機動戦士ガンダムOO第23話感想&備忘録「世界を止めて」

 ロックオン・ストラトスアリー・アル・サーシェスの戦いから、「ソレスタルビーイングはテロリストじゃない」というメッセージ、「託された思い」、確かに伝わりました。

 今話ではロックオン・ストラトスアリー・アル・サーシェスと終始比較され、それはまた、ソレスタルビーイングと「世界の悪意」との比較でもありました。

ロックオン・ストラトス 敵だけを狙い撃つ 「他人の未来」の為に戦う
アリー・アル・サーシェス 敵も味方も皆殺し 「自分の欲望」の為に戦う

「正直、俺は紛争根絶ができるなんて思っちゃいねぇ。
だがな、俺達の馬鹿げた行いは良きにしろ悪しきにしろ人々の心に刻まれた。
今になって思う、ソレスタルビーイングは、俺達は、存在する事に意義があるんじゃねぇかってな。」(ラッセ・アイオン

「存在する事?」(刹那・F・セイエイ)

「人間は経験した事でしか、本当の意味で理解しないという事さ。」(ラッセ・アイオン

 地上での「現実感覚」の希薄な「天使」自身が体現するものこそが「現実感覚」であったという価値観のコペルニクス的転回。

 これは、刹那の「俺は生きているんだ!」や、ロックオンの「これをやらなきゃ、仇を取らなきゃ、俺は前に進めねぇ。」に直接繋がっていく重要な要素。

 前シリーズの着地点は、「世界への疑問の提示」なのでしょう。

「よう、お前ら、満足か、こんな世界で。
俺は、イヤだね。」(ロックオン・ストラトス

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ロックオン・ストラトス

「何やってんだろうな、俺は。
けどな、これをやらなきゃ、仇を取らなきゃ、俺は前に進めねぇ。
世界とも向き合えねぇ。」(ロックオン・ストラトス
 
「だからさ、狙い撃つぜ!」(ロックオン・ストラトス

 退けない瞬間がある。決して退く事ができない瞬間がある。

 「それを打ち倒さねば己になれない」敵が存在する。

 ロックオン・ストラトスにとってのそれは、「世界の悪意」の象徴の一人、アリー・アル・サーシェスでした。

 だから、「己」になる為には自分で引き金を引かなくてはいけなかった。例え仲間であっても譲れない。ましてやハロに任せてのミサイルでは決着を付けられない。
 だから、最期は「圧倒させてもらうぜ!」ではなく、慣れない左眼であろうと「狙い撃つぜ!」で戦わなくてはいけなかった。

「分かってるさ、こんな事をしても、変えられないかもしれないって―――元には戻らないって。
それでも、これからは、明日は、ライルの生きる未来を…。」(ロックオン・ストラトス

 彼にとって「戦い」とは、無駄であろうが何だろうが、「そこに在って『未来』に繋げる為」の戦いだった。
 残った肉親「ライル」の「未来」の為に戦い、ソレスタルビーイングの「未来」の為に太陽炉を託し、「手の掛かる弟分」だった刹那の「未来」の為にアリー・アル・サーシェスに一矢報い、最期まで「誰かの為に」、サポート役として戦ったロックオン・ストラトス

「四の五の言わずにやりゃいいんだよ。
お手本になるヤツがすぐそばにいるじゃねぇか。
自分の思った事をがむしゃらにやるバカがな。」(ロックオン・ストラトス

 今回のエピソードを見た上で前回、唯一刹那に味方してくれたのも、彼にとっての「戦う理由」には、彼の口癖、「狙い撃つ」と同じように、決してブレない確固たる信念に裏打ちされていたのだと知らされてから改めて見ると胸に沈痛に響きます。

「刹那、答えは、出たのかよ…。
よう、お前ら、満足か、こんな世界で。
俺は、イヤだね。」(ロックオン・ストラトス

 そう口にして地球に狙いを定めたロックオン・ストラトス

「俺はこの世界を―――(「敵だけ」を狙い撃つ!)」

 ロックオン・ストラトスは決して「無差別に殺すテロリスト」ではなかった。
 「世界の悪意」だけを狙い撃つ「狙撃手」だった。

 確固たる信念に殉じたロックオン・ストラトスの魂に安息あれ。

ティエリア・アーデ

「今度は私が彼を守る!」(ティエリア・アーデ

 ティエリア・アーデの一人称が「俺」から、刹那君への援護を経て「僕」へ、そしてロックオンの負傷を経て「私」へ。
 ティエリア・アーデはもう「人間」だ。

「何という失態だ!こんな早期にナドレの機体を曝してしまうなんて!計画を歪めてしまった!
ああ、ヴェーダ!俺は!僕は!私は・・・・・・。」(ティエリア・アーデ

アレハンドロ・コーナー

「神を気取る不遜な理想主義者にこれ以上踊らされてたまるか!」(アレハンドロ・コーナー

 神気取りは貴方自身だ、アレハンドロ・コーナー

セルゲイ・スミルノフ

「聞かせて欲しいものだな、どうやってガンダムを鹵獲したのかね。」(セルゲイ・スミルノフ

 自分の目で見に来た。「自分の目で見たモノしか信じない」信念はまだ死んでいない。
 第1シーズンの「結末」を見届けるのは恐らくこの人。
 そしてきっと、第2シーズンは恐らく沙慈・クロスロード

ダリル・ダッチ

「ハワードの仇!!!」(ダリル・ダッチ)

 ハワードを殺したのはアリー・アル・サーシェスが乗っているガンダム・ツヴァイで、デュナメスじゃない。これは恐らく「人類全体が敵を間違えている」という象徴でしょう。

次回予告

 機動戦士ガンダムOO第24話「終わり無き詩」

 ソレスタルビーイング最初の戦死者は、ガンダムマイスターのリーダーだったロックオン・ストラトス。戦闘でも、プライベートでも「大切な存在」を失ったソレスタルビーイングが痛々しい。

おまけ

 今回は精神的ダメージが大きすぎたのでこれで勘弁して下さい…