DARKER THAN BLACK 黒の契約者感想第2話「契約の星は流れた…後編」



 第2話「契約の星は流れた・・・後編」感想

 今回は、契約者の黒さんと、ドールの千晶を対照的に描く事で、黒さんが捨てきれない「感情」を浮かび上がらせていました。
 この後編で、この黒の契約者が何を描きたいのか、やっと分かりました。




 

千晶
「変なの、見慣れた間取りの筈なのに、左右反転してるだけで何か変。偽物みたい。ここに越してきて二週間、本当に生きてるって実感があったんだ。初めてだったよ、こんな感じ。」

 偽物の生活、偽物の名前、そして今それを語っているのすら本物の千晶さんではなく、偽物のドールという存在なのにも拘わらず、「生きてるって実感」だけは偽物じゃなかったんです。
 しかし、同じく偽物の生活、偽物の名前、そして感情が希薄になった契約者と、極めて近い存在の筈なのに、「生きてるって実感」を感じられないのであろう黒さんが対照的に描かれます。

 それを意識せずに黒さんを間接的に「偽物みたい」と言ってしまう千晶さんの言葉が深いです。

 自分とは違って、「生きている」千晶の話を聞いている内に、本当は目的の情報を手に入れたら、殺さなければならない千晶に対して、


「僕が何とかします。一緒に逃げましょう。」

と、千晶を助ける選択をした黒さん。

 この作品では、黒さんの内面というものが殆ど描写されないんですが、それは黒さんが人間の感情と、契約者の合理的思考の間で揺れ動いているからだと思います。
 黒さん自身がその感情と合理的思考の間で揺れていて、それを、毎回登場する契約者や、ドール、そして人間の描写を通して浮かび上がらせるのがこの黒の契約者という作品なのだと思います。

 そして、千晶を助ける為に、フランス政府にも、組織にも渡す事は出来なかった為、警察に引き渡す事を選択します。

 しかし、ドールだった千晶は、黒さんを撃ちますが、最後はジャンの攻撃から黒さんの身代わりになって心臓を抜かれて殺されてしまいます。
 それは、「ドール」だった千晶さんが、最後まで「生きて」いたという事、人間は感情を持っているからこそ、「合理性」からはかけ離れた行動を取ります。
 それはドールという事実を知っているジャン達には滑稽な事だし、黄さんのような仕事と割り切って切り捨てる人間にとっては、「人形」が人間の振りをしているだけだと思われてしまいますが、確かに「篠田千晶」という人間がそこにいた証しだと思います。

 人工知能の領域で有名な実験の一つに、チューリングテストという、機械の反応に対して、人間が知能があると感じたら、その機械は知能を持っているという、行動主義心理学を体現したようなテストがあるのですが、この黒の契約者の描写の立ち位置は、それに近い気がしました。

 つまり、「感情を殆ど持たない」筈の「契約者」である黒さんが、人間、契約者、ドールと拘わっていきながら、黒さんが持っている「感情(=人間としての一面)」というモノを描き出す事にあるのではないかと思います。

 そういうワケで、黒さんの本心は決して描かれませんが、感情を持つ人間である筈の黄さんが、


「どうしてその人形を殺さなかった。」

と、非人間的な言葉を口にするのに対して、


「人形じゃない、生きていたんだ・・・」

と、最後まで人間らしさを捨てなかった千晶さんをただ一人認めるのです。

 恐らくは、この黒の契約者は、人間を表す「感情」と、契約者を表す「合理的思考」の間で揺れ動く黒さんを間接的に描いて、「心」の形である「人間」「優しさ」「悲しさ」を浮き彫りにしながら、黒さん達が、「失った何か」を探し求める姿を、他ならない「人間」の姿として描きたいのだと思います。

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