「狂乱家族日記弐さつめ」感想&備忘録

 お願いです、僕が/私が大切だと言って下さい、お願いです。

 そんな叫びが聞こえてきそうな「狂乱家族日記その弐」の感想です。
 タイトルと作者の名前も一見巫山戯てるように見えますし、中身もアレなのでアレだったりするんですが、骨太のテーマがどっかりと腰を下ろしているのがこの作品の凄いトコだなって思うんですよね。

凶華様 凰火に「愛している」だと言って欲しかったので新婚旅行を企画 凰火も愛している(ヤバイかとかそういう難しい事は私は知らん)
ピエール(西倉明) 超常現象対策局で役立たずとされる 凶華様の手腕で「必要としてくれる誰か」を見付ける
去渡去彦 「人間」として誰も認めてくれなかった孤独の科学者 最期に「大切に思ってくれる存在」、「自分の為に泣いてくれる存在」、「謝りたかった息子」を得る。
雹霞 最大多数の最大幸福の為に人殺しをさせられていた存在 自分と一緒に目を反らさずに歩いてくれる家族を見付ける

 細かい所を探していくとまだ在るんですが、ざっとこんな感じで、凶華様の思いつきで始まった無茶苦茶な新婚旅行は、家族の絆を強めると同時に、ピエールや去渡博士を救うという話になってしまうんですよ。いつの間にか。

「どこの神様が適当に決めた運命なんだか知らないけどさ、ぼくら狂乱家族は――みんな天国にも地獄にもいられない宙ぶらりんなやつばっかり。父親は三歳のころに肉親を失って、義務みたいに化け物を殺して毎日を消化していた。母親は周囲の人間に神様と崇められ、何不自由なく生きていたけど心は独りぼっちだった。銀夏も男と女、極道と堅気の中間で揺れていたし、帝架も本能に任せて家族と争って、独りぼっちになってしまった。千花も優歌も鬼の一族に生まれ、愛情というものを知らないで育った。月香はよくわからないけど、多分あいつもそうなんだろうね」(乱崎雹霞)
 
「みんな、『家族』を求めていたんだよ」(乱崎雹霞)

狂乱家族日記弐さつめ (ファミ通文庫)

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