DARKER THAN BLACK 黒の契約者感想第4話「新星は東雲の空に煌く…後編」
今週は、「家族」を失ってしまった父と娘が、それぞれの形で「家族」を取り戻したお話。
子供は、大人になるにつれて親に素直に接する事ができなくなり、親はそんな子供とどう接したらいいか分からず、お互いに距離を取る事になります。しかし、それは結局、子供が愛情に飢え、親は子供にお金やモノという形でしか愛情を示す事ができなくなる事に繋がります。
今回のお話でも、父親は、娘が自分の所為でモラトリアムというバケモノに変わるのが恐ろしくて距離を置いてしまい、子供に対する愛情を、ゲートの中から持ち帰った種を育てるという、娘が気付かない、そして気付かせないように愛情を注ぎ続けています。
これは、現代の親の愛情の、間違った注ぎ方を象徴しているのは明白。
また娘も、父親に愛情の渇望を伝えられず、パイロキネシスの能力は、前編に出てきた万引きと同様に、自分に注目して欲しいという「代償行為」なのだろうと思います。
放火は肥大した自尊心が暴走して、社会的に認められない人間が、自分の自尊心を満足させる為に走る犯罪と言われてますし。
何だか、意外と、母親の死因も焼死のような気がします。
うわ、今、自分で考えた事に自分で嫌悪感を抱きました。
裏設定では十分に有りそうで怖いです。
さて後編、父親は、今まで娘と真剣に向き合わなかった自分を悔いて、娘を取り返しに向かいます。
父
「娘を帰してもらおう。」
しかし、親友とその父親まで殺してしまい、心の行き場が無くなり、舞さんは、モラトリアムとなり、自分の心を守ろうと幼児退行した娘はあっさりと拒絶。
舞
「やだ、知らない、あんな人・・・。」
これは、舞さんのイメージの父親と、現在の父親のイメージが外見的にだけでなく、内面的にも一致しないという事を意味しています。「子供」としての心は、「理想の両親」に対して、いつでも両親の「愛情」を期待しているのに、それを叶えてくれなった「現実の父親」は、「理想の父親」と一致しない、だからこの拒絶は必然。
舞
「舞は、パパが大好きなんだもん!」
しかし、実は「現実の父親」の持っている娘に対する「愛情」も、「理想の父親」とは全く変わらずに持っているという所で、舞さんが父親だと再認識する事が出来、この親子に一種の救いを与えているんですね。
さて、モラトリアムに未来は無い事を知っている父親は娘を殺そうとしますが、結局は敵方の契約者に殺されてしまいます。
最早生きている時間は少ない父親ですが、最後に娘に出来る事は、「娘の心」を救う事、ずっと言えなかった言葉を口にしなくてはいけません。
父
「お仕事がね、ようやく終わったんだ、舞。ただいま・・・。」
舞
「おかえり、パパ・・・。」
「誰もいない部屋」に帰りたくなかった舞さんと、娘と真剣に向き合う事が出来なかった父親、それが最後に解消されたのは、せめてもの救いだったと言えるでしょう。
何とも後味は宜しくありませんが。
そして最後に舞さんが流したのは一縷の涙、敢えて人間か契約者かを識別する「目」を描いてはいませんが、それは間違いなく、幼児退行から戻って「人間」に戻った舞さんが流したモノなのでしょう。
そうして「失ったモノ」を取り戻し、そして永久に失ってしまった舞さんは契約者に変貌します。
何とも後味の悪い結末です。
とはいっても、私は黒の契約者という作品は、「(現代の)人間」の持つ「喪失感」を描き出して、同時に黒さんの「人間性」を浮き彫りにする話だと思っているので、こういう展開もアリだと認識しています。
でも、今回は黒さんあんまり活躍してませんけどね。
見せ場と言ったら、合理性に捕らわれない黒さんと、ナイフが自分に刺さる事すら合理性から無視した敵側の契約者との相違ぐらいでしょうか。
今回はあんまり描写はありませんでしたから、来週に期待します。
それと、今回の事から、「契約者」というものが或る程度浮き彫りにされたと思います。
契約の成立は老若男女問わず無差別のようですが、前々から感想に書いていたように、契約者の「対価」は、契約者になる事で失われた「人間性」の喪失を満たそうとする、「代償行為」というので間違い無さそう。
そう考えると、契約者というのは、「人間性の維持」の為に「対価」を履行し、モラトリアムは、「人間性の維持」を放棄しかけているので「対価」を支払わず、次第に「人間性」を失ってドールに変貌するという所でしょうか。
今回の舞さんのケースは、「家族の喪失」により、「人間」を維持する理由が希薄になり、次第にモラトリアムからドールに移行しつつあった舞さんが、「家族」を再獲得し、そして失った事で、「人間」を維持する理由を取り戻してしまって「契約者」になったと言えるのかも知れません。
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