DARKER THAN BLACK 黒の契約者感想第12話「壁の中、なくしたものを取り戻すとき… 後編」

作風は黒いのに、セカイ系らき☆すた的なお話なのが素敵でした。

 今回の要点は、ニックさんの「夢」を黒<ヘイ>さんが「観測」した事で、「世界」に影響を与えたという事と、「流星の欠片(=流れ星)」が願いを叶えるという点で、黒<ヘイ>さんと、ニックさんの過去が繋がった事の二点。全般的にアナロジーが多用されている精緻な構成でした。

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 DARKER THAN BLACK 黒の契約者第2話感想「契約の星は流れた・・・後編」
 DARKER THAN BLACK 黒の契約者第1話感想「契約の星は流れた・・・前編」

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黒<ヘイ>さん(幼少時)
「流れ星っていうのはね、神様が天の蓋を開けた時に漏れる光なんだ。
だから、その時に願い事をすれば、神様に聞き届けてもらえるんだよ。」


 幼少時と現在の黒<ヘイ>さんの世界が比較される、このセリフはきっと重要。

 幼少時の黒<ヘイ>さんの世界 「流れ星−神様」
 現在の黒<ヘイ>さんの世界  「流星の欠片−ゲート」

 この関係を、「願いを叶える」という文脈で、「流れ星=流星の欠片」の線を等号で繋げると、「神様=ゲート」と導かれるので、黒の契約者を深く読み解きたい人は、このアナロジーは覚えておくといいんじゃないかな。(えらそう)

 でも、「流星の欠片」が本当に白<パイ>さんの願い事を叶えてくれたかといえば・・・

 結論から言うと、非常に良く似た二人、黒<ヘイ>さんとニックさんが、同じ「夢」「観測」したから、「不確定」「夢」「固定」されたんじゃないかなと思います。冒頭で白<パイ>さんの「私、願い事たくさんあるよ!看護婦さんにもなりたいし、宇宙にも行きたい!」が、ニックさんが「夢」で語った「妹を宇宙に連れて行く」と一致しているので、黒<ヘイ>さんとニックさんは夢まで同じだったんだなと推察できますし。

 以下、少しややこしい「我思う、故に我有り」的な話をするので、普通の「現実」を信じていたい人は、この部分は読み飛ばして下さい。


 
―――――――――――――――ここから―――――――――――――――――

 モスキートーンって御存知ですか?

  人間の耳は、歳を取る程、高音域が聞こえなくなってくるので、歳を取った人が聞こえないのを利用して、その高音域を携帯電話の着信音に使うと、若い学生達 には携帯の着信音が聞こえるけど、お年を召した先生には聞こえない。先生には知覚できないので、先生自身は、教室は静かに授業が進められていると思っているんですが、 実は、着信音が盛んに鳴り響いている――――かもしれない、という面白い話題。今、海の向こうで流行っているそうです。大体25歳ぐらいまでは聞こえるそうな ので、一度試してみるのもいいかもしれません。

 それが、「他人には知覚できない。」という点で、ゲートの特性というのはそれに似ているという話です。

参照 http://www.blwisdom.com/word/key/001228.html
 http://antiager.org/salon/07/2007/02/001129.html
 このモスキートーンというのは、元々は、イギリスでコンビニ等に屯する若者を追い払おうと開発されたので、凄く耳障りな音です。



 もう分かった人もいるかもしれませんが、「モスキートーン」「ゲートが見せる幻」に置き換えてみます。

 今仮に、読者のみなさんがモスキートーン(=幻)が聞こえるとします。隣には、高齢なセルゲイ博士がいて、あなたの背後にはアンバーさんが耳栓を装着した状態でモスキートーン発生装置を、今、まさに最大音量で鳴らそうとしているとします。

 そしておもむろにスイッチオン。

  モスキートーン(=幻)が聞こえないセルゲイ博士は平然としていますが、あなたは耳障りでたまりません。そこに黄<ファン>さんが来ますが、同じくモスキートーン(=幻)は聞こえないので、悠々と新聞を広げてタバコを吹かしています。セルゲイ博士と黄<ファン>さんにとっては、聞こえない、つまり知覚出来ないから「モスキートーン(=幻)」「現実(の一部)」であると知覚できないのです。

 だから、あなたがいくら「うるさい」と叫んでも、知覚している「現実」が違うので、「幻聴」だと言ってとりあってくれず、アンバーさんが背後でニヤニヤしているばかりです。

 このように同じ空間にいても、知覚している「現実」は違ってくるのです。

 「幻」が見えるカリーナさんや黒<ヘイ>さんと同じ空間にいたとしても、彼らの「現実」は知覚出来ないので、他の人は「錯覚」だと判断します。
 でも、その「錯覚」は、本当は「現実」で、モスキートーンと同じで、単に聞こえないだけなのでは?という、実在論的な話。

 ゲートに話を戻しましょう。
 「錯覚」は認識している当人だけが知覚できるものです。ですが、もしもそれを複数、もっと大きく、人類全体が見ている「錯覚」があるのなら、それは人類全体で「現実」として認識されている筈ですよね?
 ゲートの中では、そんな「(ゲート外)での人間の常識」という「錯覚」を全ての人間に起こさせている、または逆に取り除かれているのではないかな、と私は考えます。
 だから、ゲート内であっても、「(ゲート外)での人間の常識」という「錯覚」のお陰で、それなりに「(ゲート外)での人間の常識」が通用するように知覚されてるんじゃないかなと。

セルゲイ
「ここでは、一つの事象に対して、観測する人間が異なれば、観測する結果も異なる。」

 ところで、「錯覚」は、それを知覚するのが一人だけですが、もし、二人が同時に「錯覚」を知覚しているのなら、当人達にとっては正に「現実」であり、モスキートーンのように、もしかしたら、本当の「現実」が見えていないだけなのかもしれません。
 とにかく、一人なら「錯覚」として済まされるものが、二人なら、「現実」であるかもしれないワケです。

―――――――――――――――ここまで―――――――――――――――――

 つまり「或る認識」は、それを知覚するのが一人だけなら「錯覚」ですが、二人なら、一挙に「事実」としての信憑性が増してくるワケです。

 その文脈で、ニックさんの「夢」を見ると、ニックさんだけが「本当の星空を取り戻し、妹を宇宙に連れて行く」という夢を持っているだけでは、ただの「夢」なのですが、非常に近い存在である黒<ヘイ>さんが、同じく「本当の星空を取り戻し、妹を宇宙に連れて行く」という夢を持っていた為に、「錯覚−事実」「夢−現実」の相似で、「夢」「現実」になったんじゃないかなと思います。

 そう捉えると、ニックさんのセリフ

ニック
「やっぱり、君は信じていてくれたんだね!」

が、納得出来るような気がします。

 先回の感想で、「黒さんとニックさんは、意図的に似た存在だと描かれているようです。」と書いたんですが、今回それがしつこいくらい細かく描写されていました。

ニック
「君とは、最初に会った時から、他人だという気がしなかった。もう一人の自分を見ているような気さえしたよ。
君と出会えて良かった。」

「能力まで一緒か。つくづく僕らは似てるんだね。」

 在り方や、妹、星空への想い、全てがよく似た二人だったからこそ、ラストの奇跡が起こったんじゃないかなと思うんですよ。

 それに、ニックさんがカークさんを殺した現場を目撃して、黒<ヘイ>はニックさんに裏切られたと感じてしまうワケですよ。何だ、こいつも契約者だったのかよ。みたいな。

黒<ヘイ>
「あんたの言っている事は全部嘘だ!こいつは、本当の星空なんか見せやしない!
俺に語った夢も、妹も、全部!契約者が、夢を見る筈無いもんな・・・。」


 そして、ニックさんも、黒<ヘイ>さんが契約者だった事を知って、裏切られたと思っているんですよ。

ニック
「契約者は夢を見ない。確かに僕もそう考えていたのかもしれない。だからこそ君を信じた。君だけは僕の夢を理解してくれると思った。」

 でも、二人とも、自分が「感情」を持った「例外的な契約者」である事を、全く認識してない上に、「契約者」「感情」を持っていないと思っているので、「夢は嘘だ」と、「夢を理解してくれたのは嘘だ」と、全く同じ過程でお互いに齟齬が起こっているのが、また良く似ているんですよ。先回の感想を書いた時点では、表層的には似ていても、中身は全く違うんじゃないかと忖度していたんですが、中身もかなり似ています。

ニック
「でも結局、信じた僕が馬鹿だったんだな。巻き込みたくなかったよ、君だけは。

 けれど、このニックさんの言葉を聞いて、黒<ヘイ>さんはニックさんは嘘をついてなんかいなかった事が分かって、一方ニックさんの方も、「流星の欠片」の力で「夢」が現実になって、ニックさんも、黒<ヘイ>さんが、自分の「夢」を本当に理解していてくれた事を知って、二人が和解するのが凄く綺麗でした。

ニック
「やっぱり、君は信じていてくれたんだね!」

 ところで、当ブログでは、「契約者」「対価」は、失われた人間性の代償行為だと捉えているんですが、人間性に溢れたニックさんには当てはまりません。じゃあ、ニックさんの対価らしい「靴を逆様にする」の意味は何か。「流星の欠片」の捜索でニックさんが暴走していた時に、文字が全て裏返っていたのを見ると、ニックさんの「対価」「望遠鏡を覗く行為」が象徴しているように、「世界の真実を裏返して見ようとする事の表現」という、例外的なものなんじゃないかと思います。

 最後に、先週カリーナさんが提示した「対価ってなんだろう?」の提示。
 ニックさんが「夢」を叶える為の対価は、「自分の命」そのもので、ミーナさんが「黒<ヘイ>さんの好意」を得る為に払った対価は・・・・・・あまり考えたくないので、書かない事にします。

セルゲイ
「彼女の日常は変わらない。失ったものを見付け、その対価を支払った。それだけだ。」

 けれど、「研究」という夢は、実は「愛」の喪失の為に出た副次的なものだったとすれば、それにミーナさんが気づけたのなら、それが救いになっているのかもしれません。
 「夢」って何?的な話になっていて、また深い話ですが。

 ラストで黒<ヘイ>さんが銀<イン>さんにお礼を言って飴を渡すシーンは凄く余韻があって素敵でしたが、ミーナさんを完全に忘れている辺りが、ちょっと悲しかったです。

黒<ヘイ>
「ありがとな。」

銀<イン>
「・・・・・・・・・。」

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・おまけ 星に願いを掛けている所で、今週のらき☆すたの、

高良みゆき
「眩しく輝く素敵な星を見て、幸せな気持ちになるのを承けて、願い事が叶うという言い伝えがあるのかもしれませんね。」

を思い出しました。
 同じ「星」を扱っているのに、こんなに作風が違っている所に哀愁を感じました。黒の契約者観ても、絶対「幸せな気持ち」にはならないもんね・・・。
 星を見て幸せになりたいなら、みんなもらき☆すたを見るといいよ!!(ダメ)