DARKER THAN BLACK 黒の契約者感想第10話「純白のドレスは、少女の夢と血に染まる… 後編」感想




 今回は、未咲さんが前回提示された「動機」を再認識するお話。
 けれど、誤解してはいけないのが、魏さんの言ってる事は、実は「真実」ではありません。正確には、魏さんの言ってる事は、半分当たっていて、半分外れているワケなのですよ。

 契約者である魏さんには、「頼りにする事」と、「依存する事」の違いが根本的に理解出来ないので、悪意だらけでしか語れないのです。

魏志
「あなたは自由になりたかったのではない。
束縛されることを求めて誰かに依存したかっただけなのですよ、アリス。」

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 先回、アリスさんが霧原さんを殺すのを一瞬躊躇ったように、アリスさんは霧原さんを本当に親友だと思っていたし、父親に「お父様こそ」と、最後の警句を口にしたように、父親に対する愛情も持っていたのに対して、「友人と過ごす時間」「束縛」としか捉えられず、「頼りにする事」「依存」としか捉えられない、「自分を最優先にする」、自分中心の典型的な契約者の思考をする魏さんには、父親に対する「愛情と憎悪」、桐原さんに対する「友情と嫉妬」の間で苦しんでいたアリスさんの気持ちを「憎悪」「嫉妬」の面だけでしか語っていないのですよ。

アリス
「この蜂を使っても、世界から消えてなくならないものがあったの。」「だからね、未咲、死んで頂戴。そして私を自由にして。」
 麻薬を使って消えなかったのは、「愛情」「友情」「感情」を消された「契約者」を生み出す「ゲートの力」で消えないのですから、その感情が如何に強かったかが知れます。だからアリスさんは、その葛藤の中で、決して消えない「感情」が苦しくて、それを打ち消す為に麻薬を使い、「感情」を持たず、自分を肯定した魏志軍に「依存」してしまうんです。

 そして、苦しんで、苦しんだ結果、「感情」を消す為に、その根本である「父親」「霧原さん」を消して、「物理的な束縛」ではなく、「苦しみ」という「精神的な束縛」から「自由」になろうとして、狂ってしまったのですよ。

 そんな悪意だらけの魏志軍の言葉のカウンターとして、親友の香那美さんが、「依存」ではなく「頼りにする事」を言葉にしてくれてます。

香那美さん
「あんたを頼りにしてる人は一杯いる。でも、何でもかんでも背負い込もうとするのは、あんたの悪いクセだよ。」

 その言葉を承けて、

霧原さん
「斎藤、これからも頼りにしているぞ。」

と、「依存」ではなく、「頼りにする事」を掲げて、前編で提示された「動機」に決着を付け、「人間の心」が介在しない「官僚」より、「人間の心」を救う「現場」を選んだ霧原さんが恰好いいのですよ。
 勿論、霧原さんの「人間の心」を守ろうとする気持ちは、黒<ヘイ>さんと同じ方向を向いているワケです。

 けれど、死んだと思われていた魏志軍は死んでなかったワケですから、次は「白<パイ>さん絡み」で出てくる筈です。
 何故かというと、本編で魏さんの能力は、「血で血を洗う」事を顕在化したもので、アリスさんの「血縁」を、「血」で全て断ち切った事から、黒<ヘイ>さんの妹らしい、白<パイ>さんとの「血縁」を、「血」で断ち切る事になりそうですし。
DARKER THAN BLACK-黒の契約者- 1 (通常版) [DVD]

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・次回予告

 来週は「壁の中、なくしたものを取り戻すとき・・・(前編)」

 当サイトで第一話の感想から書いている、黒の契約者の根源的なテーマ、「失ったものを求める行為(=対価)」という事がようやく言語化された形です。

 来週はゲートの中に突撃取材。「あの夜、君の見た星空を僕は知らない・・・」という言葉が示すように、黒<ヘイ>さんが失ってしまった「誰かとの絆」に迫るお話みたいです。
 キーワードは、第一話以来のガジェット、天体望遠鏡

 来週も楽しみです。