黒の契約者第25話(最終回)「死神の見る夢は、黒より暗い暗闇か?」

 まず、全ての前提として、黒さんは、「人間」でも「契約者」でもあるという事実がすごく大事です。これは、もともと黒さん自身が「人間」と「契約者」の共存の象徴である事を示していて、ラストで黒さんが見せた「真の力」は、黒さんが元々持っていた「共存」という属性から派生したものに過ぎないのです。

「今のはあいつの電撃はただの電磁波ではない。
物質そのものを量子レベルで変異させてしまう。
例えれば、普通の人間が契約者になってしまうみたいなもんだ。」(シュレーダー博士)

 その黒さんに対して、白さん、アンバーさん、銀さんと、「契約者」側から、(少なくとも)二段階までの「契約者の存在の変化」が提示され、「人間」側からは、黄<ホァン>さんと霧原さんに「共存」の道を肯定されて、ラストを迎えます。
 菅野よう子さんの曲が彩る中、黒さんともう一度会って話をしたくて、あのアパートから黒さんが眺めていた「東京」の姿を見つめる霧原さん。けれどもそこに答えは無く、恐らく組織の手が回ったのでしょう、全て持ち出されて空き部屋になった黒さんの部屋には何も残されていなかった。後ろ姿を見付けた黒さんも、もういなかった。

「私達は、同じ道を選んだのだろうか、『共に生きるという道』を。
聞きたい。彼の口から。」

 おそらくこれは、「第三の道」の是非は契約者も、人間も、誰もがこれから探さなければいけない課題だから、霧原さんは黒さんには会う事ができないのだと思います。歩き始めたばかりの「第三の道」は誰かに肯定される事で正当化されるような道ではなく、これから沢山の犠牲の果てにあるから、安易に肯定してはならない、それでも、黒さんも霧原さんも、お互いがお互いの道を、「直感」を信じて歩いていかなければいけないという、「終わりの始まり」に過ぎないという事なんだと。

 あと、先回も書きましたが、DVD最終巻には番外編、第26話がついているそうです。(情報元

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契約者の第一次変化:アンバーさんの「家族」

 アンバーさん達「契約者」の第一段階。
 黒さんが銀さん達と「家族」になり、「組織」を裏切るまでの過程と、全く同じ事をアンバーさん達契約者も経験していたという事。独力志向の強い契約者が、お互いを「仲間」と呼び合うのはとても大きな事。

「何の為にスパイをするのか、何の為に殺し合うのか、なんて事考えもせず、みんな割り切って上から下される命令にただ従ってた。契約者だからね。そこは合理的に。
でもある時から変わり始めた。誰が最初にってワケじゃなく、少しずつ。
気が付いたら私達は互いを「仲間」と呼び合うようになり、色んな情報を持ち合うようになった。」(アンバー)

契約者の第二次変化:感情の再獲得

 白さんも、アンバーさんも、銀さんも、全員が変わり始めている。白さんは、自分の為に傷ついていく兄を見ていく中で、アンバーさんもそんな黒さんに出会って、黒さんを愛してしまった事で変化し、銀さんも黒さんと時間を過ごすうちに変化していったのです。
 これは、今までに登場した契約者達もそうでしたが、黒さんと会う事で、人間らしさを獲得していったワケです。近くは「屈辱」から感情を再獲得した魏志軍が記憶に新しいです。最初に書いたように、黒さんは「人間と契約者の融和の象徴」なので、彼と接触する事で、契約者も人間もどんどん変わっていく事になっていたんですね。

「今はまだ分からないかもしれないけど、あの子達も変わり始めている。少しずつ。
どこの誰が、どんな意図を持ってゲートを作ったかは知らない。
でも、私達が取り交わした契約は、何かの始まりに過ぎない。
百年後、1万年後、もっと先の十万年後に起こる、何かの始まり。」(アンバー)

「7:10」の過去から「6:45」の未来へ

「この街はどうなる?
俺が力を解放したら、白に会う事を望んだら。
契約者も、人間も、この街に暮らすヤツらは消えるのか?南米の時のように!
・・・・・・俺には出来ない。」
「じゃあ、契約者は消える。銀も私も、この星に暮らす全ての契約者が。全ての契約者が。
黒、あなたを除いて。」

 人間か契約者か。アンバーさんはその選択を捨てて、「黒」さんを選ぶという第三の道を選んだ人。黒さんには、「困難」の無い道を選んで欲しいのだけれど、黒さんは、この東京という街が好きで、そこに住んでいる人たちも好きなので、最終的に黒さんに選ばせる事に、そしてその為に、「最後の一回」を残していたのが切ない。
 アンバーさんは、黒さんが「両方」を選択するであろう事は分かっていた。それでもこれ以上黒さんを苦しませない為に、黒さんがかつて望んだ世界、本当の星空、妹の白さん、誰も殺さずに住む世界、「天国」を提示したのに、今の黒さんにとっては、偽りの星空、白さんにも二度と会えず、逃げ続け殺し続ける世界、「地獄」を、ヘブンズゲートに繋がった理想の世界よりも、ヘルズゲートの周りの現実の世界を選択。
 先回、「人々の星に纏わる思い出の描写」は、人々を踏みにじる「組織」の否定要素と書いたけど、またまたミスリード。黒さんが最後の選択をするのに必要な要素としても働いているんですね。ゴメン。

「本当にそれでいいの?それがあなたの答えなの?
両方を選んだ貴方の先には困難しか待っていない。
組織はどんな手を使ってでもあなたを追ってくる!
そうなれば、あなたはまた人を殺さなければいけなくなる!」

 そして、かつての「家族」だった白さんと、黒さんが今いる現実、「家族」になった黄<ホァン>さん、猫<マオ>さんによって選択肢を提示され、最後に残った「家族」、銀<イン>さんの手で「地獄の底」から救い出される展開が熱い。
 恐らく、これからも黒さんと銀さんは「家族」として共に助け合いながら生きる事になるのでしょう。

「違う!俺は黒の死神だ!」
「そうじゃないよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。
だからもう、無理しないで。」

「どっちか一方が無理なら、両方取れ。」
「契約者らしく、人間らしく。」
「それよ。」

「黒、帰ってきて!私を一人にしないで!」

人間側代表・霧原未咲の選択

 「契約者も人間だ!」と主張してくれる数少ない存在である霧原さん。
 霧原さんも、ついさっきまで話していた黒さんを信じていて、黒さんがゲートの中心地にいようがいるまいが、黒さんを信じていたワケです。一度目は、黒さん自身には起こすつもりは無かったんですが、アンバーさんによってエクスプロージョンが起こされてしまいます。しかし、二度目も霧原さんは変わらず信じていてくれてました。霧原さんはそういう人。

「待って下さい!
BK201はエクスプロージョンを引き起こさない!彼は戸惑っています!
お願い、待って!」

「待って下さい!
BK201は中心地にいない!危機は去ったんです!
お願い、待って!」

 そして当然の帰結。黒さんと同じく「第三の道」を選択した霧原さんに対し、アンバーさんが黒さんに言ったように、蓬莱部長が霧原さんに「困難さ」を主張します。

第三の道を選択したというワケか。
何故分からない。君が選んだ道の先には、より激しい諍いしか待っていない!
人類はより契約者を憎み、契約者はより人類を憎む!その果てにあるものは何だ!?」

 その後、黒さんの介入で辛くも助かった霧原さんの所に斉藤さん達がやってきます。

「斉藤、部長を拘束しろ。殺人の現行犯だ。」
「分かりました。」

 先回、斉藤さんが「俺は部長を信じる!」と言ってましたけど、本当に信頼しています。霧原さんと斉藤さん達もやはり「仲間」と呼べる存在だったんですね。

 そして、この一件で斉藤さん達も成長したのか、第一話のリフレイン、ルイと同じ「重力遮断」を使う契約者、ルイの時には逃げられましたけど、今度はきちんと捕縛しています。そう、何も変化が無いワケじゃない、少しずつ、前に進んでいるのです。

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