ドラヴィダ語語源辞典の日本語版が出たらしいけど・・・。

OXFORD ドラヴィダ語語源辞典

OXFORD ドラヴィダ語語源辞典

 見ての通り、一昔前に流行った大野晋先生の学説、日本語の起源の一つをタミル語に求める話で有名になったドラヴィダ語語源辞典の日本語版が出ていたそうです。個人的見解としては、日本語の起源なんたらの話では一番信憑性があるというか、琉球語以外で唯一成功した代物だと思うんですが、専門家の学者さん達は何故か議論にもあげてくれないという変な話。
 大野先生の著作からは、日本の学者は専門バカなので、日本語の学者さんは「現代日本語」に明るくても「古代の日本語」には暗かったりとバランスを欠いていたり、「英語」は使えても、対象となるタミル語とかドラヴィダ諸語一般の知識が無かったり、それがあっても、「(比較)言語学」に暗かったりと、まともな議論を出来る人がいらっしゃらないような事を言いたいように見えました。
 そんなワケで、まともな議論を俎上に挙げるだけの相手にも恵まれず、大野先生は色々と不遇だと思うんですが、この日本語版の訳者である田中孝顕という人は自己啓発関連書籍を多数執筆している方で、ニワカ言語マニアという感じで、前にも田中孝顕が書かれた「日本語の起源」という著作を読んでみたけど、議論が乱暴すぎて大野先生が可愛そうに感じる位にあんまり価値が無い本だったと記憶しています。
 昔朝日さんがロクな知識も無いのに批判していたそうですが、妄想に近い援護射撃は逆に大野先生を背中から撃ち兼ねないんじゃないかと心配です。 こんな本出す位だったら、「ティルックラル」とか「エットゥトハイ」の注釈本でも出して下さい。そっちの方がずっと役に立つ筈です。
ティルックラル―古代タミルの箴言集 (東洋文庫 (660))

ティルックラル―古代タミルの箴言集 (東洋文庫 (660))

エットゥトハイ 古代タミルの恋と戦いの詩 (東洋文庫)

エットゥトハイ 古代タミルの恋と戦いの詩 (東洋文庫)

 今回は訳者としてなので、おかしな事を大々的に書いたりはしないと思うけど、タミル語のまともな学習書も日本語でほとんど出てないのに辞典、しかも語源辞典だけあっても全く意味は無いと思うので英語の原書を買った方がいいと思うな。この原著のドラヴィダ語語源辞典なんか、日本語版がボッタクリ以外に見えない位安いのですよ。(中古はもっと安い)

Dravidian Etymological Dictionary

Dravidian Etymological Dictionary

 誰か買った人がいたら是非感想を聞かせて欲しいです。

 因みに、タミル語の教科書は一冊だけ存在します。

タミル語入門

タミル語入門

 私がこの本の存在を初めて知った頃はインドで印刷して、そのまま荷物が送れているのか紛失したのかよく分からない状況になったりしてましたけど、あの頃がすごく懐かしいです。
 同じドラヴィダ語族の一つに位置するマラヤラム語の本はこちら。
マラヤラム語文法―南インドケララ州の言語

マラヤラム語文法―南インドケララ州の言語