機動戦士ガンダム00セカンドシーズン第8話感想&備忘録「無垢なる歪み」

「だが、その中で一方的に命を落としている者達がいる。
そんな世界が正しいとは思えない。」(刹那・F・セイエイ)

 まとめれば、「『愛』は『憎しみ』を超える」という、使い古された言葉ですが、そういう話。ただ、その「愛」を向ける対象が、血縁関係や恋人といった狭い集団に限定されるのではなく、地球規模に拡大されなければならず、一方的に切り捨てられる弱者がいてはいけないという事。
 また、その「世界の歪み」であるリボンズに「踊らされている」ティエリアさん、そのままリボンズに「踊らされている」ソレスタルビーイングを意味する暗喩になるのは流石です。

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン2 [DVD]

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン2 [DVD]

本編感想

 「『愛』は『憎しみ』を超える」というは直截的過ぎて、それをはっきり口にするのはスマートではなくて視聴者もそれは照れくさかったり青臭かったりで求めていなくて、如何に言外の言として描写するか、如何にそれを婉曲的に且つ印象的に伝えるかが、ずっと流れとしてあるわけなんですが、今回は、フェルトがソーマに対して「憎悪」を向けることしか出来なくて、でも、「家族」なんだからと和解したり。

「ごめんなさい、
分かってます、彼女の所為じゃないって。
でも、言わずにはいられなくて…。」(フェルト・グレイス

 ↓

「みなさんの事、大切に思ってるんですね。」(マリー・パーファシー)
 
「私の、家族ですから。」(フェルト・グレイス

 また、ティエリアさんが、「家族」であるロックオン・ストラトス(ニール)から受け取った「人間らしさ」で、「イノベイターとしてのティエリア・アーデ」ではなく「一個人としてのティエリア・アーデ」として、「神(イオリア)が死んだ世界」で、「神の骸(ヴェーダ)」を掲げてねじ曲がった世界に導くレールへと揺さぶるリボンズに向かってティエリアさんが吼えたり。

ソレスタルビーイングの壊滅は、計画に入っていたからね。
本来なら、君らは四年前に滅んでいたんだ。」(リボンズ・アルマーク
 
「そんな…
そんな筈は無い!
僕たちは、イオリア・シュヘンベルグに託された!
ガンダムを!GNドライヴを!トランザムシステムを!
イオリアガンダムを託された僕は思う、『君達は間違っている』と!
そうさ、僕は自分の信じた道を進む、がむしゃらなまでに!」(ティエリア・アーデ

 極端に換言すれば、リボンズの作ろうとしている世界は、「自分以外の他人なんかどうでもいいよね?」という方向ですからね。
 また、新生・ソレスタルビーイングの連帯感の初期パラメーターが非常に高いというのは、ユニフォームやらアレルヤ奪還作戦で描写されていて、それに対してアロウズはかなり冷たい組織で、イノベイターズは油断したら追い落とされるけど、とりあえず目的は同じだから協力している―――みたいなトコは大事ですよね。

現状の作中悪について

「問題が無ければ実害も無い。
文句なんて出やしないわ。」(スメラギ・李・ノリエガ

 これが沙慈君がそうだった「無意識の悪意」。

 さて、今の所、作中で明確に「作中悪」と規定されているのは以下の四つ。

無自覚の悪意 他人が不幸になろうが自分達が良ければどうでもいいというスタンス(沙慈、連邦世界の大部分の人々)
無意識の悪意*1 憎しみや怒りではなく、「闘争本能」のままに戦うスタンス(グラハム・エーカーミスター・ブシドーアリー・アル・サーシェス))
画面越しの悪意(勝手に銘々)*2 自分は手を汚さずに人を殺すスタンス(オートマトンビリー・カタギリ
世界の歪み(リボンズ・アルマーク他、) 自分たちが「人間以上の存在」と認識し、神のように人間を処分したり操ったりするスタンス

 意外と思われるかもしれませんが、ルイスさんやロックオン(ニール)、ティエリアがそうであるように、「怒りや憎しみ、後悔や懺悔で戦う事」を作中では決して「悪」として描かれてはいなんですよね。そもそもソレスタルビーイングはそういう人たちが集まったから、自己否定になるというのもあるんですが、「理由」がはっきりしているので、制作者側が比較的御しやすかったりしますし、そういうのが基本的に「情愛」の裏返しなので、逆に人間らしくて、もう一度「情愛」にひっくり返り易いというのもありますが、彼らは基本的に自分以外の他者が存在する「世界」を是としていて、彼らの「死」が原動力となっている点では、出発点は「家族」であり、全然違わないんですよね。

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン2 [DVD]

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン2 [DVD]

次回予告

 機動戦士ガンダム00セカンドシーズン第9話「拭えぬ過去」
 アレルヤの過去、ティエリアの過去と来たので今度はロックオンという事ですか。ティエリアさんのはやけにあっさりでしたけど、まだ次があるのでしょうか。

 ですが、是非ともまたやっていただきたいと思います。ティエリアさんの女装っっ!!(違う)

おまけ

 何故今更コーラサワーを出すのか意味不明。
 ファーストシーズンのラストでは、死んだともとれる最期だったのですが、何か思惑があるのか、それとも単なる賑やかしか、マネキンさんの戦後を担う(セカンドシーズンは登場人物達の「戦後」までフォローするスタンスみたいですし)キャラとして作中的に死んだけど、やっぱり必要だからと復活させたのか。
 個人的にはあんまり好きじゃないんですけどね、あの手のタイプ。
 まあ、面白いですけど。

*1:もしかしたら作中で明確に定義されていないので「無自覚の悪意」と同じモノかも

*2:ただし、この項目はもうちょっと上のクラスな感じがするので、同じ項目として扱うのはちょっと違和感が有ります