DARKER THAN BLACK 黒の契約者感想第11話「壁の中、なくしたものを取り戻すとき… 前編」


 この前編では、意図的に「あらゆる可能性があり得る」「不確定性」を視聴者に印象付けようとしている感じ。「誰がカリーナさんを殺したの?」「ニックさんは『流星の欠片』で何をしたいの?」「ミーナさん、何だか怪しくない?」と、「不確定性」を提示して、後編で「ニックさんが殺した」「人類の意識の革新の為に使う」「ミーナさんの正体は実は・・・」みたいな感じで、「一つの可能性」に確定する「確定性」に持ってくる為のメタファーなんじゃないかなと、勝手に想像してみました。

 ゲストの女性キャラなのに、一話も保たなかった最短記録保持者のカリーナさんですが、序盤で、今話のテーマ「失ったもの」「対価」について、疑問を提示。

カリーナ
「あれ信じてる?都市伝説。『ゲートの中では失ったものを取り戻す事が出来る。ただ相応の対価を支払わなければならない。』、対価ってなんだろう?」

 第9話の時も、霧原さんのお父さんが、「お前、どうして警察に入った?」と、「テーマ」を口にして、第10話で、霧原さんが残留を決めたので、多分、「対価ってなんだろう?」という問いの答えが来週描かれる筈です。

 私個人の考えでは、「対価」人間性でしょう。

 カリーナさんは、人間性を捨てて、他人になりすまして生きて来たから、ゲートに魅入られたんじゃないかなと思います。
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 「契約者」人間性を失ってしまって「対価」という代償行為によって、失われた人間性を埋め合わせようとしているんじゃないかと私は思っているんです。これまで契約者の多くは、自分の意思とは無関係に「能力」を与えられて「対価」を要求されていたようですが、もしかしたら白<パイ>さんは、自ら人間性「対価」にして、「人間」を辞めて、「契約者とは別の存在」としての可能性を拓いたんじゃないかなと考えると、ニックさんも同様に、人間性「対価」に、何か行動を起こそうとしているのかもしれません。

 さて、今まで女性キャラオンリーでしたが、今回のゲストキャラは男性キャラのニックさんが最重要人物のように見えます。ところで、黒さんとニックさんは、意図的に似た存在だと描かれているようです。以下箇条書きで。


 1.本物の星空を見ようとしている。

 第1話の感想で、黒さんも天体望遠鏡で星を覗いていました。第一話の感想を書いた時点では、「『過去の自分』に繋がる『本当の星空』を追い求めて天体望遠鏡を覗いているように感じました。」と書いたんですが、予想は割と当たってるみたいです。
 この「本物の星空を見る」行為は、「真実を観測」する行為だと思うんですが、黒さんが、あくまで単なる天体望遠鏡を使っているのに対して、ニックさんは、天体望遠鏡「流星の欠片」をフィルターにしているとはいえ、本物の星空を見る手段を持っている点で、黒さんよりも世界の真実に近い立ち位置にいる様なんですが、「忘れる」とか、「信じる」とかの辺りで成る程ー、と納得する裏で、なんとなくネガティブなので、「その本物の星空は、本当に本物なの?」という疑問が出てくる所。

 けれど不確定。

2.妹がいるらしい。

 黒さんがニックさんに親近感を持ったのは、これが大きいんだと思いますが、本当に妹がいるのかは怪しいです。

ニック
「今は体を動かす事もできないけど。でも、いつかきっと、この偽りの空を消して、本物の宇宙に連れて行ってやりたいと思っている。それが僕の夢だよ。」

 ニックさんが黒さんを知っていたのなら、これは罠なんでしょうけど、「本物の星空」を見続ける執念の辺りから判断すると、妹がいるのは嘘ではない感じです。
 でも、これも不確定。

3.殺害の方法が似ている。

 犯人が誰かは分からないように描写されているんですが、黒<ヘイ>さんの着ている作業服が半袖なのに対し、ニックさんは長袖の白衣を着ていて、犯人も長袖だったので、恐らく犯人はニックさん。
 黒さんが仕事中にいつも着ている黒のコートを着ていたともとれますが、わざわざゲートの中にそんな怪しいモノを持ち込んだりはしないんじゃないかなぁ?
 どちらにしろ、ここでの描写の意図は、「黒<ヘイ>さんが犯人?」という疑念を視聴者に持たせる事なので、黒<ヘイ>さんはきっと犯人じゃないと思います。

 服装も黒<ヘイ>さんの黒コートに対して、ニックさんが白衣を着ているのも、似ている、でも決定的に違う、という事を表したいんじゃないかと思います。
 殺害方法も意図的に隠されて描写されているので、冒頭に出てきたスタンガンを使ったのか、黒さんと同じ「電気」を操る能力を持っているのかは不明ですが、第4話で黒<ヘイ>さんがルーコを背後から殺害する時に、左手で頭を掴んで電気を流しこんで殺したのと同じように、カリーナさんも左手で頭を掴んでから電気を流しこまれて殺されたので、殺害方法も非常に似通っています。
 殺害方法も、スタンガンか黒<ヘイ>さんと同じような能力かは分からないんですが、もし能力なら、「電気」の能力は元々は、白<パイ>さんか、アンバーさんの能力なんじゃないかなぁと思ったり。

 でも、これも不確定。

 殺害の動機の方ですが、ニックさん自身がCIAのエージェントだと仮定すれば、「流星の欠片」を或る目的に使う為に、爆発事故を起こして、予め人払いをしてある天体望遠鏡の部屋の中の、人一倍思い入れのあるSATAKEの天体望遠鏡「流星の欠片」を隠して、カリーナさんがそれを運ぶ予定だったのに、カリーナさんが途中で壊れて、PANDORAに「流星の欠片」を渡そうとした為、そうするとCIA構成員である自分の身が危なくなるので、カリーナさんを殺害した・・・という所ですが、ニックさんは予定を早めて「流星の欠片」を使おうとしているんじゃないかなぁ。

 余談ですが、拷問で疲れ切った黒<ヘイ>さんをニックさんが励ます時に、ニックさんは左手で黒<ヘイ>さんの頭に触ったんですが、これは「お前も殺す」という意味なんじゃないかなぁ、と思ったり。

・まとめ
 ここまで書くと、何やら怪しげな、というか怪し過ぎるニックさんですが、ここまで黒<ヘイ>さんと似ているとなると、黒<ヘイ>さんも、「李舜生」という、別の顔を持っているワケで、後編は「優しくないニックさん」を期待してます。
 きっと、後編では、良く似ていると思われた黒<ヘイ>さんと、ニックさんの違いが、人間性の有無の辺りで描写される筈。

 ところで、ニックさんが「流星の欠片」で何をしたいのかというと、

ニック
「全てを忘れるんだ。
月が消えてしまった事も、成層圏より上空に飛んだロケットが全て消息不明になった事件も。信じるんだ、この星空が、かつて自分たちが見ていた星空なんだって。」

「ただ、君が今経験した事は、この星の未来に起こりうる一つの可能性を切り開いたとだけは断言出来る。
李君、もしも世界中の人間が僕らと同じ経験をしたら、どうなると思う?
僕はね、その時こそ本当の星空を取り戻せる気がしてならないんだ。」


 ニックさんの言動、「忘れるんだ」「信じるんだ」「世界中の人間が僕らと同じ経験をしたら」という言葉を繋ぎ合わせると、全人類に「本当の星空(=真実)」を認識させて、既成概念の壁を壊し、「人類の新しい可能性」を固定しようとしている感じです。

 「流星の欠片」が何かはよく分かりませんが、契約者の存在が「星」によって「観測」される事から、「契約者」の存在に非常に深く関わる物質だと思われます。次回予告で、白<パイ>さんがそれらしいモノを誰かから受け取っていたので、何やらとんでもない力を持っていそうです。

 また余談ですが、「観測」という行為には、天体観測や、ドールの受動霊媒を使った「観測」も含めて、「真実」を見ようとする他にも、重要な意味があるんじゃないかなと思ってます。

 何にせよ、今週の話は難しかったです。来週の解答編を楽しみに待ってみようと思います。

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・おまけ

セルゲイ
「ここでは、一つの事象に対して、観測する人間が異なれば、観測する結果も異なる。」

という、ゲート内の特性や、事象の「不確定性」なんかは、量子力学「不確定性理論」が元ネタで、ミクロをマクロに拡大したのがゲートで、「人間なんてちっぽけなもんさ」と言いたいんじゃないかと思いました。