はブリタニア人」「日本人」の差別は望んでいません。

 「本当の自分」という意味の「名前」は選びながらも、「差別」と言う名の「名前」を取り除くには、ルルーシュが言う「君の知ってるルルーシュユーフェミア様の言う「ただのユフィ」が答えになる筈であり、物語の着地点は、「差別」の無化、「弱者救済」に落ち着くと思っていますが、普通は強大な敵と戦って、曖昧に済ますという安易な手法に走る所を、「差別」と正面から戦うということは、今後「弱者救済」とも正面から戦う話が入るのでしょうね。
 土壇場になって物語の着地点へ至る道が見えなくなってきました。

 どうなるコードギアス、どうするルルーシュ、放送は実質的に来週が最終回なんだよ!!

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