機動戦士ガンダムOO第25話(最終回)感想&備忘録「刹那」

 明確な「悪意」を持つ敵、アリー・アル・サーシェスは撃ち落とした。
 明確な「悪意」を持つ敵、アレハンドロ・コーナーも討った。
 でも、「無意識の悪意」を持つ存在、グラハム・エーカーとは決着付かず―――

 という所で、「世界の変革は成った。しかし、精神の変革はまだ、始まってもいない―――」と、ソレスタルビーイングも「歪み」を正せずに終了。

 どうしようもない「人間の性」に傷ついた刹那・F・セイエイは心の中に在った「どうして人間は戦うの?」という疑問をマリナ・イスマイールに投げ掛け、「どうしたら分かり合えるのか?」という問題提起をしながら地球の方へ流されていきます。

マリナ・イスマイール、貴方がこれを読んでいる時、俺はもうこの世には…
武力による戦争の根絶。
ソレスタルビーイングが、「戦う事しか出来ない俺」に、「戦う意味」を教えてくれた。
あの時の、ガンダムのように。

俺は知りたかった。

何故、世界はこうも歪んでいるのか、その歪みはどこから来るのか。
何故、人には無意識の悪意というものがあるのか。
何故、その悪意に気付こうとしないのか。
何故、人生すら狂わせる存在があるのか
何故、人は支配し、支配されるのか。
何故、傷つけ合うのか。
 
なのに、何故に人はこうも生きようとするのか。
 
俺は、求めていた。
貴方に会えば答えてくれると考えた。
俺と違う道で、同じものを求める貴方なら、人と人が分かり合える道を―――その答えを。
 
俺は、求め続けていたんだ。
ガンダムと共に。
ガンダムと、共に。」(刹那・F・セイエイ)

 刹那・F・セイエイの行方は、誰も知らない。

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本編感想

 正直な所、グラハムさんがああいう行動に出たのは結構ショックでした。
 グラハムさんの行動は、位置には、途中で脱落したアリー・アル・サーシェスの穴を埋めるものですから、つまり、グラハムさんが連中と同類になってしまったワケです。ショック。

 第一期で刹那達がずっと戦って来たのは、アレハンドロ・コーナーや、アリー・アル・サーシェスのような、或る意味分かり易い「悪意」との戦いだったんですよ。
 彼らを取り敢えず倒して、はい、世界は平和を取り戻しました―――とはいかずに、すかさず分かりにくい「無意識の悪意」を持ったグラハムさんが登場して、視聴者に「まだ『悪意』との決着はついていない事」を象徴する「ガンダムとの引き分け」というラストに持っていくんですよね。

刹那・F・セイエイ 戦争根絶の為に戦う
  越えられない壁
アレハンドロ・コーナー 支配したいから戦う
アリー・アル・サーシェス 殺したいから戦う
グラハム・エーカー 戦いたいから戦う

「貴様は歪んでいる!」(刹那・F・セイエイ)
 
「そうしたのは君だ!
 ――ガンダムという存在が!
だから私は君を倒す!
世界などどうでもいい、己の意志で!」(グラハム・エーカー
 
「貴様だって、世界の一部だろうに!」(刹那・F・セイエイ)
 
「ならばそれは、世界の声だ!」(グラハム・エーカー
 
「違う!貴様は自分のエゴを押し通しているだけだ!
貴様のその歪み、この俺が断ち切る!」(刹那・F・セイエイ)
 
「よく言ったガンダム!」(グラハム・エーカー

 それにしても、ガンダムと引き分けるガンダム以外のMSなんて、ウイングガンダムとプロトタイプリーオー・トールギス以来じゃないのかなぁ。すごいな、グラハムさん。

アレルヤ&ハレルヤ

 土壇場で「もう一人の自分」に打ち克つという描写が入ると思ったんですが
 土壇場で、「超兵」を象徴する「金色の右目」をやられて、即ちハレルヤ君の死亡。
 己の象徴、「金色の右目」をやられ存在の消滅寸前のハレルヤ君がアレルヤ君を騙していた事でアレルヤどん底へ落とされていきます。

 何だかんだで、アレルヤ君を守ってくれていたハレルヤ君が消えた事で、アレルヤ君は右目を、自分の半身を失い、マリーさん(ソーマお嬢さん)とは引き裂かれ、キュリオスは大破―――と、「答え」に手が届かないまま第二期へ。
 「反射(=ハレルヤ)」と「思考(=アレルヤ)」の融合と、いいトコまで行ったんですけどね。

「僕も生きる。」(アレルヤ・ハプティズム
 
「何?」(ハレルヤ)
 
「僕は、まだ世界の答えを聞いていない。
この戦いの意味すら。
それを知るまで、僕は、死ねない!」(アレルヤ・ハプティズム

ソーマお嬢さん

 今まで自分のアイデンティティであり、心のよりどころだった「超兵」としての存在を、「出来損ない」と下に見ていた「アレルヤ君&ハレルヤ君」こそが「真の超兵」だった事で打ち砕かれたんですが、そのソーマお嬢さんを救ったセルゲイさんを「完璧な兵士・超兵」として見捨てる事ができず、命令違反を犯してまでセルゲイさんを助ける事を選択。

「何をしている!私に構うな!戦え、少尉!」(セルゲイ・スミルノフ
 
「できません…。
中佐がいなくなったら私は独りになってしまう。」(ソーマ・ピーリス
 
「少尉…。」(セルゲイ・スミルノフ

 4年後はお嬢さんは22歳。

 でも、セルゲイさんと結婚とかしてたりして新妻になってたら、私は泣きますよ?

アレハンドロ・コーナー

「残念だったな、イオリア・シュヘンベルグ
世界を統合し、人類を新たな時代に導くのは―――この私、今を生きる人間だ!」(アレハンドロ・コーナー

 今回、「悪意」を持った存在として悪役として描かれたアレハンドロ・コーナーなんですが、言っている事はそんなに的はずれでもないんですよね。寧ろ、彼がこんな有様になってしまった原因は、「自分は人間として世界を導く」と言っているのに、「あははは、古き神は殺した!私が新世界の神だ!」と、やってる事が「神気取り」な所なんですよね。そう考えると、アレハンドロ・コーナーも根っからの悪人ではなかったのかもしれないと、思ったり思わなかったり。

 アレハンドロ・コーナーが死ぬ間際で、リボンズに対して嘗て「私のエンジェル(=天使)」と言った口で「この悪魔が!」とか言わせなかったのは、制作者側にアレハンドロ・コーナーの言い分も否定しかできない思想じゃない、という意図があったのかもしれませんね。

アレハンドロ・コーナー、貴方はいい道化でしたよ。」(リボンズ・アルマーク
 
「何!?」(アレハンドロ・コーナー
 
「これはイオリア・シュヘンベルグの計画でなく、僕の計画になっていたのさ。」(リボンズ・アルマーク
 
リボンズ、貴様。」(アレハンドロ・コーナー
 
「統一された世界の行く末は僕に任せてもらうよ。」(リボンズ・アルマーク
 
「貴様、コーナー一族の悲願を!」(アレハンドロ・コーナー
 
そういう物言いだから、器量が小さいのさ。」(リボンズ・アルマーク
 
リボンズ!!」(アレハンドロ・コーナー

 尤も、私は「ザマーミロー」とか思ってましたがね!(ドクロ)

おまけ〜第一期を振り返って〜

 今期では「世界の変革」には成功したものの、ラストのグラハムさんのように「精神の変革」には到らず、来期のマリナさん達、「武力によらない戦争の根絶」を目指してきた存在によって成されていくのだとは思いますが、とにかくも今期はこれでお仕舞い。

 思えば第1話では「疾走感に欠ける」とか私はほざいておりましたが、回を追う事にどんどん面白くなってきて、第19話感想&備忘録「絆」では「ティエリアさんキター!」とか小躍りしながら喜ぶ程にはまってしまいました。
 巷では色々言われているかもしれませんが、「楽しんだモノ勝ち」が私のモットー。
 こんなに面白い作品を楽しまずに、愚痴ばっかり言ってても仕方が無いよ?

 誰かを、何かを貶めて得られる恍惚よりも、誰かを、何かに価値を見出して歓喜する方がきっと楽しいよ?

 だから、私は言うよ。

 ガンダムOO、面白かった!来期も待ってるよ、スタッフのみなさん!

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