狂乱家族日記壱さつめ感想＆備忘録

　誤字じゃないよぉ。だってタイトルがホントにそうなってるんだよぉ。

　こんにちは、Sunithaです。

　黄砂吹き荒れ花粉舞い散る春。桜は色めき人の往来も俄に騒がしく、或るは来たる新生活に相好を崩し、或るは燃え立つ緑に涙を流す、そんな素敵な出会いの季節です。

　まあ、何を言いたいかと言いますと、楽しい作品と出会えたから。

その名も「狂乱家族日記壱さつめ」！

狂乱家族日記壱さつめ (ファミ通文庫)

　さて、事の始まりはネコミミロリ美少女と、２７歳独身男の運命の出会いから、この素敵でロリめいた波瀾万丈抱腹絶倒の物語は始まるのであります。

　夫は妻を労わりつ、夫は妻を慕いつつ、頃は４月スプリング、ライオンの声もかまびすし、べべんべんべん。
　
　いやー、良かったよー。
　「幸せを知らない他人同士」が集まって「家族」になる―――というのは使い古されたプロットだけど、どいつもこいつも度が過ぎるほどに家族を愛しまくっていて、「家族」ってのは、他人に迷惑掛けるなんてお構いなし、世間体？そんなもの犬に食わとけ！みたいな感じでお互いをこんな風にガムシャラに愛するものなんだなぁとしみじみ。

「――造り物だけど、幻ではないよな、我々の家族は。幸福で――価値がある、そんな家族だ。凶華様はな、そんな家族の一員になれて嬉しい。本物の幸福。思うにそれを探して凶華様は故郷を捨ててたのかも知れない。あの腐敗した天国には幻の幸福ばかりがあったけど――価値はなく、本物でもなかった。凰火、気づいているか？」
　凶華は凰火を見た。
　見たこともない美しい笑顔で。
　
「我々はきっと、世界で一番幸福だぞ」
　
　猫のように笑うのだ。

　この作品では、血縁だけでなく（閻禍の子孫という可能性ではつながってますが）、姿形も全く似ていない、見た目には「とても家族とは言えない」家族で、主人公もその事について最初は拒絶しています。

「おおお父さん、どうしたの？　悲観しちゃダメだよ！　あのコたちも見た目のわりにふつうなのかもしれないじゃない！」
　見た目が普通じゃない時点でもうアウトなのですよ……。　あれで中身が普通だったとしても異様は異様なのです――凰火はくたばりそうな声でつぶやいた。

　でも、自分の娘となった少女がピンチになった（主要読者の趣向をよく理解した正しく古典的で王道のプロットです。だがそれがいい！）のをきっかけに、家族としての連帯感が強固になっていく様がハチャメチャで、有り得なくて、とても、凄く嬉しい。

　アニメ版を見る前にちょっと予習しておこうと思っただけなのに思わずグッと来たじゃないかチクショー！