ゼロ、僕の気持ちを聞かせてやる。騎士として恥ずべき事だが正直な所今の枢木スザクは……。 恨みを晴らす為に、ルルーシュ!君を殺すんだッ!! コードギアス第23話感想 〜せめて哀しみとともに〜



 「秘密の暴露」によってスザクの怒りが、民衆の差別感情が爆発、対立が不可避になり、ギアスが「願い」によって破られる事が明らかになった事で、ギアスに打ち克つ事が「反逆」を意味する事が示されました。
 夏までは長過ぎですよ監督・・・・・・。


 

・世界は秘密の露見を欲す

 誰の意図か、ギアスの暴走によってユーフェミア様の虐殺命令が発令され、イレブン、ブリタニア人両方の差別主義が台頭。
 そして、ゼロの正体とギアスの存在を知ったスザクと、ルルーシュの対立が不可避なものとなりました。

カレン
ユーフェミアめ!騙し討ちをするなんて!」

ブリタニア兵士
「イレブンがぁ!!」
藤堂
「そうか、やはりそれが本音か!!」


「許せない、みんなの気持ちを踏みにじって! ユーフェミア!!」

 これはとりもなおさず、ブリタニア人と日本人の「共存」という、実現されていた筈の「日常」、そして、「生徒会」という、さっきまで帰れた筈の「日常」の崩壊という、一方は国家レベルの、もう片方は個人レベルの「日常」が崩壊した事になります。

 これらの「日常」の崩壊の原因は、ブリタニア人が持っていた差別感情、イレブンが持っていた劣等感と憎悪が、ギアスの暴走によって暴露されてしまった事が一つ。
 もう一つは、「ゼロの正体」「ギアスの存在」という隠されていたものの暴露によって生まれたスザクの中の殺意。
 そして、その殺意を抑えてくれた筈のスザクの秘密、「ルールの遵守」「死にたがり」を暴露したのはマオのギアスであり、それを解放したのはルルーシュのギアス。

 両方とも、「秘密の暴露」によって、元々秘密を内包していた「日常」が崩壊した事です。

 この事は、コードギアスという作品の立ち位置として、「秘密」が守られたまま、「みんな幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし。」と終わるなんて半端な事をせずに、ルルーシュを含めて全員の秘密が一度完全に暴露される意図をはっきりと示した事を意味します。

 つまり、現在の完全なる「秘密の暴露」の一歩手前(これでも一歩手前なのが恐ろしい)の状況は、今秘匿されている事柄、「ヴィレッタさんによるゼロの正体の全世界への暴露」「実はブリタニア人、しかも皇子であるルルーシュが日本人を装っていたゼロの正体」「カレンさんが生徒会メンバーに隠していた紅月カレンの名前」「扇さんが隠していたヴィレッタさんを拾った理由」、それら全てが暴露されて、それでも自分が望む場所へと帰ってくる為の「溜め」だと言う事を意味すると思います。
 それが証左に、「帰ってくる」事を意図しているという描写もきちんとありました。

 一つ目は、「もう一度開かれる学園祭」、先々回の学園祭が、ブリタニア人とイレブンを差別しない理想の世界の象徴だったので、それがもう一度開かれるという事は、もう一度、差別の無い世界を目指してブリタニア人とイレブンが和解する事を意味します。
 そして、そこにはルルーシュとスザクが帰る場所、ナナリーが待っています。

ナナリー
「あの、ユフィ姉様とお話したくって。私とお兄様と三人で学園祭を。ほら、ミレイさんが中断した学園祭、もう一度やるんだって言ってましたよね?だから、その時は一緒にどうかなって―――」

 二つ目は、カレンさんが生徒会メンバーを気遣っていた事。
 カレンさんにとっても、生徒会の風景は大事な存在だったのであり、私も今までの感想でさんざ書いてきましたが、「生徒会」は差別の無い空間なのです。
 そこに未練を残している限り、カレンさんも必ず「共存」へと戻って来る筈なのです。

 三つ目は、イレブンとブリタニア人のカップルという直接的な象徴、扇さんとヴィレッタさんです。
 扇さんがヴィレッタさんを「千草(?)」と呼んだ事からも、扇さんがヴィレッタさんをゼロの正体を知る為に匿っているのではなく、大事な人として認識している事を意味し、それは言うまでもなく、「イレブン」ブリタニア人」「共存」を意味します。
 今まではスザクとユーフェミア様のカップルが眩しすぎて地味な印象が拭えませんでしたが、ユーフェミア様の死により、「ヴィレッタさんの記憶」が戻る試練を越えるイベントもあるので、一挙にスポットライトが集められた感じです。

・最後にギアスに打ち克ったユーフェミア

 ユーフェミア様にとって、とても大事な存在だったスザクを殺さない為に一度は屈したギアスを最後の最後にねじ伏せたユーフェミア様。
 これは、ギアスは絶対ではない事を意味し、自分の強い「願い」は、他人の「命令」には屈しないという事を意味しています。
 これが象徴的に意味するのは、個人の「願い」が、権力などの強大な力による「命令」を凌駕する、「反逆」を意味するという事です。
 しかし、その「反逆」の先頭にいる筈のルルーシュ「願い」という「反逆」に負ける運命の「命令」を意味するギアスを持っているという面が生まれたのは興味深いです。

 つまり、ルルーシュが真に「反逆」する為には、ルルーシュ自身が「命令」を象徴する「ギアス」に、V.V.の悪意に打ち克つ必要があるという事であり、それによってルルーシュは生徒会の風景にも帰れます。

 何ですか構成美は。
 この「ギアス」に打ち克つカタルシスを描く事まで考えて「ギアス」の設定を作ったなんて、コードギアスは凄過ぎます。

 勿論、ギアスが破れる事が分かった今、シャーリーの記憶が戻る事が現実味を帯びてきましたよ。

シャーリー
「ルル?私、そう呼んでたの?」

 ルルーシュの名前を失ってしまったと考えている今のルルーシュに、シャーリーが「ルル」と呼ぶ事がきっとルルーシュ「日常」に帰らせるきっかけになる筈なのですよ。

・世界は憎しみに包まれる

ゼロ
「我らが作る新しい日本は、あらゆる人種、歴史、主義を受け入れる広さと、強者が弱者を虐げない矜恃を持つ国家だ!!その名は、合衆国日本!!」

 と、言いながら、ブリタニア人に対する反感、敵意と言った「差別」、強者が弱者を虐げる無法状態
 しかも、視聴者の視点としては、名前がアメリカと重なる辺り、ブリタニアの二番煎じという印象が拭えません。

 ユーフェミア様が望み、ルルーシュが折れた「理想」と、「現実」の差はかくも激しかったのでした。
 これも、一度噴出してしまった「差別感情」「暴露」の為です。
 そしてもう一つ、「ゼロの正体」「ギアスの存在」という「暴露」によって、一度は融和に靡き掛けたルルーシュとスザクが対立し、「理想」「現実」に侵されてしまいました。

スザク
ルルーシュ、君は殺したいと思う程憎い人がいるかい?」

ルルーシュ
「憎めばいい。ユフィの為だろ。それに俺はもうとっくに決めたよ。引き返すつもりは無い。」

 そして、大切なものを見失いかけて全てを壊そうとするルルーシュ

ルルーシュ
「あの日から、俺はずっと望んでいたのかもしれない。あらゆる破壊と喪失を。そう、創造の前には破壊が必要だ。その為に心が邪魔になるのなら、消し去ってしまえばいい。俺はもう進むしかない。だから!!」

 この「だから!!」で切るのは第一話、ギアスを手に入れて初めて人を手に掛けた時に被ります。

ルルーシュ
「全く変わらない世界に飽き飽きして、でも嘘っていう絶望で諦める事も出来なくて。 だけど手に入れた、「力」を。だから!!」

 つまり、ルルーシュ「ギアス」によって踊らされている、或いは自分を見失っているという事が言えると思います。
 以前、ルルーシュ自身が「ギアス」に掛かっているという事を書いたのに、その後で、間違っていたかなぁと思っていたんですが、強ち間違ってもいなかったような気もしてきました。

 現状のルルーシュ、そしてスザクが残り2話でどんなカタルシスを見せてくれるか。
 続きが三ヶ月も後、夏という辺りに私も憎悪を覚えますよ。

・黒幕の登場
V.V.
「初めまして枢木スザク。僕の名前はV.V.。」

 ルルーシュ達を式根島から神根島へと瞬間移動させ、恐らくはルルーシュのギアスを暴走させた少年が登場。
 ラグナレクという名前(ラグナレク=神々の黄昏)から、V.V.やブリタニア皇帝がいた黄昏の空間はラグナレクに繋がる場所だと考えられますが、そこからV.V.が出てきたという事は、ラグナレクに関するイベントが起きる事が予想されます。
 V.V.、そしてブリタニア皇帝の目的は、ラグナレクの領域を開く事で何かを得ようとしているのだと思われます。
 更にC.C.がまた思わせぶりなセリフを放ってくれました。

C.C.
「そんな事は無い。喜んでいるさ、私は。優しさなんか忘れてしまったんだよ、マリアンヌ。」
 C.C.に実質的な命令を下しているのはV.V.みたいですが、C.C.の現状もまた「反逆」への「溜め」なのでしょう。
 それにはC.C.の「真の名前」を呼ばれるイベント絡みで、V.V.の「命令」という偽物の「願い」ではなく、C.C.の本当の「願い」による「反逆」を、カタルシスを見せてくれる事を期待しています。
 これまでの「秘密の暴露」から行くと、V.V.の「命令」という偽物の「願い」を一度暴露して、C.C.が一度ルルーシュを裏切るイベントを経て、C.C.の本当の「願い」ルルーシュが読み取って叶えるという事になると思います。
 俄にC.C.がヒロインっぽくなってきましたよ。(ひどい)

・ヒロインの名を冠す

 ゴメンねユーフェミア様、今までヒロインらしくないなって言って。
 スザクの為のギアスに打ち克った貴方は立派なヒロインでしたよ。
 さて、ユーフェミア様に代わる新しいヒロインの登場です。

神楽耶
「追いかけてきたの!夫の戦いぶりを見る為にね!」

 神楽耶お嬢さんはスザクが好きだと思っていたのに、ゼロが好きだったんですね。

神楽耶
「この戦いに勝利したらいずれ妻が必要になりましょう?あなたが素顔を見せられない身の上なら、それを補う者が要ると思いますが?」

 無邪気なお子様とばかり思ったら、しっかりとした考えも持っている様ですよ。
 恐れ入りました、流石はキョウトの頭首。
 ユーフェミア様と入れ替わるように登場した事から、恐らくは神楽耶お嬢さんは、ユーフェミア様に代わってルルーシュとスザクを繋ぐ役割を担っていると考えるべきだと思います。
 殺伐とした世界の清涼剤としてだけでなく、ルルーシュとスザクにとっても恐らく神楽耶お嬢さんは必要な存在なのでしょう。
 頑張れお嬢さん、ユーフェミア様の分まで。

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