Darker than Black 黒の契約者感想第6話「災厄の紅き夢は東欧に消えて…後編」感想
第6話「災厄の紅き夢は東欧に消えて・・・後編」感想
今回描かれたのは能力者という存在の「悲しさ」でした。先回の感想では、サイモンさん共々、「契約者」の持つ「心」じゃないかと思ってたんですけど、サイモンさんが計算外にも死亡しなかったので、予想が少しばかりズれました。てっきり、ハヴォックさんとサイモンさんの持つ「感情」が交差するのではないかと思ってたんですが、死ななかったよ。結局描く事が絞られただけなので、そんなにズれてるワケでもないからいいかな。
てーか、最初から黒さん狙いで、ハヴォックさん自体がデコイだったイギリス紳士達。食えない連中です。
今回のポイントは、黒さんを「人間」として認識する側と、「契約者」として認識する側に大別される事。
一方は認識しているから「人間性」を貴いと思えるのだけど、一方は認識していないから、ワケが分からず狼狽するという図式。
前者にはハヴォックさん、それに銀さん。後者には、サイモンさんと、黄さん。
邪推すると、女性陣にモテモテ、男性陣はムカムカという風に解釈もできるんですが、そこはそれ、エンターテインメントというヤツ。イヤな役は男に任せようとする魂胆でしょう。
バカ話は置いといて、真面目な話をすると、ハヴォックさんは、「私は、能力を失うまで食事が楽しいと思った事は無かった。」と言っているように、契約者になったのが極幼かったのか、人間らしさを見せる事が無かったようで、人間らしい「食事」に価値を置いていなくて、契約者としての「人間性の喪失」(当ブログでは契約者の対価をそう捉えてます。)の対価として、かなり非人間的「食事」としての吸血を行っていたみたいです。
この場合の吸血行動は、「人間性」に溢れている子供からその「命」の象徴である「血」を奪う事で、「喪失した人間性」の補完をしようとしているのだろうと思います。
しかし、南米での一件の後、ルーマニアに飛ばされたハヴォックさんは「能力」を喪失した代わりに「人間性」を取り戻していたワケです。
ハヴォック
「嬉しかった。
もっとうまいものを食べさせてやろうと思った。
もっと、喜ぶ顔がみたいと思った。
契約の対価として、子供の生き血を啜ってきた、この私が。」
「おいしい。」
「ローラの母さんが言ってたよ。料理のうまい男は信用しちゃいけない。絶対に悪いヤツだってな。」
ハヴォックさんの「人間性」の再獲得に拘わるキーワードが、豆剥き、料理、味覚、「料理のうまい男」と、いずれも「食事」に関係しており、その文脈で行くと、「対価」である「吸血行動」を「食事」と捉えると、「吸血行動」自体が如実に「失われた人間性」の補完をしようとしているという事の傍証になっているワケです。
つまり、契約者の頃は「失われた人間性」の補完の為に異常な「食事」である「吸血行動」をしていたのが、喪失者になったら、普通の「食事」を通して実際に「人間性」が再獲得出来たという事。
どうだー、私は「喪失」が鍵だって、一話から気付いていたもんねー。(えっへん)
ハヴォック
「怒ったのか?契約者のくせに。お前、本当に変わったな、だが、悪くない。」
黒さん
「妙な感じだ。初めてだが、お前の笑った顔を見たのは。」
それで、やはり「料理」を通じて黒さんを「契約者」ではなく「人間」だと認識したハヴォックさんは、黒さんのようになりたいと、過去の自分に立ち向かう為に、ゲートに向かったワケなんですが、ゲートの「呪い」は想像以上に強く、ハヴォックさんは抵抗するも負けてしまいそうになってしまいます。奇しくも敵側の能力で雨が降っていますが、これは黒さんとハヴォックさんの「涙」を意味しているワケで、その哀しみの中で慟哭するハヴォックさん。
ハヴォック
「もう誰も殺したくない、奪いたくない!」
契約者としての感覚が蘇り、「感情」が一方的に奪われていくハヴォックさんは、人間として死にたいと「殺してくれ」と頼みますが、既にハヴォックさんに「人間性」を認識していた黒さんは、人間として生きる道はあると叫びます。
黒さん
「大丈夫。ここを離れれば能力は戻らない!お前はもう誰も殺さない!そうだろ?」
これは、「お前は(俺は)人間だ!」という黒さんの心そのもの。その言葉に「人間」として、「能力」に立ち向かおうとしたハヴォックさん。しかし、そこはBONSさん、カタルシスが最高潮になった所で、ハヴォックさん死亡。そして、ハヴォックさんが最後に言いたかった言葉は、「ありがとうだろう。」でしょう。最後に自分を「人間」として認識してくれて、「人間性」を保っていられた事への感謝。
そんな「人間」と「人間」として、悲劇を迎えた黒さんとハヴォックさんですが、サイモンさんは、黒さんを「契約者」と見なしているワケです。
サイモンさん
「契約者らしく合理的に判断したまえ。」
しかし、黒さんは「人間」なのです。合理性なんてクソくらえ、人間の証明を掲げて、サイモンさんに一か八かの攻撃を仕掛けるのです。ここで黒さんからの思いも掛けない反撃を喰らって面食らってるサイモンさんの表情がいい。この表情は、黒さんが「契約者」じゃないと認識しつつある表情ですよ。
一方、黄さんも黒さんを「契約者」として見なしているのですが、今回の黒さんの行動は「契約者」らしくなくて、まるで「人間」のようで、苛立ちを隠せないのです。
黄色
「ふざけんじゃねえぞ、テメエ!お前ら契約者は、黙って人殺してりゃいいんだ!」
黄さんは、「契約者」を「人間」と認識していないから、「人間」としか思えない行動をする黒さんを理解したくないワケで、ここで激昂するワケです。
最後に、銀さんが、黒さんの手を握るんですが、これ、解釈するのが非情に難しいんですが、「人間性の喪失」が怖くて、「人間性」を必死に守ろうと、黒さんの手を握ったハヴォックさんとダブる形で、妹の手掛かりも掴めず、ハヴォックも守れなくて、自暴自棄になりそうな黒さんの「人間性」を守る為に、銀さんが黒さんの手を握った、あるいは、銀さんも黒さんがいる事で、「人間性」を感じていられるから、そんな銀さんを必要としている存在がいるという事を忘れないで欲しいという銀さんなりのメッセージなのかな。
あと、霧原さんがハヴォックの「人間性」を見抜いていそうな所も忘れちゃいけない、てか忘れてたけど。これは、サイモンさんには理解出来ない「人間性」という概念で、前回サイモンさんにからかわれた「冗談です。」でやり返すという痛烈な皮肉。
転んでもタダでは起きない女、霧原未咲。格好いい。
しかし相変わらずレベル高いですな、「黒の契約者」。
てーか、来週の予告の、あれ何?一瞬違う番組かと思いましたよ。
いや、マジでレベル高いですな、「黒の契約者」。
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