ダブルアーツが打ち切られて終わってしまった原因

 ダブルアーツが打ち切られたのはショックだけど、その要因は分かる。ダブルアーツは、昨今の少年マンガでは希有な「清らか」なマンガだからだと思う。

ダブルアーツの欠点

 例えば、ヒロイン・エルー、スイは共に女性特有の凹凸に乏しく、特にエルーは肌の露出が乏しく、主人公とエロい展開には陥らない。

 しかし、トロイへの耐性や献身といった「神聖」と、人が触れる事が出来ない「禁忌」は、古代に於いて巫女やそれに類する存在が有していたモノであり、下卑た物言いをすれば、「男性」にとっての「女性」そのものであり、主人公だけがヒロインに触れられるというのは、その「破戒」を意味し、それ自体が古代より往々にして快感を伴う行為であるし、裏返って「救済」ともなり、屡々カタルシスをもたらす。

 「お色気」は私にとっては、よりそのマンガの「本質」さえ伝わってくれば、マンガそれ自体の面白さに於いて何ら重要な要素ではないので、個人的にはその「鉄の女」っぽい所、それがエルーの可愛さだと思うんですが、その魅力が「小さいお友達」には分からないのかもしれないですね。

ダブルアーツはどうすべきだったのか?

 逆に言えば、「小さいお友達」にも分かるように、「エルーに触れたい」と思わせるような扇情的な描写があればもっと違う展開だったのかもしれないです。ただ、「神聖」と「禁忌」は表裏一体であり、片方を描けば片方が描きにくくなるし、作者自身の精神的な抑制作用もありますから、作者の思い入れ(小学生の頃から構想していらしたらしいですし)、編集部の意向、その時のジャンプの連載の状況などの多面的な事情から、ダブルアーツはどうしても「神聖」に偏重してしまった事には已むを得ない部分はあったかもしれないです。
 「神聖」であろうとするなら、ダブルアーツは少年誌向きのマンガではなかったともいえるかもしれません。ダブルアーツを読んでいればすぐに気付くように、ダブルアーツは基本的に「エルーの一人称」で語られ、「キリの秘密」を知っていく話ですから、主人公はキリとエルーの二人というよりは、少女であるエルーが主人公であり、独白が非常に目立つ少女マンガの文法を導入しているので、少女マンガに向いていたのかもしれないなとも思います。

まとめ

 私個人の意見としては、ダブルアーツが打ち切られてしまうのはあまりに惜しい。
 地味ながらワクワクできて、毎週が楽しみでしょうがありませんでした。

 古味直志先生の次回作が果たして少年誌なのかも分かりませんが、次回作も期待しています。

 お疲れ様でした。

ダブルアーツ 1 (ジャンプコミックス)

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